第95話
列に並び始めると前に並んでいるプレイヤー達がちらちらと後ろを見てくる。僕と目線が合うと視線を逸らしゆっくり列から離れていく。頭を傾げていると早く行けと視線で合図を送ってくる。僕は思わず苦笑いしてしまった。なんかすいません……内心で土下座する。
「ファルトリアギルドへようこそ! 本日は……クランの立ち上げでよろしかったでしょうか?」
「あ、はい……お願いします。先程はすいませんでした」
「今後は無いようにお願いしますね? では、こちらの紙に記入をお願いします」
受付嬢は笑みを絶やさずに対応してくれた。
僕はちょっと古い紙――これって羊皮紙って言うんだっけ――を受け取り目を通す。
注意書きを読み進めていくと下の方にクラン名とクランに入るプレイヤーの署名する欄がある。
とりあえず僕と夏樹の名前を記入っと。後はクラン名だけど……そう言えば考えてなかったな。
僕は夏樹を見る。
「夏樹、クラン名なんだけど……なんか考えてたりする?」
「ん? あ~、一応考えているけど、その様子だと考えてなかったでしょ?」
「……そうだよ。それでいいのあるの?」
「えっとね――」
「……トワイライト」
夏樹が話そうとしたした時、ルキがボソッと溢す。
「トワイライト……お、良いの思いついた! 兄貴、兄貴! 《神々の黄昏》なんてどうかな?」
神々の黄昏……なんも考えてなかいから文句とか反対はしないけど、ちょっと厨二ポイと思ってしまう。
「微妙そうな顔してんな……」
夏樹はわざとらしく咳払いをする。
「俺達のラストネームはトワイライトじゃん?」
僕は頷く。
「で、兄貴はゴッドクラス召喚獣持ちでしょ? トワイライトは日本語で黄昏だから、二つ合わせて《神々の黄昏》なんだけど……もしくは《ラグナロク》。この二つのどっちかで決めて」
「……ちなみになんだけど、夏樹が考えたのってどんなの?」
どっちがいいのか決めれず夏樹が元々考えてたのを尋ねた。
「俺の? 俺のは《兄貴最強!》か《兄貴最高!》だぜ!」
ふざけているのか真面目なのか分からない返答に言葉を失った。
「それか――」
「ちょっとたんま、頭痛いからもういいよ……」
「え、そう? で、兄貴どれにすんの?」
そう言われたけど、夏樹の案は却下。てことは二択。どうすっかな……
「ルキはどっちがいいと思う?」
「《ラグナロク》!」
ルキに尋ねてみると直ぐに答えてくれた。僕はルキの頭を撫でる。
僕は羊皮紙のクラン名の欄に「ラグナロク」と記入した。
「ありがとなルキ」
「ん?」
頭を傾げて見上げるルキ。
書き終わった僕は羊皮紙を受付嬢に返す。
「ありがとうございます。……今の所お二人のクランなのですね。では、どちらがクランリーダーをなされますか?」
「それは兄貴の方で!」
僕が口を開く前に夏樹が言う。
「夏樹よりログイン少ないし、あんま詳しくないよ? 夏樹の方が良いと思うけど……」
「二人しかいないんだし兄貴で! なんかあったらサポートするから、兄貴頼むよ!」
顔の前で両手を合わせて夏樹は何故か必死で頼んでくる。
「仕方ないな……引き受けるよ」
「よっしゃ! 受付のお姉さん! そう言うことでお願いします!」
「畏まりました」
受付嬢はすらすらと羊皮紙に書き加えていく。
「以上で手続きは終わります。クラン立ち上げおめでとうございます」
「ありがとうございます」
受付嬢にお礼を言い僕達はカウンターから離れ、最後にお礼を言う為にアレイヤさんの姿を探すも見当たらずをギルドを後にして屋敷に帰宅。
「ウィル、あれ、いれてくれた?」
帰ってくるなりルキに尋ねられた。
「あれ?」
「たからもの!」
「あ、忘れてた……」
「もう!」
ルキは頬を膨らめせてプンプンと怒る。そんな姿も可愛いと思う僕だった。
「今から仕舞うよ」
インベントリからルキの預かっている物を取り出しクランチェストに仕舞う。
クランを立ち上げたことでクランチェストも問題なく使えた。
そして、少し余った時間をルキと遊び僕達はログアウトした。




