85話 2度目のお泊まり
それからしばらく雑談をし、もういいだろうという段階で俺は切り出した
「……よし、じゃ、今回の件は解決という事で……解散でいいかな?」
「……良いわけないでしょ」
「……馬鹿なの?」
「えっ、ちょ、2人とも辛辣!?」
いきなりの罵倒に俺は悲しさを通り越してもう混乱しか残っていなかった。
「今は炎上しなくてよかったねって言ってるだけで、彩斗くんが私に言わないでこんな危険な事をした事を許した訳じゃないんだよ?」
「そーそー、話を聞いた限り絶対ちゃんと話し合った方がいいよね?」
「うっ……た、確かに」
『ドリーマー』を使う為だけにやった行為だった為そこまで深くは考えていなかった……。
「はぁ……ま、私の為にやってくれたことみたいだし、怒んないけどさ……せめて私に相談して欲しかった」
「…………はい」
悲しそうな命の顔を見るとそれ以上何か言うつもりにはなれなかった。
「ごめん、軽率な行動だった」
「……いいよ、許す」
許された……良かった、このまま嫌われでもしたらどうしようかと思ってしまった。
命は寛大にも許してくれたが、何時でも同じように許してくれるとは限らない。
もしかしたらまた別の事が起こって俺が秘密裏に何か対処しなくてはいけなくなるかもしれないし、そうなったらまた命に何も言わずに行動するしか無くなってしまう。
……何とか早急に対処法を考えなくてはな。
「じゃ、とりあえず俺は帰るよ、2人はどうする? もう遅いけど…………」
「え、2人とも泊まってかないの?」
「……え?」
「え、良いの?」
「うん、もう夜も遅いし……寝るとこは無いけど、今から帰るのはちょっと不安でしょ?」
俺はともかく紫恵は非常に可愛いし、夜間に外で歩いていたら何か良くないことが起きてしまう可能性も高い。
泊まらせて貰えるのなら泊まらせて貰った方が良いだろう。
「じゃ、とりあえず2人仲良くするんだぞ、俺はもう帰る……」
「え? 何で? この前もとま……」
「ちょ、ちょーっとこっち来い?」
命を連れリビングの外へと出る。
「……何?」
「とぼけんじゃねぇ! 今何言おうとしてた!?」
「え、この前は泊まったのに今日は泊まらないの? って……」
「それ絶対誤解生むだろ止めろよ!?」
さっきからそうだがこいつの発言はいちいち危ないぞ!?
命に嫌われるのは嫌だが、それと同じくらい俺は紫恵に嫌われるのも嫌なんだが!?
席が近いのもあってなんだかんだ言って学校では結構話すし、もしかしたら嫌われていちばん気まずいのは紫恵かもしれない。
と、いうか、可愛い子に嫌われたくないです。
俺の問に対して命はキョトンとしながら返す。
「……誤解って、私達別にいやらしい事してる訳じゃないんだから良いじゃん」
「いやいや、男女が同じ部屋で一緒に寝る……というか2人きりで一緒に居る時点で割といやら……良くないと思うんだが!?」
「…………へぇ〜」
俺のその発言を聞いた瞬間、命の口角が上がった。
そしていたずらっぽい表情をしながら俺の方へずいっと近づいてくる。
「そっか、じゃあ彩斗くんは私にいやらしい事してたんだね?」
「ーーっ! そういう事じゃないっ!」
くっそ、からかいやがって……ほんとにやってやろうかなマジで………。
ま、それは冗談だとして、流石に変な事は言わせられない。
「命、本当に……」
「ふふ、わかってるよ、冗談だって」
「…………命、笑えない」
「ごめんって、ほら、紫恵ちゃん心配するよ、行こ?」
「…………」
ううむ、なんだか釈然としないが、ともかく言わないでいてくれるのなら良いか。
俺は命に着いていきリビングに戻る。
「あ、どうしたの? いきなり出てったりして」
「んー? なんでもないよ〜」
「あぁ、ほんとに、なんでもない」
「…………」
やめろよ? マジでやめろよ? と、俺は命に念を飛ばし続ける。
それに気付いたのか、命はニコリとこちらに向かって笑みを浮かべた。
………こいつ、やっぱり可愛いな。
「それで、どうするの? 3人で泊まる? 私は別にいいよ、ちょっと狭いと思うけど、私と紫恵ちゃんがベッドで一緒に寝て、彩斗くんは座椅子で寝てもらえば良いよね?」
「うん、私はそれでいいよ! けど……彩斗くんはそれでいい? 普通に1人だけ寝づらいと思うんだけど…………」
「いや、俺は帰りたいんだが………」
「え? この前」
「あー! 泊まりたい! 泊まりたいですッ!」
俺が帰りたいと言おうとすると命がそう先程の事を口に出そうとするので俺は慌てて泊まると言うしか無くなってしまっていた。
「本当に?」
「あぁ、これでも俺は男だし、ある程度体は強いんだぞ?」
「えー? そんな筋肉あるように見えないんだけど〜」
「じゃあ、触ってみるか?」
俺は自分の腹筋をパンパンと叩く。
トレーニングや超能力のお陰かもうかなり硬くなっている。
「あ、え〜、ま、また今度にしよっかな!」
「え? あ、そうか、分かった」
うん、なんかやんわりと断られた気がするけど気のせいだよね!
俺は密かに落ち込みながらもそれは表に出さないようにして話を続けた。
そんなこんなで俺はまた命の家に泊まる事になってしまったのであった。




