改めて自己紹介
俺とラピスさんはデニスさんに連れられ、裏口から入っていった。おそらく正面から入っていたら周りのプレイヤーからもみくちゃにされるかもしれないから、裏口があって助かった。ちらりとギルドの正面を見ると長い列が作られていた。受付の人があの人数を処理していると考えるとかわいそうだな。ギルド内を観察しながら歩いていると、部屋の前についた。
「ここでお前ら二人分の登録をしてやる」
「「お願いします」」
デニスさんがドアを開けて入っていき、続けて俺たちも入っていく。
「そこに机があるから座って少し待ってろ」
そういってデニスさんは部屋の隅にある棚で何かを探し始めた。待ってろって言われたけど暇だな、周りを見ても特に目立ったものもないし。そんなことを思っているとラピスさんが話しかけてきた。
「ただ待っているのもあれなのでお互いに自己紹介しませんか?」
「それもそうですね、よしそうしますか」
さっきのはあくまでデニスさんに対しての自己紹介だったわけだし、ちょうど時間もつぶれるだろう。
「じゃあ俺からやります。名前はキクラゲで、職業は狩人をしてます」
思ったよりも言えることないな。名前と職業だけでいいのかな?
「じゃあ次は私ですね。ラピスって言います。職業はテイマーをしていて、後料理をしてみたかったので『料理』スキルをとっています」
やりたいことも言っておいたほうが良かったかもしれないな。そう思いながら、視線を変えるとデニスさんが「あったあった」とつぶやいて、何かを手に持って戻ってきた。
「待たせたな。早速だが、この紙に名前と職業だけでいいから書いてくれ」
そう言って、1枚の紙とペンをそれぞれに手渡した。どうやらギルドの同意書のようだ。
「受付だと魔道具で認証するから時間がかからないんだが一つしかなくてな、少し時間がかかるが我慢してくれ」
「いえ、大丈夫です。こみ具合からしてもっと時間がかかっていたかもしれませんから」
「俺もそう思います。だから気にしないでください」
おそらく今出ていったとしても、まだ人の列は残っているだろう。
「そう言ってもらえると助かる」
デニスさんはそういってお礼を言った。失礼だけどこの人は第一印象と全然違うな、見た目はいかにも豪快そうな大男なのに。
「そうだ、簡単に概要と注意事項だけ伝えなきゃな。ギルドの役割は基本素材の買取と依頼の仲介だ。依頼をこなしていけばランクも上がるし、周囲からの評価や普通の人が入っていけないような場所にも許可が下りるからできるだけあげとくといいぞ。まぁ、通行証として使うために登録だけのやつも結構いるけどな」
ギルドの役割はよくある感じか。
「注意事項の方だがな、犯罪だけは厳重に取り締まっている。町としてもギルドとしても不都合しかないからな」
それもそうだ。ん?もしかして指名手配みたいなのもあるのか?
「質問ですけど、指名手配されることもあるんですか?」
「ああ、程度にもよるが指名手配されて懸賞金がかけられるな」
うわぁ、大勢の人に狙われることになるのか。これは気を付けなければいけないな。
「普通に暮らす分には犯罪行為はしないと思うが、念頭に置いておいてくれ。じゃあこれで、登録は終わりだ、ほら、お前らの冒険者カードだ。帰るときはまた裏口から帰って行ってくれ」
「「ありがとうございました」」
カードを受け取り登録を終えた俺たちはお礼を言ってからギルドをあとにした。
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ギルドを出てから少し離れた地点でラピスさんが話しかけてきた。
「まだギルドの前に人が並んでましたね」
「あそこでデニスさんが声をかけてくれた助かったな」
ギルドを出た後、表を見たらまだ長蛇の列ができていた。初日だから仕方がないことだけど
「ところで話が変わるんですけど、ラピスさんは料理をしたいって言ってましたよね」
「はい、そうですけどそれがどうしましたか?」
「提案なんですけど、俺採取メインでプレイしていく予定でよさそうな食材があれば提供しますか」
「えっ、いいんですか!」
そういってラピスさんは目を丸くする。
「はい、俺は食べることが好きなんですけど、料理関係はする気がなかったのでちょうどいいかなって思ったので、味見役ができた程度に考えてもらって結構です。ラピスさんが良ければフレンドになりませんか?」
「私でいいのならお願いします」
こうして、俺はNEO内で初めてのフレンドができたのだった。