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第十八話 警戒

 薫の心配を他所に、『トレインズ勝利!』というメールが午後9時前に入り、午後11時を過ぎた頃には、新士が白いセダンに乗って戻ってきた。

 「二人の死体を船に乗せてきました。これでトカゲの手足はなくなりました。」と新士は薫に言った。

 薫はあまりのあっけなさに口をポカンと開けたまま新士を見ていた。


 新士は、「薫さんの調査の結果はどうでしたか?」と薫に聞いた。

 そう言われて薫は我に返って、「・・・ああ、一宮大輔に関する追加調査に関しては、新士さんの予想通りでした。」と答えた。

 「やっぱり、そうでしたか。ありがとうございました。じゃあ、僕は次の準備がありますんで。」と言って、新士は薫の出してくれたコーヒーを持ってガレージへ消えていった。


 薫はコーヒーを持ったままその場に立ち尽くし、煙というパニッシャーの実力を甘く見ていたと痛感した。


 本当にここから1週間で、トカゲを潰せるのかも知れない・・・。

 薫は手に持ったコーヒーの揺れる液面を見ながら、「お父さん、お母さん、真琴・・・。」と呟いた。


 ☆☆☆


 一宮の運転する高級車は、ホテルの地下駐車場へ入った。

 車の後部座席に身を隠していた新士は、車が停車すると「ここか?」と聞いた。

 一宮は「部屋番号は2513です。」と答えた。

 

 一宮の話では、セッケイは住み家を固定せず、ホテルを数か月単位で移り住んでいるという。

 新士がどうやってこのホテルを特定したのかと聞くと、一宮は「短期勝負なので、死ぬ覚悟で調査してました。」と答えた。

 

 ジンジとチョウタツを始末した日、一宮が新士に説明した次の計画はこうだった。

 一宮が煙を連れてセッケイの部屋を尋ねる。

 煙は一宮が身を守るために雇ったボディーガードということにする。

 警戒心の強いセッケイはおそらく銃を突きつけてくるだろうが、一宮が説得するまで抵抗しないで欲しいという。

 一宮の説得で落ち着いて、セッケイが警戒を解いた一瞬の隙をついて始末する。


 「警戒心の強い男が部屋に他人を入れるのか?」と新士は聞いた。

 「ドア越しに、今回の仕事でジンジとチョウタツが殺されたと伝えます。その黒幕はカンリで、自分もセッケイも近いうちに消されるので協力しようと持ち掛けます。」と一宮は答えた。

 「そんな面倒をしなくても、部屋が分かっていれば何とでもなるが。」と新士は言ったが、「これは、私が説得するまで抵抗しないで欲しいと言った内容とも被りますが、セッケイは間違いなく部屋に爆弾を仕掛けています。起爆スイッチを持っているのか、ドアか何かに仕掛けをしているのかは分かりませんので。」と一宮は懇願するような顔で言った。


 新士はしばらく一宮の顔を見て、「分かった。」と答えてから一宮にボールペンのようなものを渡した。

 「これは何ですか?」と一宮は言った。

 「吹き矢だ。針に猛毒が仕込んである。刺されば1分以内に死ぬ。計画が失敗したときは自殺に使え。痛めつけられるよりは楽に死ねる。」と新士は言った。

 「・・・ありがとうございます。」と、一宮は新士の気遣いに感謝した。


 「ないと思うが、誰かに使うときは気を付けろ。死体から出る唾液や血液には毒が混じる。自分の体に付着するとただでは済まない。」と新士が付け加えると、一宮は恐怖でゴクリと生唾を飲み込んだ。


 ☆☆☆


 一宮が2513号室のチャイムを鳴らすと、室内の音が消え、空気がピンと張り詰めたような気配がした。

 一宮はドアスコープに、自分の顔と『ジンジとチョウタツが殺された。自分達も危ない・・・』という計画通りの内容を書いたメモを向けた。


 しばらくして、「横の男は誰だ!?」と部屋の中から声がした。

 一宮が自分が雇ったボディーガードだとメモに書いてドアスコープに向けると、「両手を上げて一回転しろ!」と声がした。

 一宮と新士は、順番に両手を上げてドアの前でゆっくり一回転した。


 やがてドアチェーン越しにドアが少し開き、「これでボディーガードの手足を縛れ」と言って、一宮にロープが渡された。

 一宮が新士の両手と両足を縛ると、セッケイは一度ドアを締め、チェーンを外して二人を部屋の中へ入れた。

 セッケイは中肉中背のどこにでもいそうな特徴のない男だったが、目だけがギョロギョロと動き回り、警戒心の強さを物語っていた。

 セッケイは3mほど離れてこちらに銃を向けている。

 一宮の言った通りだった。

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