序章〜5歳児〜
不定期更新かつ誤字脱字多いかもしれませんが、どうぞ目立ちたくない侯爵転生令嬢のあたふたをお楽しみください。
私、ステラ・アストラウトには前世の記憶がございます。
前世でまだ高校生だった私は縁石を超えてきた暴走トラックに跳ね飛ばされて、次に目が覚めたらまさかまさかの赤子。
とは言いつつも赤子の時の記憶は殆ど無く、5歳頃から記憶が鮮明に思い出してきた、という事です。
さて、この世界はなんと中世ヨーロッパの様な世界観で魔法が存在するらしい。
まさか、転生者である私にチート能力があるのではと思い、本を開いてみましたが、まったく文字が読めません。
現実は甘くは無いようです、当たり前ですよね。
ちなみに我がアストラウト家は侯爵の位らしい。
過去の戦争で、祖母が国王を救った功績で侯爵の位を賜ったと、お父様は仰っていました。
そのお父様は王宮で秘書官らしく、毎日王宮に足を運びクタクタになるまで働いて帰ってきます。
お母様は庭園のお花や薬草のお手入れが日課で、よくお父様に自作ハーブティーを容れていたりします。
さて、今世の私の容姿は腰まで伸びたちょっと金の混ざった様な茶色の髪。
特に特徴の無い顔立ちで、父親譲りの青い瞳。
お母様は癖のない綺麗なロングの金色の髪に赤い瞳でかなりの美人さん。
お父様は少し濃い金髪の青い瞳で、中々のイケメンさんです。
そんな美男美女夫婦から産まれたのはなんとも普通な私です。
遺伝子さんは仕事をしないようです。
ま、まあ、まだ5歳なので未来があると思いましょうそう致しましょう。
自室の机に向かって現実に打ち震えていると、ドアをノックする音が部屋に響きました。
「お嬢様、お茶を持って参りました。」
「ありがとうアンナ、そこに置いておいてください。」
部屋にカートと共に入って来たのは私の専属メイドのアンナ。
黒い髪で黒い瞳の彼女は私が3歳の時にこの屋敷に来たらしく、二年間ずっと私の傍に居てくれています。
歳は12とかなり若くもしっかりとしており、まるで姉の様な人物です。
慣れた手つきでティーセットを用意してくれました。
流石です。
「アンナの容れるお茶は絶品ですね。」
「ありがとうございますお嬢様。」
肩口までに綺麗に切り揃えられた髪を揺らし、アンナはにっこりと笑います。
私はその笑顔が好きでいつも褒めてしまいます。
そんな昼下がりの中、なんとお母様にお茶会の招待が届いたらしく、自室でお茶を飲んでいる私も出席すると言う展開に。
まだ5歳児である私には早すぎるお茶会デビューなので丁重にお断り申し上げたかったのですが、なんと母様は二つ返事でOKの二文字。
お母様?私まだ5歳でしてよ?
子供用ドレスと言えども、侯爵家相応の装いでないといけないだそうで、お針子さんが私の全身を隈無く採寸し、それはそれは物凄い速さで布を縫っていました。
そう、まるで締切ギリギリの作家さんの如く。
数日後、完成したドレスは一寸の狂いもなく、私の茶髪に合ったイエローに白いフリルがあしらわれたプリンセスドレス。
まだ5歳という事で動きを阻害しにくく、かつシワの残りにくい材質は、子供の体温にはひんやりとして着心地が良い。
そして翌日はお茶会当日、初めての不安と緊張であまりねむれませんでした。
ステラ「あれ……私だけではありませんよね……子供……。」