【ある雨の日の昼下がり】
ここは、神社横の公民館を利用したフリースクール。
霊力の強さゆえに問題のある子供たちが、勉強と玉の磨き方を教わっている。
「うわぁ、降ってきた!午後は自習だね。」
龍姫が外を見ながら言った。
普段は、午前中は勉強で、午後は外の公園で玉を磨く練習をするのだが、雨の日は午後も自習に切り替わる。
「読みたい本があったから、ちょうどよかった。」
神子が、鞄の中から、分厚い本を取り出した。
「え、それ、辞書?」
あまりの分厚さに龍姫が思わず言った。
「小説だよ。面白いよ。」
「なるほど、それを読むなら、時間はたくさんほしいよね。」
愛子が話しかけると、神子は照れ臭そうにふふふと笑った。
「私は困るなぁ。卒業まで一年もないのに・・・・・・。」
龍姫はこちらでのお役目が見つからないと、龍神の嫁にされてしまう。
それは、この世ならざるものになる、つまりはこの世界での死を意味する。
「焦ってもしょうがないですよ。焦ったからと言って結果がついてくるわけじゃありませんから。」
唐突に3人のそばに田中先生が立っていた。
3人ともびくっとして目を見開いた。
「田中先生!気配消してそばに来るのやめてください!心臓止まるかと思いました!」
龍姫が言うと、田中先生は、おかっぱ髪を手の甲でかきあげながら
「田中先生程度の気配も悟れないようではまだまだですね、龍姫さん。」
と誇らしげに言った。
龍姫は何も反論できずにぐぬうと席に着いた。
その頃、公民館の横の神社に客神の姿があった。
「あの子はどうだ?」
長く黒く美しいみどり髪を持ち、金色の瞳に縦長の瞳孔を持った、その男神は龍姫を妻にすると言った龍神であった。
「順調ですよ。彼女はもともと心根が美しく、飲み込みもいいので、立派に育ってくれるでしょう、ただ、やはりそろそろ、人間の社会に馴染ませないと、本当に嫁に取らないといけなくなりますよ。」
神社の神の言葉に、龍神はうーんと頭を抱えた。
「さすがにもう嫁はいらんのだ。」
「かわいそうな子を見るとすぐに妻にするって言って庇護下に置こうとするからこういうことになるんですよ。」
「わかっておる、だが、捨て置けというのか?あんなに御霊の美しい女性がみすみすほかの同族たちに潰されていくのを黙ってみていろと!?」
「その結果、どのくらいの妻を娶られましたか?」
「せんはちじゅう・・・・・・に・・・・・・。」
「1083番目にあの子がならないように尽力しますよ。」
神社の神はあきれながら、自分よりはるかに位の高いこの龍神を慰めた。




