31話 『幸運の恵み』
さて、お待ちかねの超能力サイトだっ!
前回の『好印象の恵み』がかなり強い超能力だっただけに今回のにもかなりの期待をしてしまいそうだ。
バイト先で回して万が一物凄いものが出てしまえばすぐに試せ無くなってしまい、もどかしい思いをしてしまうだろうと考え、家まで帰ってから回すことにした。
時刻は11時、新年まではあと1日である。
「…………つまり、これが今年ラストって事か」
色んな考え方ができるが、今は今年最後の日であり、俺はポジティブに考え、1年の集大成であるためきっといいものが出ると思うことにしている。
運はもう使い果たしているとかそういう考えもあるかもしれないが、そんな考え持ってるだけで運が悪くなりそうだ、もっとポジティブに行こう。
バイト終わりの程よい疲れの中、少しテンションが切れ気味になってしまうので、何とか思考をポジティブなものにして少しでもテンションを上げておく。
せっかくなんだし、楽しめるだけ楽しんだ方がいいだろう。
俺は慣れた手つきで超能力を購入する。
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『幸運の恵み』
1年間の幸運が1割上昇する。
運命を味方に。
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さて、また非常に曖昧なスキルが来ました、幸運が1割上がるってなんだろう?
運とかそういうものってなんかもっと数値に表せたりしない非常にアバウトなものなんだと思うのだけれど…………。
まぁ、要するにちょっと運が良くなる的な超能力なのだろう、もしかするとそこまで強いものでは無いかもしれない…………。
しかし、この超能力とか言うもの、常に俺の予想をいい意味で裏切ってくれるものである。
俺は何となくもう一度電子決済アプリを開くと、その瞬間に軽快なSEと共に「チャレンジスクラッチ!」という声が鳴り響いた。
元々この電子決済アプリでいつもの決済時の音以外を聞いたことがなかったので少し驚いた。
画面を見てみると、どうやら大晦日から4日間、「チャレンジスクラッチ」というものが開催されるらしい。
内容は決済時にスクラッチを引き、それによって払った金額が帰ってくるというものだった。
確率は三等が10%、二等が1%、一等が0.01%であり、三等が支払い金額の1%、二等が10%、そして一等が全額還ってくるらしい。
俺は少し卑屈な態度でそれを見ていた。
こんなもんどうせ確率とか言ってはいるがその確率も企業によって操作されて高い買い物とかをした時にはあまり当たらないようにしているに違いない、そう思っていた。
だが、だからといってその機能を利用しないというのとは違う。
もしかしたら当たるかもしれない、そんな期待を胸にそのスクラッチを削った。
その時、豪華なSEと共に画面には一等の文字が映し出される。
「…………はぇ?」
思ってもみなかった結果に俺はただ呆然としてしまう。
その画面をもう一度タップしてみると、画面はいつもの決済画面へと戻った。
俺は目を擦りながら残高を確認してみる。
「…………減って、無い」
ま、まさかさっき払った1万円がまるまる帰ってきたとでも言うのか!?
ありえない…………ということも無いのか、一応確率とも書いている訳だし、これほどの高額決済だとしても当たる時は当たるのだろう。
「……まさか、これが『幸運の恵み』の効果なのか?」
あの説明文の所には1割上昇させると書いてあったから、そこまで実感できる程に、しかもこれほどまでに早く効果が出るとは思っていなかった。
せいぜい数週間たってからあー、確かに、くらいの効果だと思っていただけにまだ半信半疑になってしまう。
もしかしたら『幸運の恵み』の効果では無いという可能性だってある。
本当にものすごく低い可能性をすり抜けてあのスクラッチに当たったのかもしれない。
だが、その確率はあそこに書いてあることが本当なのであれば0.01%である、どう考えても普通にやって当たるとは思えない。
…………しかし、事実として俺のアプリ内には1万円が元に戻っている。
もしかしたら、この『幸運の恵み』という超能力も、かなりのぶっ壊れ性能を持ったものなのかもしれないな…………。
俺は驚愕しながらも、ハッとなってスマホの時計を見る。
時計には23:35の文字が映し出されている。
…………まずい、時間が無い。
新年は別に見たい番組とかも無いので毎年家に留まらず神社で新年を迎えるというのが俺の毎年のルーティーンである。
しかし、今年はバイトで夕勤に入っていたということもあって少し時間が無くなっている。
更に超能力を買ったりする時間もあったので、もう新年までに時間が無い。
「…………急げば、間に合うか?」
神社までは歩いて30分程かかってしまう、走れば恐らくもっと早くつくとは思うが、横断歩道の信号機などに引っかかりまくってしまえび時間までに着くことは出来ない。
超能力サイトを見つけさせてくれたこともあるし、今年は特に行きたかったのだが…………。
こんなことをグダグダ考えていたとしても神社は近づいて来ないので、俺はとりあえず走り出した。
 




