ジュリアとガリオン(4)
本編『光と影ー織りなす夢の形』(完結済)のスピンオフ短編集となります。
本編ではあまり描かれていないジュリアの相棒ガリオンとの話になります。
ジュリアの幼少期からの訓練とガリオンとの関係を描いた事件簿
そして、BFFとなるイメルダとの馴れ初めなど、
本編では公開されていない話を特集しました。
ジュリアファンの皆さん、是非お楽しみください!!
ジュリアはガリオンとは親友のようにアンドロイド達とも親交が深かった。
ロボット的な的確な反応に安心感を感じるのである。
その中でもガリオンのメンテナンスを担当するフィーメイルの少尉カオリとは親友のような関係なのだ。
「カオリ、ガリオンのメンテナンスをお願いに来たわ。」
「わかったわ、ジュリア。じゃ、この診察台に乗せたらスイッチを切って!」
「なんか、メイルの奴らが函館に立て篭もったって聞いたけど?」
「そうなのよ!うちのセクションも言ってみれば人類でいう医療班だから、これから忙しくなるんじゃないかと
思っているの。」
「立て篭もったメイルの中にアランもいるよの!」
「そうなの?? なんで? うちらの友人じゃない?」
「そうなんだけど、彼は前々から今のアンドロイドの待遇に不満を持っていたのは確かね。」
「そうだったのね。私が派遣されたら戦わなちゃならなくなるのに・・・まいったわね。」
「そうなったら、私も派遣されるわよ! 輸送機だと迎撃される可能性が高いから陸路で行くとか。」
「それじゃ、私のホバージェットでいきましょうよ!」
そして立て篭もったメイルとそれを包囲するフィーメイル達の攻防は激化していった。
とは言っても、そもそもリスクを犯す確率が高い戦術はアンドロイド達のAIでは採用されないため
小競り合いが絶えず続いているような状況である。
メイル達の主張としては、まずは日本の国土に人類国家とアンドロイド国家を造るべきだ!ということで、
彼らは五稜郭を首都として北海道国家を造ろうとしているのである。
このままでは、その主張と行動に感化された他のメイルに影響を及ぼす可能性が高くなり首都湯沢でも
テロ的な行為の可能性が高まり国家的な危険性があるとAIが弾き出したのだった。
未来社会の湯沢の高層ビルではジュリアとガリオンは共同生活をしている。
普通の住民はタワマンに住んでいるのであるが、ガリオンのエレベーターでの移動が重さ的に無理があり
防衛軍の宿舎の1階に彼女らの住居があった。その隣はソフィアの部屋ではあるのだが、
ソフィアはラボにほぼ常駐しているため、会う機会は少なかったが双子として生まれ育った2人の絆は堅かった。
そして、そのソフィアから久々に連絡があった。
「ジュリア、五稜郭でメイル達が立て篭もっているのは知ってるわよね?
私達の想定ではこのまま放置しておくと彼らの国家ができてしまうという予測が出てしまったの。
彼らはそもそも人類に敵対しないようインプットはされているけど、
アンドロイド同士の戦闘ではある程度のリミッターがかかってしまう設定なの。
だから、ジュリア、あなたの出番なの。奴らを破壊してもらいたいの。」
「そうなのね、でもあの中に私の友人のアランもいるようなの・・・」
「彼らの意識的なデータはクラウドに保存されているから再生可能よ!」
「そうなんだろうけど・・・」
ジュリアには、物に宿る付喪神のような概念がありそれをアンドロイドの個体にも感じていたのだった。
「だから、ガリオンをこの機会に強化するから、私のラボに連れてきて欲しいの。」
「どんなことするの?」
「まずは、両脇腹に当たるところにレーザーレブレードを装備するわ。ウイングのように開閉できるように
するから、それでアンドロイド達のボディは切り裂けるようになるわ。それと戦闘用のファングとクローを装着するわ。そうすればあなたが自ら手を下さなくても済むでしょ?」
「・・・わかったわ。今から行くわよ。」
ジュリアはあまり乗り気でなかったのだ。
だが、誰かがやらなければならない・・・
ガリオンの装備アップデートをしている間、彼女は1人で部屋にいた。
機械ではあるのだがガリオンがいない部屋はガランとしている。
こんな少しの時間ではあるがまるでペットロスになってしまったような気分になってしまった。
『やっぱり、ガリオンとは一緒に育っているから、親というか兄というか、私にとってはそんな存在なんだな』
と再認識できたのだった。
すると急遽防衛軍からジュリアに連絡が入ったのだった。
「ジュリア様、言いにくい話なのですが・・・あなたの友人のカオリ少尉がやられたフィーメイルのメンテナンス中にメイルのレーザーキャノンを受けて破壊されてしまいました。あなたが彼女の第一連絡先に指定されていたのでご連絡した次第であります。では、失礼いたします。」
ジュリアは、目の前が真っ白になった。
『一緒に行こうって約束したのに、先に派遣されていたのか・・・
同胞にそんな酷いことをあいつらはするのか??
ということであれば、言語道断、許すわけにはいかない!!』
ジュリアの目には怒りが爆発していたのであった。