会話(1人)
三題噺もどき―にひゃくななじゅうきゅう。
はたと。
突然、スマホの画面を開く。
表示された時間を確認し。
あぁまたかと、1人落胆する。
「……」
外では雨が降っているようだ。
窓を叩く音が、心なしか強くなっているような気がする。
それに混じって、時折強い風の音がする。
そういえば、台風が発生したのだったか。もう、そんな時期か…とぼんやりと思ったことを覚えている。
「……」
ということは、今日は太陽はお休みだろうか。
きっと分厚い雲に覆われて、その姿を見せてすらいないだろう。
一面に広がる灰色の空。
ときおり、隙間からその姿をのぞかせるぐらいはするかもしれないが……気づくほどでもなさそうだなぁ。
「……」
あー、それでも日中は「朝だ」「昼だ」と分かるぐらいには明るいから、太陽は仕事中か。雲が一面覆っていようとも。その光は弱くとも。届いてはいる。
おかげで、部屋の電気をつけなくても、それなりに困りはしない。
「……」
そこにいるだけで―っていうやつだ。
まぁ、夏場はほとんど攻撃をされているような気分ではあるが、ないのはないで困るし。
というか、いないと困る。
太陽ありきの生活―とまではいわずとも。
まさに、そこにいてくれるだけでいい。というやつ。
「……」
それに比べて、夜を照らす月はどうだろうか。
ん……あまりこう、言い方がよくないかもしれないが。
月だって、太陽ありきだよなぁ。
「……」
あまり、詳しいことは知らないが。
夜空に浮かぶ、あの美しい月は、太陽の光によって、輝いているらしい。
暗闇に、ぽっかりと浮かぶその光は、とても美しく、見るものを魅了するが。
その姿は、太陽がなければ、見ることは出来ないし、見られることもなかったのかもしれない……同じこと言っている?
「……」
日中は、自ら輝く太陽が主役。
月は隠れて、姿も見えない。
夜になれば、主役の光を借りて輝く。
主役は下がり、その影に隠れていたモブが現れて、さも自分が主役だと言うように威張って。……ん?なんだかよく分からないな。
……まぁ、ようは。あれだ。他人の威光を借りて、えらそうにしているやつみたいなことだ。
「……」
よくできた社長と、それに媚びへつらう課長みたいな。
社長がいる間は、静かにしているくせに、いなくなれば、社長の後ろ盾をちらつかせながらえらそうにしている。
たいして仕事も出来ないくせに、偉そうにしているだけのやつ。
「……」
月とそいつが一緒というわけじゃないが。……月とすっぽんもいいところだ。
ただまぁ、仕事も出来ないくせに、偉そうにしているやつに。怯えていた下のやつらは、一体何だったんだろうな。と、今じゃ思ってしまうわけだ。
は?話が繋がらないって?知るかそんなもの。私の中では十分つながる。
「……」
自分で出来ない分の仕事を、下に押しつけて。
過労死寸前にまで追い詰めたくせに、何もお咎めなしとかいう、訳の分からに結末になった原因が。
アイツが、社長のお気に入りだからとかなんだとか、そういう原因だったらしく。―ホントよくできた社長だよな。
社長の名を出すアイツに、怯えて脅されて、許容していたのは確かだし。
真ぁ、限界を超えて倒れたおかげで、こうしてやめられたのは。不幸中の幸いだったな。
「……」
何だったか……。
まぁ、そのおかげで、まだ後遺症というか……色々と残ってしまって。
仕事に、社会に、戻りきれていない、現状があるにはあるが。
「……」
はぁ……太陽と月の話からだいぶ飛んだな。
思考のぶっ飛び加減は、昔から変わりはしないが。
まぁ、でも誰かに話すわけでもなし。
1人でこうして。ぼぅっとしながら、考えに浸っているだけだし。
「……」
案外楽しいし、楽になるもんだな。
1人会議という程でなくとも、勝手に思考を会話としていくのは。
単に、つらつらと考えていることを話して、それに突っ込んでいたりするだけだが。
「……」
あぁ、まだ無駄な時間を過ごしたな。
つい数分前に、時間を確認して、落胆したくせに。
今日こそはと思って、動こうと思っていたが……。
そううまくいかないらしい。
そのせいで、1人会議をしていたのだが。
……どのせいだ
「……」
あーもう……。
ケータイでもいじって、時間を無駄にするよりはマシかもしれないが。
このままぼぅっと、体を動かさずにいる方がよくないと言われたじゃないか。
とりあえず、起きて、何か腹に入れるだけでもしよう。
「……」
「……」
「……」
「……」
あ―――――。
めんどくさいなぁ……。
お題:風・月・太陽