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俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
81/129

81話 彼の地獄はこれからなのである



「はぁ……はぁ……」


一通り暴れ回った男は肩で息をしながら憔悴しきった顔でナイフを握りしめていた。


「へぇ………君、凄いね」


俺は素直にそう思った。

男は夢の中であるためかかなりの力を持って他の人たちを殺して回っていた。

刺された人々も初めのうちはただ苦しんでいるだけだったが、次第に精神が疲れてきたのか一人、また一人と動かなくなっていた。


時には反撃をくらい身体中を傷だらけにしながらも男は周りの他のファンたちを殺しきったのであった。


「おい! 全員死んだぞ! 早く解放しろ!」

「それは、君を? それとも……この子を?」


随分と苦しそうな顔をして未だにもがき続ける『キミイロ』のメンバーの一人を観客席側に向ける。

すると男は激昂しながら叫ぶ。


「カナエちゃんに決まってるだろ!? は、早く解放してやってくれ! 見てられない!」

「ふふ、そうかそうか…………だけど、まだ1人残ってるよね?」

「あぁ……分かってる…………だけど、まずは先に解放するんだ! 俺が死んだあとじゃカナエちゃんの無事を確認出来るやつが居ない、お前がそのままカナエちゃんを殺しても分からないじゃないか!」


ふむ、どうせ全員死んだらこいつらは消してそのまま俺は夢から醒めるのでそんな事はどうでもいいんだが…………ここが夢だと気づいていないこいつからしたら死活問題なんだろうな。

ま、そんなことどうでもいい、俺は報復を続けるだけだ。

こいつがどうしたら更に傷付くのか、それだけを考える。


「…………分かった、良いだろう、この子は解放してあげるよ………だけど、君がそのナイフで首を突き刺したらね!」

「っ!? だからさっきも言っただろ!」

「ちっちっち、甘いね」


わざとらしい仕草で煽り散らかしながら『キミイロ』のメンバーの一人の頭を彼の方に向ける。

そして、その子が彼の事を凝視するように想像した。

すると、『キミイロ』のメンバーの一人は涙を流しながら彼に向かって「助けて」と呟いた。


「なんのつもりだ!」

「ほら、この子もこんなに苦しんでるのに君の事が見えてしっかりと喋れているじゃないか…………つまり、君がそのナイフで首を切っても暫くは意識が残るんだ………ほら、どうする?」

「…………くそが!」


俺が煽りに煽ると彼は自分が先程まで周りの他のファンを殺しまくっていたナイフを持ってそれを首に向ける。

プルプルと震える手は彼の恐怖を物語っているようだった。


……ナイフの先端が彼の喉元に触れるか触れないかというところで、彼は目をギュッと閉じ、奥歯を食いしばった。


「……カナエちゃん……」


その名を呟く声は、その大柄からは似ても似つかないほどか細いものだった。


「そう、それでいいよ、そのまま……」


俺は笑みを浮かべながら、じっとその光景を見つめていた。

彼の内面で渦巻く葛藤と恐怖、絶望、そしてほんの僅かな覚悟。

それらがぐちゃぐちゃに絡み合って、彼の顔を歪ませていた。


「く……そ……っ!」


しかし、それでも彼は出来なかったようだ。

ナイフは彼の喉元の寸前で止まり、彼を傷つけることは叶わないでいた。


「あれ? どうしたんだい?」

「ま、待ってくれ、いま、今やるから…………」

「待てないよ〜? ほら、早くしないとこの子死んじゃうよ?」

「わ、分かってる!」


彼はもう一度覚悟を決め勢いよく突き刺そうとするが、またもやナイフは止まってしまう。


「へぇー、君、他の子は容赦なく殺したのに自分自身になると日和っちゃうんだー…………屑だね」


そんな彼の根性に心底嫌気がさす。

他の奴らも屑に変わりがないのは分かっており、それに対しては怒るどころか愉悦さえ感じるのだが、こいつは仲間は殺したくせに自分で自死する勇気は無いのだ。


「はぁ、つまんない、じゃ、もうやっちゃうよ」


俺は一気に興ざめし、手に持っていた『キミイロ』のメンバーの一人を床に放り投げた。


「けほっごほっ………」


彼女は勢いよく咳き込み、地面に倒れふしている。


「カナエちゃんっ!!」


男が近寄ろうとするも、透明壁に阻まれてそれは叶わない。


「んー、じゃ、仕方ないから……この子は処分しちゃいます!」

「っ!?」

「……っ……い、いや……嫌……っ」


彼女の目に浮かぶ涙は、恐怖か、絶望か、俺の意志できるだけそう言った様なものを醸し出すように想像している。

俺は先程の剣をもう一度構え、彼女に向ける。


そして…………。


「ああ゛っ!!! 」

「っ……ぐ、くそ………」


その剣によって彼女の体は切り裂かれる。

俺は何度も何度もそれを彼女に刺し、そして彼女は息絶えた。


「さて、他の子達も処分してしまおうか」

「…………」


男はもはや呆然として何かを喋る気力も無いようだった。

俺は他のメンバーもサクサクと殺していき、最後に彼の方を見た。


「嘘だ……嘘、だ」

「あ、絶望してるとこ悪いけどさ……きみ、これで終わりだと思ってる?」

「…………え?」

「そんなわけないじゃんか! 君、その程度で終われると思ってるの?」

「あ………いや……いやだ…………」


そう、彼の地獄はこれからなのである。

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