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魔王討伐の結末……?

もろもろの息抜きに軽く読める中編ラブコメ書きます……!

楽しんでもらえますように~!

 

「どうか、私のことは忘れて……みなさんは私の分まで生きてください……!」


 大聖女と呼ばれる少女の悲痛な叫びがあたりに響いた。

 いつも艶やかだった白銀の髪は乱れ、その宝石のような青い瞳には今にもこぼれ落ちそうなほど涙をためている。

 場所は魔王城、玉座に悠然と座る禍々しき魔王の眼前で、聖女の仲間たちはいまや満身創痍のボロボロで、倒れ伏したまま起き上がることも出来ずに震えた。


 共に魔王討伐に赴いたかけがえのない仲間。しかし討伐は失敗し、魔王は傷ひとつついていないどころか、椅子から立ち上がることさえなく彼らを一瞬で蹂躙した。

 ここまでがうまく行き過ぎていたのだ。魔王は人間が考えていたよりもはるかに強く、強大で、恐ろしい存在だった。

 あとはもう全滅するだけ……。絶望が広がっていく。


 しかし、聖女セシリアだけは諦めなかった。

 これまで仲間たちの戦いを幾度も助けてきた防御魔法も魔王の力の前では意味をなさず、回復魔法を使ってもすぐに同じように攻撃を受けて終わりだろう。それに、もう何度も聖魔法を使う程に魔力も残っていないはずだ。ならばどうするか。

 聖女は覚悟を決めて体に残った聖魔力を集めていく。そして叫んだのだった。


 仲間たちは悟った。聖女は自らの命と引き換えに、自分たちを助けようとしている――。


「だめだ……!セシリア、君を見捨てることなどできるわけがないだろう!」


 勇者として仲間を率いてきたナイジェルは国の第一王子であり聖女セシリアを愛していた。魔王討伐が終わり、無事国に戻ったあかつきには彼女に求婚する腹積りであった。

 愛する人がその身を犠牲にすることなど許せるわけがない。


「ナイジェル殿下のおっしゃるとおりですセシリア様!あなたを犠牲にするなどもってのほかです!」


 魔法使いヘスは聖女セシリアを慕い、彼女を守り支えたいと思ってきた。自身が仕えるナイジェルの手前一歩身を引いてはいたものの、彼もまたセシリアを愛していた。

 自分が無力なばかりに、大事なセシリアが全てを背負おうとしている絶望に溢れる涙を止めることができない。


「セ、セシリア様……」


 か細く、震える声が落ちる。誰よりも長く聖女の側にいた、彼女の護衛でもある聖騎士フォードはあまりのことに言葉を続けられない。


 セシリアは力無く首を振る。


「お願い、わかって……私は愛するあなたたちをこれ以上傷つけたくない」

「セシリア……」

「最後に力を振り絞って、あなたたちを転移させると共に結界をはります。次の聖女が現れるまで、人間たちの大陸は魔族の脅威には晒されないでしょう」


 セシリアは微笑む。聖女の微笑みと言われた美しく慈愛に満ちた微笑みだった。

 ついに頬を伝った涙が眩いほどの光を放ちはじめる。


「どうかあなたたちは幸せになって……」


 次の瞬間、聖女以外の3人が目を開けると、そこは自国・レクセル王国の城内だった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 回復魔法士をかき集め治癒を受けたあと、国王に全てを報告したナイジェルとヘスの心はすでにセシリア奪還へと向いていた。


「セシリアは死んでいない!セシリアには言っていなかったが、彼女に何かあれば彼女の魔力をうつしたこの魔法石が輝きを失うんだ!」


 ナイジェルはそう言い、キラキラと光り輝く魔法石をかかげてみせる。


「そうです!セシリア様は歴代で最も力のある聖女様だ!それに魔族にとっても聖女の力は役に立つ。きっとそう簡単には殺されないはずです!」


 ヘスの言う通り、魔族にとっても聖女の力は魅力的なものだった。


「ねえ、フォード殿!セシリア様と誰よりも長く共にいたあなたもそう思うでしょう!?」


「…………はい」


 興奮しているナイジェルとヘスはフォードの返事の歯切れの悪さには気づかなかった。





 セシリアが小さな頃から彼女のそばにいたフォードはただ1人セシリアの本性を知っていた。

 そんな彼だから気づいたことがある。


(何が起こったかわからないくらい一瞬で俺たちをボロッボロにしたあの強力な攻撃魔法、どう考えても魔王じゃなくてセシリア様の魔法だったんだよな〜〜〜〜!むしろ魔王も呆然としてたし!もう!なにこれどういうことなの!?)


 唯一本性を知るものとしてセシリアに散々振り回されてきたフォードは、あまりの意味不明さに内心頭を抱えた。

 ただひとつはっきりしているのは、セシリアは犠牲になったのでもなんでもなく、自ら望んで、なんなら嬉々として魔王城に残ったということ。


「もうほんと、勘弁してくれよ〜〜!」


 苦労人フォードはまだまだ待ち受けていそうな面倒を思い、頭を抱えずにはいられないのだった……。


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