6話 決意
どうしたらいいのか分からないが、とりあえず色々試してみないことには始まらない。
『ウェイトポーチ』という名前があるのだから、もしかしたらその言葉を口に出せば能力が使用されるのかもしれない。
「う、ウェイトポーチ!」
家の中だとはいえよく分からないことを口に出すのは恥ずかしいため、少し躊躇いながらも俺はそう言った。
…………特に何も起こらない。
まぁ、切り替えていこう。
次に俺は重さを増減させられる事に注目して、重さを半分まで減らすようにイメージして言葉を口に出した。
「軽くなれ!」
その言葉を口に出した瞬間、ガクッと俺の腕が上に持ち上がった。
「うおっ!?」
そんなことが急に起こったので変な声が出てしまった。
急にゴミ袋の重さが軽くなったのだ。
そう、俺の超能力によって。
「ま、まじかよ…………」
俺は唖然とするしか無かった。
このゴミ袋に先程までの重さは感じられない。
見た目は全く変わっていないのに、重さだけが減っているのだ。
「は、はは……や、やっぱり本物だったんだ!」
俺は笑いが止まらなかった。
そう、俺は超能力を手にする事ができるようになったんだ。
その興奮を抑えきれず、俺はすぐにもう片方の能力を試してみる。
「重くなれ!」
そう言った瞬間、今度は逆にズシリとした重みが腕にのしかかる。
「おぉっ……!」
これはただのゴミ袋だ。
中身は生ゴミなので普通のゴミよりは少し重いが、それでもそこまでは重くない。
だが、これはまるで砂袋でも持っているかのような重さだ。
俺はもう一度ゴミ袋を軽くすることにした
「軽くなれ!」
今度は一瞬でその重さが消え、袋はまた軽々と持ち上がった。
「完全に、超能力だ……」
さっきまで半信半疑だったが、ここまで明確に効果があるとなれば疑いようがない。
これは本当に俺の意思で袋の重さを操作している。
やばいな、これ……すげぇ便利すぎる……!
実生活でも役に立つし、場合によっては仕事にも使えるかもしれない。
俺はコンビニバイトだが、袋に入った物を運んだりすることもある。
品出しなどではダンボールに入ったものを動かすためそこまでこの能力は使えないが、ものによっては袋に入って届くものだってある。
そういった時にこの『ウェイトポーチ』を使えばほとんど力を使わずに運ぶことが出来る。
「はは、面白くなってきたじゃねぇか!」
わくわくして思わず叫び出してしまいそうな衝動に駆られるが、何とか理性で抑え込む。
超能力を買える人間なんてこの世に俺くらいだ。
や、このサイトを知っている人間なんだったら誰でも買えるのだろうが、あんなサイトにお金を払うバカが居るわけない。
物凄い勢いでブーメランが帰ってきている気がするが気にしないでおこう。
俺はこれからの生活について妄想して楽しくなっていたが、その瞬間、あることを思い出して絶望した。
超能力を買うためには1万円がかかってしまう。
学生の俺にはそこまで多くの金もないので、そんなにいっぱい買う事は出来ない。
特に俺は大学費のための貯金で5万円が飛び、また他のお金も学費でだいぶ飛ぶ。
とは言っても高校の費用は支援制度を使う事によってかなり減らす事は出来る。
それに入学金や最初の1年の学費は親が払ってくれていたのでそこは何とかなる。
小さい頃から家には親が居ないので十分育児放棄はされているのだが、お金はある程度までなら出してくれているのでそこまで気にしていない。
しかし、学費の問題はそこまで無いとはいえ、生活費もあるし、今残っているお金を全部使ってしまうということは出来ない。
だからこそ、俺は1ヶ月に2個くらいしか超能力を買う事しか出来ないのだ。
毎日1回超能力を手に入れることが出来るチャンスがあるというのにそれを逃してしまうというこの悔しさ。
そして過去の俺が何故無駄な食事とかにお金を使い果たしてろくに貯金をしてこなかったのかという怒り。
そんなどうしようもない感情に身を飲まれる。
大学の為に貯金しているお金もあるわけだが、それを使ってしまおうとも一瞬考えてしまうが、それは一番だめだ。
このお金は大学の為の貯金であると同時に何か有事の際に使う為のお金なんだ。
例えば俺が何かの病気になったとして手術が必要となったとする。
その時に俺の親はお金を出してくれるだろうか?
久しく喋っていないが、恐らく出してくれない。
そうなるとある程度のお金は持っていないと受けることが出来なくなってしまう。
それに、そのお金を使ったとしていい超能力が手に入らなかったとしたらどうだろう?
そうなってしまえば俺は大学に行く為に多額の奨学金という名の借金を抱えることとなってしまい、将来大人になった時に苦しむ事となってしまう。
そうなってしまわないためにも俺はこのお金だけには手を出してはいけないのだ。
俺は使ってしまいたいという心に何とか抗いながらそのお金だけは絶対に使わないと決意した。




