心残り
小さい頃じいちゃん子だった俺は毎日のようにじいちゃん家に遊びに行ってたんだ。
でもある程度の年齢になってくると、何もないじいちゃん家でおしゃべりするよりも、友達とサッカーしたり家でゲームするようになってさ。
じいちゃんは寂しがってよく電話で遊びに来るように誘ってくれてたんだけど、月に一回、半年に一回って感じで行く頻度は下がっていった。
それから何年か経ったある日、朝早くにじいちゃんから電話来てさ。
昔よくじいちゃんと行ってた和菓子屋のカステラが食べたいって言うんだよ。
もう歳だから買いに行けないし、久々に俺にも会いたいって言ってくれてさ。
ちょうど夏休みも始まったから時間は有り余ってたから、じゃあ後でじいちゃん家行くわって言って電話を切ったんだよね。
何となく気乗りしないのと、まだ朝も早かったから午後までゴロゴロして夕方ぐらいに着けばいいかって思いながらもう一眠りした。
そしたら昼頃母さんに叩き起こされてびっくり。
じいちゃんが死んだって言うんだよ。
朝電話した時は元気そうだったのに。
母さんは後からすぐ来なさいって言って走って出て行ったから電話のことは言えなかった。
とにかく俺も準備を済ませて病院に向かったよ。
悲しさより、信じられない気持ちの方が大きかったな。この後久しぶりに会うつもりで居たってのに。
病院に着いて受付で案内されたのが病室じゃなくて霊安室だった時に、本当に死んじゃったんだなって実感して悲しくなった。
合流した母さんから話を聞いたんだけど、じいちゃんが昼過ぎになっても起きてこないからばあちゃんが見に行ったらその時にはもう息してなかったって。
死因は老衰。
寝てる間にそのままってことだから、最期は苦しまずに逝けたらしいんだけど、俺には何だかちょっと怒ってるような怖い顔をしているように思えた。
その後タクシーで母ちゃんと家に帰ってる時に気付いたんだけど、前日に寝てからそのまま死んだのなら、朝俺が受けた電話は何だったのか?って。
母ちゃんには朝早かったし寝ぼけてたんじゃないのかって言われて、俺もそう思うことにしたんだけど、家に帰って電話確認したらちゃんと朝に通話した履歴があったんだよね。
最初こそ2人してちょっと冷や汗かいたけど、じいちゃんが最後に俺の声聞きたくて連絡してくれたのかなって思ったら少し泣けた。
次の日、じいちゃんの食べたがってたカステラをお供物にしようと思って和菓子屋に行った。
そしたら、和菓子屋が無くなっててさ。
前日隣のビルの飲食店がガス漏れして爆破事故が起きたらしいんだよね。
ちょうどお昼時だったこともあって、お客さんが多かったから死者も何人か出たとか。
和菓子屋のご主人もかなりの重体だって聞いてぞっとしたよ……。
俺が昨日電話受けてから二度寝してなかったら、この事故に巻き込まれてたかもしれないって。
あの世からの電話とじいちゃんの怒ったような顔。もしかしたらじいちゃんは俺が全然遊びに行かなくなったことにすごい怒りを覚えてたのかもしれない。
だから最後に道連れにしようと思ったのだろうか……。