第2話:ちょっと散歩したら、悪役令嬢がついてきた件
第2話:ちょっと散歩したら、悪役令嬢がついてきた件
> 「ただ散歩したいだけだ……主人公チームの近くにいたくないだけ……」
カイトは深くため息をつき、夜のホテルを後にした。
英雄ごっこに夢中な主人公たちを見ていると、なぜか胃が痛くなる。
静かに、誰にも邪魔されず、のんびり散歩したいだけなのに——
> 「一時間だけ静かに歩ければ……帰ってアップルパイ食って、寝る。それだけだ」
——その時、微かに地面が揺れ、鎖の触れ合う音が聞こえてきた。
ホテルの裏にある、廃墟のような建物からだ。
> 「……やめとけよ、俺。足、動くなって。あっち行くなよ……」
だが体は勝手に動き、カイトは半壊した隠し扉の前に立っていた。
そっと手を伸ばすと、扉は自動的に開き、中から魔石の淡い光が漏れてくる。
誰かの、微かな呼吸音も——
> 「誰かいるのか?」
返事はなかった。
壁に鎖で繋がれていたのは、美しい銀髪の少女だった。
紅玉のような瞳でこちらを睨み返しつつも、体には力が入っていない。
その顔を見た瞬間——彼は思い出した。
> 「……ルシア・ヴァンドレス」 「この世界で一番の悪役令嬢……王家に逆らった罪で封印されたんだっけ」
物語本来なら、主人公に“正義の手”で処刑される存在。
世界に忌み嫌われた少女。
だが今、彼女はまるで数日間何も食べていないかのように弱々しかった。
> 「……お前は誰だ」
「殺しに来たのか?なら……早くやれ……」
カイトは小さな手首に巻かれた鎖を見て、深いため息をついた。
> 「……やめとくわ」
彼が手を軽く上げると、即座にスキルが発動した。
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【スキル《世界封印解除》使用中(出力0.0000002%)】
【全ての魔法拘束および鎖を破壊しました】
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ガシャアアン!という轟音とともに、鎖は粉々に砕け散った。
ルシアは目を見開き、震える声で尋ねた。
> 「今の……お前、何者だ……その力は……」
> 「しーっ。喋るな。声出すだけで町が消し飛ぶかもしれんから」
カイトは鞄から持ち歩いていた乾いたパンを取り出し、彼女に差し出した。
> 「これ食って、さっさと逃げろ。この場所はもう安全じゃない」
ルシアは静かにパンを受け取り、だが静かに涙を流した。
> 「なぜ……なぜ助けてくれた……」
「神すら私を見捨てたのに……お前は……」
カイトは背を向けて、廃墟を後にしながら答えた。
> 「俺は神じゃねえよ。ただ静かに暮らしたいだけさ……」
彼が視界から消えたあと。
少女は胸に手を当て、涙を流しながら呟いた。
> 「私は……貴方についていく」
「たとえ世界が敵になろうと、私は……貴方の味方だ……永遠に」
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【章末ステータス更新】
ルシア:好感度 100%(恋愛感情MAX)
追跡状態:ON
人生の目標:貴方=宇宙の中心
カイト:
> 「……なんか今、背中がゾクッとしたんだが……」
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