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ゆうれい。  作者: maiko
5/5

恋人

最近寝ても寝ても眠気が抜けません。

私は外に出た。

まさかとはおもったがドアをすり抜けられた。

私はもう死んでいる。

それを実感させられざる得ない人間界。

気が滅入ってしまいそうだ。


外に出るとジリジリと日差しの強い太陽が顔を出していた。

通勤や通学の人であふれている駅。

子ども達がはしゃぐ公園。

カップルに人気な海岸。

「何も、変わってないんだね」

あたりまえか、と一人つぶやく。

私は16年間生きてきた町並みを少し見て回ることにした。

死んでから見る風景は胸の内が熱くなるような感情で埋もれる。

幼稚園、小学校、中学校、高校。

高校は県内公立で1ヶ月あまりしか通えなかったがそれ以外、ずっと同じ街で過ごしてきた。

一番思いでがあるのはやはり中学生の時で。

部活に勉強、友達もたくさんいた。

そして、恋もした。

私には付き合っている彼氏がいる。

その彼に、私は会いに来たのだ。


「歩・・・」


あゆむ。今日まで生きていたら付き合って3年と1ヶ月目。


歩が大好き。

歩と一緒にいるときが一番幸せだった。


「ごめんね・・・」


きっと歩にも私の姿は見えないだろうな。

なんで死んじゃったんだろう。

なんで私なんだろう。

神様は意地悪だ。

もう終わったことをどうこう言っても何かが変わる訳じゃない。

私は深いため息をつき、彼の家へと向かった。







「どうしよう・・・」

家の前まで来てみたはいいものの・・・

どうやって入ろう。

とりあえず、チャイムでも鳴らすか・・・

あ、私触れないんだった。

でも、壁すり抜けて家の中に入るなんてプライバシーの侵害が・・・

「ハヤトぉ・・・」

『はい』

「助けて」

『これはご自分で解決できるでしょう・・・』

「無理だもんっ!」

『じゃあ、壁すり抜けて中入れ。』

「なっ・・・」

『それでは、また』

プツンッ


クソっ。逃げられた。

しかもなんか偉そうだ。

「はぁ~。まぁ、仕方ないか・・・」

私はおそるおそる玄関のドアに近づいた。

そして、手を伸ばし徐々に全身を家の中へと潜り込ませた。

玄関に入ってすぐふわっとした歩の匂いがした。

その匂いは直ぐさま会いたい彼への思いをかき立てた。


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