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魔王討伐の本当の結末は多分もうちょっと先

本日2話目の更新です!前話をお読みになってお読みください~!

これにて完結!


そして、おかげさまで本作の書籍化・コミカライズが決定しました~!!

本当にありがとうございます(;_;)❤

中編から長編にたっぷり加筆して何倍もおもしろくしてお届けする予定なので、

ぜひ楽しみに続報をお待ちいただければ嬉しいです。

よろしくお願いいたします(*^▽^*)!



「ラ、ラ、ラフェオン様っ!?」

「…………っ!」


 バッと風切る音が聞こえそうなほど勢いよく私から距離をとるラフェオン様。

 その耳の先が赤く染まっているのを私は見逃さなかった。

 照れ。そこに見える感情はまちがいなく照れ。


 こ、これは……そういうことよね?そういうことでいいのよね??


 ふわふわ心が浮き立ち、足元が軽くなっていくような気分。


「ラフェオン様本当に心からお慕いしてます好き!」

「やめろ、近寄るな!」


 感激に身を任せて突撃しようとしたら顔面を掴まれて止められてしまった。さっきはハグしても何も言わなかったのに!これって絶対照れ隠し!


「やっぱり、これは間違いない!ラフェオン様は私を──」

「やめろっ、やめてくれ」

「私を、20%くらいは好意的に思ってくれているんですね!?」

「…………は?」


 口をあんぐりと開けた怪訝な顔に照れの色が見えない。

 あ、あれ。やっぱり勘違いだったのかしら。いやそんなまさか。


 どう受け取るべきかはかりかねていると、ラフェオン様は頭を抱えてしまった。


「…………もうそれでいい」


 やっぱり20%は言い過ぎだったかも。せいぜい18%くらいだったのかもしれない。



 ◆◇◆◇



 ラフェオン様にへばりついてうきうきで魔王城に戻ると、なぜかみんなに泣きつかれてしまった。

 とくに面倒くさかったのがイルキズ。鼻水つけないでよ!

 ロッドまで涙をハンカチで拭きながら感激していたし。何度も激しくうんうんと頷いていてちょっと怖かったわ。

 ノンナやキャスやデイミアンも相変わらず。


 いや、なんで?

 まさかこの子達、私が出ていったとか勘違いしたわけじゃないわよね?


 いやいやまさかまさか。私がラフェオン様の元から離れるなんてありえないんだから、さすがにそんな勘違いするわけないわよね。


「ラフェオン様!あなた好みにしてみましたどうですか好き!」

「……なにが俺の好みだって?」


 私に一番似合うのは清楚可憐な衣装である。聖女だし、聖女っぽいものがすごく似合う。

 しかし、


『ラフェオン様はあんたみたいな色気も艶もない生き物には興味などないのよ?私のような妖艶で女の魅力に溢れたタイプがお好きなんだもの。何度腰を引き寄せられ、素敵だと囁かれたことか』


 うっとりと、いつかあった体験を思い出すようにしてそう語っていた魔族令嬢。

 なので、参考にしてみました!今の私はいつもより少し露出多めで、体にピタッと沿うタイプの色っぽいドレスです。裾には少し深めのスリット。色も深い赤で、髪の毛もそれにあわせてノンナが結い上げてくれた。どこからどう見ても妖艶な美女に違いない。


 魔族令嬢の言うことなど最初は全然信じていなかったのだけれど、ラフェオン様の言葉で彼女の話が嘘ではないのかもしれないと思ってしまった。


 もちろん、魔族令嬢など私にとって取るに足らない存在であり、いつでも排除できる小物でしかない。ラフェオン様がいかに魔族令嬢に夢中だったとして、いつか私に振り向かせるのだから問題はないと言えるし。


 しかし、すぐに退場させなかったのは、その口から語られる話が嘘ではないのなら、私にとって有益だと思ったからに他ならない。


 ──そう。ちょうど、一歩進んだアピールをしたいと考えていたところだったので。


 堅物では有能ではいられない。有能な者はどんな可能性も取りこぼしはしないし、あらゆる情報や知識を柔軟に取り込んでいくことができる。


 私はこれまで自分自身と、自分の考えに絶対の自信を持っていた。

 私の力は強大で、心も体も何かに脅かされたことは一度もない。暇つぶしにわざと失敗してみることはあっても、本気で信じた選択で間違えたことはない。


 だからこの恋心も、自分を信じて突き進めばいつか叶うのだと信じて疑わなかった。


 だけど、そうではないかもしれないと気付いてしまった。

 自分の考えだけでは叶わないかもしれない。

 それならば、考え方を変え、自分の知らない考えを知ることも必要ではないかしら?

 だから私は、到底好きになれそうにない魔族令嬢の意見も取り入れてみることにしたのである。


 ラフェオン様も、口ではあまり気に入っていないのかと思うような反応をみせつつ、私は気が付いていますよ。その耳がまたもや赤く染まっていること。

 それなのに眉を顰め、どこか苦々しい表情を浮かべている。


 これは間違いないわ!結果は上々!ふははは、やっぱり私は最高だわ!

 魔族令嬢も役に立つじゃない。未来の妃(予定)への無礼も水に流して差し上げましょう。


「そういえばあの魔族令嬢、最近見ないわね?」

「もう見ることはないと思います」


 こっそりロッドに聞いたけど、そんな答えが返って来た。

 どうしてかしらとは思ったけど、別に興味ないのでまあいいか。どうでもよすぎて、いてもいなくても何も変わらないし。


 ちなみに、ラフェオン様へのプレゼントは魔界の北の奥地に住む古代竜のお肉だったんだけど、これがまた頬がとろけるほどおいしかった。

 最初は動揺していたラフェオン様だったけど、私がお肉を切り分けてその口につっこむと目を見開いて頬を染めていたので、ばっちりお気に召してくれたみたいでよかったわ。


 魔族令嬢の情報……本当に有益だわ……私、有能な者は好きよ。どうにかして手懐ければ側に置いてあげてもいいかもしれないわね。


 もちろん、その時はラフェオン様に対して下心など二度と抱かないようにしっかりしつけをする必要があるけれど。


 そういえば、ラフェオン様は結局どうしてぼろぼろになりながら結界を破ろうとしてたんだろう?


(まあいっか)


 そんなことより、この先ラフェオン様にどうアピールしていくかの新たな一手を考える方が大事だもの!


 遠くの方でフォードが(こっちのことも多少は気にしてくださいよ……!!!)と絶叫している姿が見えた気がしたけれど、そちらはまあなんかうまくやるだろう。これは丸投げではなく信頼なので。


 ……こうして顔を合わせることができるだけで嬉しくて、好きだと伝えられるだけでも気分が高揚する。

 恋とは、人を好きになるとはなんて素敵なことだろう。


 本当に、これがなかった今までの人生はつまらなかった。


 愛する人に出会えるということは奇跡のようなものだと思う。

 その幸運を噛みしめながら。


 とりあえず、毎日今日も好きだとお伝えすることは欠かせない。


「ラフェオン様、本当に大好きです!絶対に絶対に、私のことを好きにさせてみせます!」


 歴代最強の聖女である私は本当に有能なので、他人の感情や気持ちを読むことに長けている。


 それなのに、眩しいほどに彩られた世界に夢中で、うっかりしていた私は、ラフェオン様の気持ちに全然気が付いていなかった。

 ラフェオン様はいつものように、なんとも言えない苦々しい表情でこちらを睨みつけている。


(──……もう好きって言いづれぇ~~~~~~~!)




FIN


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