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覚醒
『わたしはもう大丈夫。大丈夫だから』
遠くの方で幸の声が聞こえた。
バカだなーー。
暗闇の底から浮かび上がりながら、俺は思考している。
そんな泣いた声でどこが大丈夫なんだ。
俺がいないところで泣くなよ。俺が笑わせてやるから。一生幸せにするから。
天井の蛍光灯の白い明かりが目の奥に差しこんで、実像を結んでいく。
長い間眠っていたような気分だった。実際眠っていたのだろう。頭を動かすとひどい頭痛を覚えた。
幸を探しかけた時、するすると記憶の糸がほどけるように、自分が幸に何をしたかを思い出した。
幸を十二年もの間待たせたこと。痛がる幸に乱暴したこと。幸を忘れて傷つけたこと。そして、幸に別れを告げたことを。
「うわあああああああああああ!!」
全てを思い出した俺は、病室のベッドの上で絶叫した。