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俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
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3話 『潤いの恵み』


さて、俺の手元には今4万円がある。

学費の為の貯金である5万円を抜いた今俺が使える最大のお金である。


俺は毎日チャリ通であるため、交通費はかからない。

家に親が帰ってくることはほとんどないが、それでも光熱費は払ってくれている。

つまり俺が必要なのは食費と携帯料金、またその他消耗品や医療費くらいである。

食費はコンビニバイトなので廃棄で割と何とかなるし、服などもほとんど揃っている。

なので諸々を含めて俺は月2万円程で生活ができる。


俺はその分を引いた2万円を握りしめていた。


俺は一旦頭を落ち着かせるために家まで帰ってきた。

頭ではダメだとは分かっている。

どう考えてもおかしいサイトだと言うのは分かっている。

最初に払った1万円を完全に回収するためには100日かかるわけだ、それまでに口座への振込を切られたりでもすれば大損になる。

そこまでしっかり思考することが出来ていた。


だが、俺には無理だった!


日々をただダラダラと過ごしている俺にはこの少し危険な賭けというものがとてつもなく魅力的な物に感じてしまっていた。


冷静になれ、冷静になれと頭の中で復唱するが、興奮した俺の頭は一向に冷えてくれず、それどころか更に熱を上げていく。


「…………あと1万だけ、これくらいなら少し贅沢を減らせば何とかなる、1万だけ、1万だけだ」


2万円を全部使ってしまえばほとんどの贅沢を捨てなければいけなくなるが1万円程度ならまだ少し程度で済む。

別に趣味とかもないからその程度なら無くなってしまっても構わない。


俺は一旦1万円だけを持って最寄りのコンビニまで向かった。


店員の気の抜けたいらっしゃいませという声を小耳に挟みつつコンビニATMへ直行する。

他のものを買うでもなしにこの施設だけを使わせてもらっていることに対してほんの少しの罪悪感を感じつつ、俺は電子決済アプリに1万円を入金した。


まだ後戻りはできる。

ここまでならまだ被害は1万円のみだ。

自分の中の好奇心と理性が戦いあう。

初めは理性の方が優勢であったが、次第に好奇心の方に欲という援軍が来てしまい、理性を圧倒していく。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



電子決済アプリのあのすがすがしいし音が俺の部屋に鳴り響く。


「…………やって、しまった」


勝者、好奇心でございます。

頭の悪い行動だと言うのは分かっています。

ほとんどの確率で詐欺やそういったものの類だと言うことは分かっています。


でも、無理でした。

俺は大きなため息をつきながら変化する画面を食い入るように眺めた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『潤いの恵み』

飲み物の効果を倍増させ、その悪影響を半減させる。

ひと口ごとに、身体に潤いが満ち、活力がみなぎる。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「…………はぁ」


さて、終わりです。

こんなん絶対詐欺です。

百円よりかは超能力っぽくはなったものの、その分胡散臭さが何倍にも膨れ上がった。


なに? 飲み物の効果を倍に?

そんなこと出来るわけ無いじゃないか、そんな技術があるのだとしたら今の人類の医学とかはもっと発展してるに違いない。


俺はいつも小説を読んでいるタブを開き、ごろんと寝っ転がった。

今日のバイトは12時から、まだ時間はある、少しダラダラしてから家を出よう。


俺はイライラとする気持ちを落ち着かせるために一缶のエナジードリンクを開ける。

コシュッという小気味よい音と共にエナジードリンク特有のあの薬のような人によって好みの別れる匂いが漂ってくる。


うん、最高だ、これのために生きてる。

エナジードリンクは言わば俺の血のようなものなんだ、これが無ければ何も始まらない。


さっきのストレスからか、俺はいつもよりも豪快にエナジードリンクを飲んだ。


「あー、よくわかんないけど、いつもより美味い気がする」


俺は全てを諦めたかのようにそう呟いた。

1万円もかけたんだ、飲み物が美味しくなってたりでもしないと割に合わない。

そんな心理が働くことによって引き起こったプラシーボ効果か何かなのだろう。


…………そうだ、いつも飲みまくってるから忘れかけていたけど、エナジードリンクには興奮作用があって飲んだら眠気が覚めるんだったっけ?

だけど体には良くないとか…………。

さっきの説明文が本当なのであれば、その眠気覚ましの効果は倍増して、体に良くないという悪影響は半減するのだろうか………?


飲みながらふとそんな事を思った。


「って、そんな事ある訳ないだろ、何わけわかんないこと考えてるんだ俺は…………」


もしかしたら1万円が失われてしまったショックで過ごしている頭がおかしくなっているのかもしれないな。

…………うん、今日は早めにバ先に行こう、それがいい。

外に出て外気を吸えば少しはこの感情も落ち着くかもしれない。


それに、元々今日は早くバ先へと向かうつもりでもあった。

俺はシフト表を思い出す。

そこには俺のシフトの前の時間に入っている1人の女の子の名前が書いてあった。


志賀命(しがみこと)


うちのバイト先で唯一俺と同い年の子だ。

こういう生活してる高校生っているのかな……うちはちゃんした親がいるから…………。

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