ここに来た意味
引き続き、お願いします。
「誰?」
画面の中にいる青年・・・
20代ぐらいに見える・・・ん?10代?
「私はハヤトといいます」
「ハヤト・・・」
「はい。ようこそ、天国へ」
また、天国・・・
「ねぇ、さっきから何言ってんの?天国って何?」
「天国をご存じないのですか?天国とは悪いことを償いし者だけがこれる死者の楽園ですよ。」
「・・・そんなことわかっとるわぁ!!」
「では何を・・・」
「ここはどこかって聞いてるの。なんで下に町が見えるの?」
「ここは天国ですから・・・雲の上なんですよ?」
「ちょっと、フザけないで・・・」
「私は本当のことを述べているだけ。あなたは何も覚えてないのですか?」
「え・・・」
確かに記憶がないことに気がついた。
私の名前は?私の家族は?私の年齢は?
私・・・誰?
「無理もないです。ここに来る方はたいてい記憶を落としていますから」
「私・・・誰なの?」
「あなたは・・・佐々木晴香。高校1年生です」
「私の名前・・・晴香・・」
ズキっ
「痛ッ・・・なんなの・・思いだそうとすると頭が・・・」
「忘れた記憶を無理に戻そうとしているからですね。大丈夫です。次第に戻ります」
「そうなの・・・」
「記憶がないということはここに来た理由もお忘れのようですね」
「・・・?」
「あなたは20○○年5月3日の午前14:30頃・・・交通事故で亡くなっています」
「・・・は?」
「えーっと・・・歩道に突っ込んできた軽自動車が」
「ちょ、ちょちょちょっと待って!!」
「なにか?」
「ちょっと待ってよ・・・交通事故とか・・・そんなの・・」
「・・・まだ信じられませんか?」
「信じるとか信じないとかそういう問題じゃ」
「わかりました。では、あなたの記憶をすべて戻しましょう」
「・・・ほん、と?」
「できればこれはやりたくありませんが」
「どうして?」
「あなたに大きな負担がかかりますから」
「い、いい。大丈夫」
「ほんとうですか?」
私はコクコクと頷いた。
すると画面の中でハヤトがゴソゴソ何かをしだした。
「・・ゴソゴソ・・ガッ・・・あ、では今からそちらに行きますので・・」
「え、え、こっち来んの!?」
「はい、少々お待ちを」
そう言うと勝手に電源が切れた。
2分後ぐらいに彼はあらわれた。
「おや、意外と小さいですね」
強烈な光とともに私の前に現れた彼はスラッと大きな背丈に
黒髪短髪。そして左耳には2つのピアス。
目の前にしてみてもいくつなのか見当もつかない。
私は驚いた衝撃でしりもちをつき、
そして彼の容姿に見とれたまま口を開けていた。
「どうしました?大丈夫ですか?」
そう言って手を差し伸べてくれた彼は微笑んだ。
「でわ、さっそく始めましょうか」
「・・・どうすんの?」
「私に任せて・・・」
スゥーっと彼は近づいて私のすぐ目の前に顔がある。
「な、なにすっ//」
「じっとして。目を閉じて」
私の心臓はドキドキしながらも言われるがままにやってみる。
「今から記憶を戻します。ビックリするかもしれませんが、状況を理解してください」
「・・・う、ん・・」
少し怖がっている私に彼はポンっと頭に触れてくれた。
そして、呪文のような言葉をいくつかつぶやいてから
私のこめかみあたりを指で抑え、それから・・・額をくっつけた。
「佐々木晴香の16年間の記憶よ。全て戻りたまえ」