狐の嫁入り
とある田舎の村に、祖母、母、娘二人の家があった。
母は、結婚して家を出ていたが、夫の裏切りに遭い、夫と別れ、一人、娘たちを連れて実家に身を寄せていた。
まだ幼い娘たちを育てるため、母は遅くまで働いていた。
ある日の夕方、庭でガサゴソ音がした。
祖母は下の娘を寝かしつけて、自分も一緒に寝てしまっていた。
上の娘が一人、庭に様子を見に行った。
すると、一匹の子狐が、庭に干した干し柿をむさぼっていた。
「きつねさん?」
上の娘が声をかけると、子狐は、目を七色に光らせて威嚇した。
「わあ!きつねさんのおめめ、虹みたい!」
ニコニコとほほ笑んでこちらを見る娘の顔を見て、子狐は威嚇をやめ、また、干し柿を食べ始めた。
「そうだ!」
娘は台所へ行くと、おやつに食べて残っていたふかした芋を持って戻ってきた。
「きつねさん、おいもたべる?」
子狐は娘の持っている芋を食べ始めた。
それから、子狐はほかの人間の居ない隙を狙って、娘の前に姿を現すようになった。
ところがある日、この娘が狐に餌付けしているのを村人が目撃してしまった。
野生生物に餌付けをすることは非常に危険な行為だと、村人は祖母と母に伝えに来た。
それを背後で聞いていた娘は、家を飛び出してしまった。
幼い娘にとって、子狐は寂しさを埋めてくれる大事な大事な友達だったのだ。
泣きながら山道を歩く娘を子狐が見つけた。
子狐は娘が村を追い払われたと思った。
全身の毛が波打つような怒りを覚えた。
子狐は、その霊力の限り、体を膨らませ巨大な化け物となって村へ降りた。
子狐は、娘を泣かせた元凶を捜し歩くように村中を練り歩いた。
人々は突然の出来事におびえ、震え、家に閉じこもった。
村の騒ぎに気付いた娘が親の元に帰ってきた。
母にしがみついて怯える娘に、この娘を泣かせているのは、自分なんだと、子狐は思った。
大きな大きな化け物は、クーンと大きな鳴き声を上げると、スーッと森の中へ消えていった。
「きつねさん?」
娘には、寂しそうに走り去る子狐の後ろ姿が見えた。
晴れた空にぱらぱらと雨が降った。
その日、神社の横のフリースクールでは、雨が降っていて、午後の実習を行うか否か子供たちが話していた。
「晴れてきた。」
神子の声に、皆が外を眺める。
「晴れてるけど、雨降ってるよ。」
愛子が言うと、神子がすかさず言った。
「ああ、狐の嫁入りだね。」
「狐の嫁入り?」
「うん、古い言い伝え。こういう天気の日は狐が嫁入りするんだって。」
それを聞いた愛子は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「神子ちゃんも、龍姫ちゃんも、狐鉄にはそれ、おしえないでね。」
「え?なんで?」
「なんでも!!!」
愛子は顔を真っ赤にしたまま、教室を出て行った。
神子と龍姫は不思議そうに顔を見合わせた。
外では雨が上がって、虹がきらめいていた。




