序章〜5歳児〜2
雲ひとつない晴天の中、私とお母様を乗せた馬車はゆったりと道を進んでいます。
ちなみにお茶会の会場を聞いても私には秘密の一点張りで教えてくれませんでした。
お母様のご友人は皆信頼出来る方達なので、心配はしていませんが、それでもまさかの5歳児を伴っての出席とはこれ如何に。
と、そう思考の海に沈んでいると何やら外が騒がしくなってきました。
私は馬車の窓から外を見ると、なんとそこは王都門でした。
そこで私の思考で導き出された答えはあるが、出来れば当たって欲しくない。
きっとご友人の誰かなのだろうとこの予測を振り払おうと首を左右に振ると、お母様が不思議そうな顔をしていました。
「ステラちゃん、どうかした?」
「なんでもないです、おかあさま」
私は窓から身を放すとお母様のお膝に乗せられ、頭をなでなでされました。
このなでなでは反則です。
いくら中身の年齢を足して二十歳過ぎとはいえ、逆らえないのです。
と、そんな事をしていたら、何やら立派な建物が見えてきました。
そうそれは王都で最大の建物である、王城。
私の前世の記憶では、とにかくフラグの塊で面倒臭いことこの上無いスポット。
あー、ゲームとかだったらそこで王子様と運命の出会いとか感じちゃうのでしょうね。
私はとても面倒臭いので御免蒙りたいですが。
とか何とか思っているうちに城門を抜け、全身がっちり固めた騎士様が丁寧にエスコートをしてくれました。
「ステラちゃん、皆様方への挨拶が終わるまで大人しくしててね?」
「はい。」
お母様はそう言うと私の頭を一撫でし、そのまま手を繋いでくれました。
それがとてもくすぐったくて、私は気持ちお母様に寄り掛かりながら長い廊下を歩きました。
お母様が会場に入ると色んな人がお母様に群がってきました。
やれ美しいやらやれ気高いやらとお母様を持ち上げています。
お母様は人妻ですので貴方達の望みは砕け散るのです。
さて、そんなお母様への挨拶攻撃が落ち着いてきたので、私は所謂キッズスペースにいます。
上は10歳下は4歳と様々なちびっ子が集まって甘いお菓子やジュースを片手に遊んでいます。
私ですか?精神年齢二十歳越えの私は壁の花と化してアップルジュースを飲んでいますよ。
ワーキャーとはしゃぐ子供達を眺めながら、私も記憶が無かったらああやってはしゃげたのだろうなぁと黄昏ていると、隣に人の気配を感じます。
「君はあそこに行かないの?」
そう問い掛けてきたのはおそらく8〜10歳くらいの少年でした。
まだ10未満の年齢でも、かなり顔立ちは整っており、将来は約束されている金髪イケメン少年は、既に礼服を着こなしています。
チートですか。
「わたくしは、こうやってみなさまのえがおがみれるだけでもうれしいのです。」
「そうなんだ。」
若干舌足らずな私の言葉を聞くと、少年はふっと笑い、私の横の椅子に腰掛けました。
「じゃあ、僕もここで眺めていようかな。」
「どうぞ、ごじゆうに」
ステラ「そういえば誰なんでしょうかこのイケメンさんは。」