えぴろーく
わたしは、小さな小屋で産まれた。
らしい……
名も無き村で名も無き両親で名も無き知らぬ人に育てられた
らしい……
わたしは、そんな矛盾を抱えて生きている
そんな人達のことをわたしは、「 」と呼んでいる。
陰湿な目というのはヤケに目立ち、好奇の目というものは後を引くのだ。
わたしは生まれてこの方多分16年か……あぁ……いや、18かもしれない。まぁ、どっちでもいいや、そういう目しか見てきていない。なんせ、私を護ってくれるのは私しかいないからだ。
そう、私には才能がある。
何となくだ、何となく触った枯れた木が突然花を咲かせた。
意図していないのに淡い水色の花を咲かせた。名も無き花だ。気にしたところで誰も見向きもしないような枯れ木の淡い花だ。
おおよそだが、ここに来たカップルはこの木を見ても特に感想もなく、いや……何も思うことなくここを通り過ぎて目と鼻の先にある鮮やかに咲くあの……ピンク色の花を多分、そう多分見るだろう。
あの花は知らない。ただ、寒くなってから暖かくなるとよく見かける花だ。
名も無き人達があの花の下で飯を食ってケラケラ笑っているあの花だ。
「 」は何をしているのかとふとたまに気になり見たことはあるが、でっかい虫がいたくらいだ。あれは美味しくなかった。
どうやらわたしは「 」からすると孤児と言うらしい。
みすぼらしい服を着ている子は孤児という名前を貰えるらしい。
名をもたない私からするとなんだか分からないが、自己を紹介する時に使えそうじゃないか?と少しばかりウキウキしたというものだ。
まぁ、それはいいんだ
毛ほどもな
そんなことがつい2ヶ月前だったか?
なに?数字はどこで覚えたかだって?そんなもの決まってるじゃないか。
わたしの手を舐めまわし、「 」の股の間についてるあの臭い棒を加えさせてくる「 」から投げ捨てられるように渡されるあの紙切れ?だったか、それの読み方が分からなくて聞いた時に教えてもらったことだ。
毎回少しだが、不愉快な気持ちになるがこれがあれば美味い飯が食えるのだ。
少しばかり我慢だな。
わたしは、ちからを持っている。
それを自覚していた。
そして、「 」は来たんだ。
「お前の名は」
「あぁ、孤児だ」
「名を言え」
「あ? 孤児だっつってんだろ。わかんねぇな。「 」」
その「 」は眉間に皺を寄せたんだ。
そして、わたしの手を血だらけになって息も絶え絶えな「 」に当てさせたんだよ。
そしたらよ、そいつ全身から出てたあの真っ赤な液体が体に戻って次の日には酒?を飲んで笑ってわたしを蹴飛ばしてくれたんだ。
愉快な日だと思ったよ。