猫の一念
ここは、神社横の公民館を利用したフリースクール。
人間の子供たちが午前中の授業を終えて、お昼休みを過ごしていた。
「あれ、今日、にゃーちゃん来てるね。」
龍姫が、お箸を口に運びながら、外を見て言った。
「あ、本当だ!今日、飼い主さんいないのかな?」
にゃーちゃんとは、公園の近所の飼い猫だ。
ここには、いろいろな動物が来る。猫も多いが、ほとんどが野良猫だ。
にゃーちゃんは、飼い主の居ない隙にこっそり抜け出して、参加している。
神様曰く、猫は非常に霊力が高いらしい。
しかし、霊力の高い動物は、玉が濁ると、呪を生み出しやすいらしい。
ただ、基本的に、家猫は愛情を受けて育つため、あまり呪は起きにくい。
なので、無理して参加する家猫は少ないが、にゃーちゃんは目標があって、機会があれば積極的に参加している。
「にゃーちゃん!!!」
キラキラした目で龍姫がにゃーちゃんに近寄ってきた。
うげ、といった顔でにゃーちゃんは顔をそむけた。
「んもう!なんなのよ、毎回、うるさい子供ね!」
にゃーちゃんは狐鉄の後ろに隠れた。
龍姫は大の猫好きなのだが、愛情がはげしすぎて、猫たちに避けられている。
「にゃーちゃん撫でさせてよ~」
「あたしはママとパパにしか撫でてほしくないのよ!」
「にゃーちゃんお願い!」
「いやよ!もう!追いかけてこないで!」
にゃーちゃんは人の言葉を話せるので、特に龍姫に気に入られている。
「そのくらいにしなさい」
暖かい風が吹いて、神様が現れた。
「はぁい」
神様は、にっこり笑うと、にゃーちゃんを抱き上げた。
「にゃーちゃんは特別授業するから、皆、自習しててね。」
そういうと、神様は、にゃーちゃんを連れてお社に消えていった。
「せんせ、ありがと」
にゃーちゃんは神様に目をぱちぱちと目くばせをした。
「にゃーちゃんは大人だから、大丈夫だとは思っているけど、龍姫はちょっと事情のある子だから、何かあるとにゃーちゃんが危ないからね」
「まあ、普段いろいろ我慢してるんでしょ、あの子、でも、私は相手しきれないわ」
「ごめんね、にゃーちゃん」
「別にいいわ、玉を磨く訓練ができるなら、少しくらいは」
「今の霊力でも猫又くらいにはなれそうだけど、それじゃダメなんだね?」
「ママが、いざというときに助けてあげられるくらいの霊力が欲しいの!さ、訓練しましょう!」
「そうだね」
二人は、真剣に訓練を始めた。
にゃーちゃんの飼い主が返ってくるまで、めいっぱい訓練をしなくては!




