三人、旅立った
「ごめんね、母さん。もう、待てないの」
だから、自分から会いに行く。
そう決めた少女の頬を撫でるように、夜明け前の暖かな風が吹き抜けた。
隙間だらけのボロボロの小さな家。けれど年がら年中暖かいこの町では、そんなことは苦ではなかった。
家に訪れる風だって、ほら、こんなにも暖かい。
それはまるで、少女を引き留めようとするかのようで、少女は思わずクスリと笑った。
「ごめんね」
今度の謝罪は、長年自分を守ってくれた、この家と、優しい風に。
「スージー・ベルン、行って来ます!」
* * *
「おっし、今日だあぁぁぁぁっ!」
理由は、特にない。ただ、目が覚めたときまだ陽が昇りきってなくて、きれいだなぁ、なんて思っていたら、身体がムズムズしてきただけのことだ。
少年はがばっと身を起こすと、大きく吼えた。
「今日、俺はここを発ぁーつ!!」
* * *
「今日で僕も14ですかー」
古びた廃屋からのそのそと這い出すのは、何か黒い物体――ではなく、服という服を全て黒で統一した、小柄な少年だった。どうやらサイズが合っていないらしく、着るというよりかは、着られている、と言った方が正しそうだ。
ぶかぶかの三角とんがり帽子のふちを少しだけ持ち上げ、彼は空を眺めた。
「朝焼けですかー。旅立ちにはピッタリですねー」
はじめまして、sunnysing です!
この度はいらしてくださり、本当にありがとうございます。
どうか最後まで彼らの旅を見守って下さったらとってもとっても嬉しいです!
よろしくお願いしまーす♪