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俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
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79話 『キミイロ』



ここはライブ会場であるため、そのステージに上がろうとするものがあれば警備員が出てくる。

この夢の中でもそれは同じのようだ。


俺が想像して作り上げたのはライブ会場なので、そこに最初から付いている機能は俺が想像したりしなくとも勝手に作動してくれるのだ。

何かを想像して行動するとそれだけで少し疲れるのでこれはかなり便利なのである。

俺の方へと向かってくる男はどこからともなく現れた警備員によって取り押さえられる。

しかし、大柄な男は普通では考えられないほどの怪力を持って警備員からの脱出を試みる。


「くそっ! お前ら! 俺じゃなくてあいつをとっ捕まえろよ、ステージ上がってんだぞ!?」


男は叫びながら俺の方へと向かってくる。

が、警備員の圧力に中々前に進めない。


それでも男は前に進もうとしてくる。

ステージまで後少し、という所で男は動きを止めた。


「な、なんだこれ…………透明な、壁?」

「………はは、面白い顔」

「っ! なんなんだこれ!? 前に進ませろ!」

「無理に決まってるね、だって君達は僕の力には叶わないんだから!」


俺は高笑いしながら男達を見下す。


俺はステージの所に透明な壁を生成しており、それを壊さない限りこちらに来ることは出来ない。

しかし、俺だけは通り抜ける事ができるようにしているのでこちらからは一方的に干渉し放題だ。


「さて、君たち…………反省はしてる?」


俺はそう問いかけた。

無論意味の無い質問である。

こんな事を言ったとしてもやる事はもう変わらない。

俺の動画を見てアンチコメを書いた時点でもうそいつらには全員報復を加えるという事は決まっていたのだ。


しかし、少しでも反省しているのであれば…………もしかしたら優先的に攻撃したりはしないかもしれない。

そう、ほんの少しの温情として俺は彼らに問いかけた。


しかし、やはり彼らとは相容れないようだ。


「ふざけるな!」

「早く解放しろ!」

「訴えるわよ!」


彼らは俺に対して罵詈雑言を浴びせ、ここからの解放を要求してきた。

やはり、1ミリたりとも反省はしていない。


「はぁ……やっぱり愚かだね」


俺は最後の希望も打ち砕かれ、心が更に冷えていくのを感じた。

同調圧力とか言うやつなのだろうか。

声の大きな人間が話始めればその意見が意見のない人達に伝播し、やがてそんな人達も声の大きな人間に流されてしまう。

今の状況はまさにそれであった。


初めはオロオロとして怯えていた人達もある一定の時から俺へ罵詈雑言を浴びせる一派へと早変わりしていた。

多分、命に嫌がらせをしているのも同じ感じなのだろう。

『キミイロ』のファンの仲間がみんなこぞって命を嫌っているから。

仲間はずれになりたくないから、そんな理由で命を生贄に捧げているのだ。


本当に……虫唾が走る。


だが、好都合だ。

ここで少しでも反省している態度を見てしまうと……少し躊躇いが出てしまいそうだ。


こんなクソ野郎どもに躊躇いなんていらない。

その反省している様子だって本当かどうか確証は無い。

恐怖は人を変えると言うし、俺による恐怖によってこいつらがただの生存本能でそう言っている可能性だって大いに有り得る。


「…………さぁ、それでは今からショーを始めようと思う!」


芝居がかった変に甲高い声を出して俺は手を広げる。

観客席からはブーイングの嵐だ、うぅん、実に心地よい。


「てめぇ、何するつもりだ!」


中でも1番暴れている男が叫ぶ。


「ふふふ、それは見てからのお楽しみだよ、愚か者くん!」


変に昂った気持ちのまま俺は叫ぶ。

これは命の為だという大義名分の上で俺の鬱憤は晴らされるのだ。


命を救う事が出来る、さらに俺の鬱憤も晴らすことが出来る、本当に最高だ。


俺はステージ上をカツカツと歩く。

まるでマジシャンのような燕尾服に黒い少し背の高いシルクハットをかぶり、手には紳士の持つような杖を持ち、俺は彼らに話しかける。


「いいかい君達、これは君達が悪いんだ、僕だって本当はこんな事したくない…………」


満面の笑みで涙を流すような仕草をする。


「そう、これは全て君達がみこ…………いのちちゃんに嫌がらせを続けた罰だ!」

「っ! それは元々あの女がっ!」

「あの女が?」

「っ…………」


大柄な男も力で勝てないとわかると段々と意気消沈していき、未だに暴れ回ってはいるものの最初の時のような勢いはすっかり失われてしまっていた。


「まぁいい、本当だったら君たちに直接報復してあげたかったんだけど……流石に僕もそこまでは慣れていないからね」


俺はくるりと後ろをむく。


観客席から小さな悲鳴が漏れる。


「っ、お、お前、何するつもりだ!?」

「何って…………決まってるじゃないか」


俺はステージで踊っている『キミイロ』のメンバーの一人に手を伸ばす。

正直この人達に恨みがある訳では無い。

命が好きなグループでもあるし、何よりこの人達が何かしたとは言えない。

ただ今回の事の原因のひとつになっていることは間違いない。


それにここに本人が入っているわけじゃないし…………ここはひとつ犠牲になってもらおう。


俺は声高らかに宣言する。


「君達の大好きな大好きなこの子達に犠牲になってもらうんだよ!」

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