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神社の学校  作者: 碧蜜柑
2/7

進路希望

ここは、神社横にある公民館の一室。


不登校の生徒児童に勉強を教えるフリースクール・・・ということになっている。


実際には、人間社会で必要以上に霊力(れいりょく)を持ってしまい、幼いうちに問題を抱えた児童生徒を保護し、勉強と霊力の使い方、(たま)の磨き方を教えている。


霊力とは、そもそもどんな生き物でも持っているが、人間社会では、あまりに大きな力を持ちすぎると、不都合が生じやすい。


玉とは、御霊(みたま)ともよばれる、その人の本質である。磨くことで光り、力の安定や増大、縮小にも役に立つ。何事も、玉を磨かねば始まらない。


フリースクールでは、午前中は、人間の勉強を教え、午後は、狐鉄(こてつ)や、他の霊力の強い動物と一緒に玉を磨く練習と霊力の使い方を学ぶ。


勉強とはいえ、ほとんどが自習だ。わからない部分を田中先生が解説して教える。一斉に授業をしてもいいのだが、各々年齢が違うので、なかなか難しい。


一番年上は、龍姫(たつき)、現在12歳。学年で言うと6年生だ。幼い頃に、龍神(りゅうじん)の嫁に選ばれた存在だ。


二番目は、神子(かみこ)、現在10歳。学年で言うと4年生だ。力の強さ故に、某宗教団体で教祖扱いされて監禁されていたのを助け出された。今は、田中先生と同居している。


三番目は、愛子(あいこ)、まもなく10歳。学年で言うと4年生だ。非常に()かれやすい体質で、問題が起きやすいので、こちらに登校している。


ちなみに田中先生は年齢不詳だ。聞いても、笑顔の圧で教えてくれない。見た目は20代前半と言ったところだが、もともと勤めていた学校で卒業生を何人も送ったらしく、たまに訪ねてくるが、どう見ても田中先生より年上にしか見えない。



ある日の午前中の出来事。


「うーん・・・。」


龍姫がうんうんうなっていた。


「どうしたの龍姫ちゃん。」


愛子が心配そうに声をかけた。


「いや・・・本校から、進路希望調査の紙が来たんだけど・・・。」


あー、と愛子と神子が相槌を打つ。


ここは、近くの小中学校と提携(ていけい)のフリースクールなのだが、学校も複数あるため、一応希望調査をするらしい。


三人とも、不登校、という扱いになっているため、なるべく学校に来てほしい、と言うのが、向こうの言い分らしい。


龍姫の場合、来年卒業になるので、中学校からは登校してほしいという旨が、一応、籍を置いている学校から伝えられている。


「行ってもいいんだけど・・・。」


「やめてください。」


田中先生が困った顔で言った。少々青ざめている気もする。


「ですよねー・・・。」


龍姫は、苦笑いしながら、頭を掻いている。


もともと、龍姫は人も好きだし、社交的だし、何より姉御肌で面倒見もいいので、人に好かれるタイプだ。


そういう気質の者は、生まれつき、玉が光っていることが多い。それをさらに、光り輝かせていくので、とても魅力的な人間が出来上がっていく。


ただ、光、というものは、闇をも生む。


玉を光らせられない嫉妬心を光るものにぶつけやすいのだ。そうなると、陰湿(いんしつ)ないじめなどにもつながる。


しかも、龍姫は龍神の嫁に選ばれた娘だ。そんな娘をいじめるということは、龍神の怒りを買うことでもある。


龍姫をいじめから守るため、周囲の人間を龍神から守るためにも、成人するまではできるだけここにいたほうがいい、との考えで、ここに通っている。


「でもなぁ・・・。田中先生、私は長生きしたいんですよ、できるだけ。」


「それは、田中先生も同じ気持ちです。」


「役目が見つからなかったら、はやく常世に連れていかれるじゃないですか。それは困るので。」


「田中先生が全力でサポートします。」


田中先生は、ニコッと微笑むと、龍姫に小さくガッツポーズを見せた。


龍姫は少し照れたような表情で笑って、何事もなければ通うはずの中学校の名前をプリントに書き込んだ。


愛子と神子は、真剣なまなざしでそれを見ていた。


あと二年もすれば、自分たちも書かなくてはいけないその紙を不思議な気持ちでただ見ていた。


つづく



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