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俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件  作者: 黒飛清兎
第一章 『1日1回1万円で超能力が買えるサイト』
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21話 メイク



俺が恨みがましい視線を送ると、紫恵はぷいっとそっぽを向いた。

え、何、俺が悪いん?

よく分からないが、とりあえずはこの状況からの脱却を考えなくては。


紫恵が俺をこの場所に座らせた瞬間、何人かの女子が詰め寄ってきた。


「ねぇねぇ、あんた、なんでそんな急にイメチェンしたの?」


俺の真正面に座ったショートヘアの女子が、ずいっと身を乗り出してきた。


「え、いや、その……」

「なんかさ、前と全然違うよね? 眉毛とか髪型とかさ!」

「うんうん、別人みたいだよね。前までは陰キャって感じだったのに、最近はなんか……えっと、普通に可愛い?」


隣の女子が俺の顔をまじまじと見ながら、首をかしげつつも褒めてくれる。


「べ、別に……そんな大した理由は……」


俺がその後に何があったかを超能力の部分を抜きにして喋ろうとした瞬間、それに被せるようにほかの女子が喋ってくる。


「ふーん、誰か好きな人でもできた?」


その問いに女子たちは「キャー!」と軽く騒ぎ出す。

なんだこのノリ、予想してたよりキツイ……。


「けどさ、女の子みたいになるってことはさ、もしかしてその好きな人って男の人じゃ…………?」

「えっ、それってまさか…………!」

「やりますねぇ!」

「いや、その…………」


俺がちゃんと違うということを示そうとしたその時、紫恵が俺の肩を叩いてきた。

その顔はさっきとは違い少し心配したような顔だ。


「ね、彩斗くん、私なんも考えてなかったんだけどさ、もしかして…………恋人とか居たりしないよね? そうだとしたらクリスマスなんて言う一大イベントのこの時間を浪費させちゃうのは申し訳ないっていうか…………」

「いやいや、いないから……!」


俺は食い気味に否定する。

マジで勘弁してほしい、なんだこの空気。


「そ、そっか……。なら良かった……かな?」


紫恵は一瞬ホッとした顔を見せるものの、すぐにバツが悪そうに目を逸らした。

……いや、良かったってなんだよ、てかよく考えたら紫恵は俺に恋人がいない前提で話を進めてたってことだろ?

なんか……ムカつくな。

まぁ、居ないんですけどね?


紫恵が話した後、ちょっとした沈黙が続いた。

まぁ、話題的にもその次に入りにくかったのだろう。


その間に俺は周りを確認していた。

この部屋はかなり広い部屋で、その中には20人ほどの女子が居る。

中には知らない子も何人かいて、ピンク色の髪をした子や金髪の子も居た。


しかし、暫くするとその空気を断ち切るように、また女子たちが寄ってきた。


「じゃあさ、彩斗くん、今度はメイクしようよ!」

「えっ、えぇ!?」


唐突なその提案に思わず声が漏れ出てしまう。


「しーちゃんから聞いたよ、メイクとか興味あるんでしょ?」

「え、いや、そんな事…………」


俺は紫恵と話した時のことを思い出す。

…………うん、メイクのお誘いは全て断ってきている。

ましてや俺からメイクの話なんて出した事ないし、興味があるなんてことも一切口に出してはいない。


俺は紫恵の方を向く。

その瞬間、紫恵は気まずそうに視線を外し、ちょっと下手な口笛を吹く。

うーん、分かりやすいな。


「紫恵…………」

「ご、ごめんって、わざとじゃ…………って、あれ今」

「ん、あ」


ちくしょう、やっちまった、さっきまで頭の中で紫恵への恨みが溜まりまくっていたせいでそのまま頭の中での呼び名のまま語りかけてしまった…………。


えっと、この状況から脱却するには…………うん、これしかない。


俺はメイクをしようと提案してくれたら女子に向き直る。


「…………やりましょう、メイク!」

「え、ほんと? さっきまで嫌がってるみたいだったけど…………」

「そんな事ない、さぁ、やろうか! 今!」


紫恵を置き去りにほかの行動を始めることによって紫恵との会話を強制的に打ち切るという作戦だ。

諸刃の刃ではあるが、やらないよりはマシなはずだ!


俺の言葉を聞いた誰かがすかさずメイク道具を取り出すと、その周りが一気に慌ただしくなった。

もう止めようがないと悟った俺は、覚悟を決めるしかなかった。


女子たちはまるで祭りのように喜び、早速俺にメイクを始める。

リップを塗り、アイシャドウを引き、眉毛を整える。

俺はその出来上がりを見るのが怖くて、目を逸らしたくなる。


その時、耳元で聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「…………紫恵って言ったね?」


俺は身震いした。

そうか、これが大いなるものを前にしたちっぽけな生命体の気持ちなのか…………!


俺は目を瞑っているため目の前の様子は分からない。

が、だからこそ聴覚が敏感になり、その音を聞き漏らさずに全て受け取っていく。


「せっかくちょっとだけ仲良くなれたかなって思ってたのにずっと他人行儀だったからさ……ちょっと寂しかったんだよ?」

「…………ごめん」

「ま、これからはちゃんと私の事は紫恵かしーちゃんって呼んでよ?」

「…………」


俺はあえて答えない。

ここで答えてしまったらそれは確定してしまうからだ。

返事はしなかったが、それから紫恵が俺に話しかけてくることは無かったので、一旦は大丈夫だったのだろうと安心した。


「よぉし、出来たよ! ほら、目開けてみてよ!」


女子の声が聞こえる、どうやらメイクが終わったみたいだ。

皆さんがブクマ評価してくれたらこのメイクは成功します。

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やりますねぇ ダメだ止まらなかった…
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