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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第94話

「よし、仕事終わり!」


 何事もなく仕事が終わり帰りの支度を始めるていると同僚が涙目でやってくる。


「猫目っ! 助けてくれ!」


「今日予定あるんだけど……」


「お願い頼む! マジで助けてくれ!」


 頭を下げてまで頼んでくる。僕は腕時計をみてから溜息を吐く。


「一時間だけだよ?」


 そう言うと顔上げて嬉しいそうな顔をして僕の手を掴み上下に動かす。


「ありがとう友よ!」


「そんなのいいから、さっさと終わらせるぞ」


「おう!」


 夏樹に遅れると連絡を入れて早速手伝う。

 そして、結局終わったのは二時間後だった。


「ただいま……」


 夕飯を外食で済まして帰宅。とぼとぼと階段を上がっていると夏樹の部屋の扉が開く。


「兄貴、おかえり! ……って疲れてる?」


 僕は頭を横に振る。


「喋るのも疲れてる感じ? また今度にする? 俺はいつでもいいけど」


「いや、平気だから先にログインしてて」


「分かった先行くよ」


 部屋に戻っていく夏樹を見届け僕も部屋に入り、ヘッドギアを装着してログイン。


「ウィル!」


 ログインするなりルキに飛びつかれ咄嗟に受け止めるが一緒に後ろに倒れた。


「いてて……ルキ怪我無い?」


「うん!」


 無邪気に笑うルキの頭を優しく撫でる。少しだけ仕事の疲れが取れた気がする。

 そうだ、召喚獣を召喚して癒されよう!

 そう思い順番に召喚していく。スザク、ビャッコ、ゲンブは召喚するなり小さい姿になって定位置へ。


「グラァ……」


「あ、ごめん……」


 セイリュウが他の召喚獣達よりも大きいかったのを忘れて部屋で召喚してしまって窮屈そうにしている。

 すぐさまセイリュウは小さくなって僕の左腕に巻き付く。


「みんな、かわいい!」


 僕の周りにいるの召喚獣達を順番に撫でていくルキ。

 小さい子と動物が戯れているのを見ているだけでも癒されるな。

 少しすると扉が開き夏樹が入ってくる。


「玄関で待ってても来ないと思ってたら……何してんの?」


「癒されてただけ、今行くよ」


 召喚獣達を一旦戻すことにした。すると、ルキは寂しい表情をする。


「あとで一緒に遊ぼうな?」


「うん……約束」


 ルキと小指を引掛けあい指切りをする。 

 僕達は屋敷を後にしてギルドに向かった。


「おい、子連れの召喚士が来たぞ!」


 ギルドの扉を開くと誰かがそう大声で叫ぶ。その瞬間ギルド内にいるプレイヤー達の視線が僕に向き、一斉に近づいてきた。


「俺達のクランに入らないか!?」


「なに言ってんのよ! 彼は私達の所に入るの!」


「いんや、俺達だ!」


 僕達の意見を聞かないで激しい言い合いが行われた。


「ウィル、怖い……」


 余りの迫力にルキは僕の袖を強く握り泣き出しそうになった。


「あの! 僕達は何処にも! 入る気は――」


「兄貴、まったく聞いててないよこの人達……」


 NPCのギルド職員も場を沈めるために動くはプレイヤー達は聞く耳を持たなかった。

 すると、パンっ!っと音が軽めの爆発音が鳴り響きようやく静まる。

 音がした方を見ると物凄い形相をしているアレイヤさんが仁王立ちしていた。


「お前達! いい加減にしないか!」


 アレイヤさんの怒声にプレイヤー達は萎縮してしまってる。

 僕達を見たアレイヤさんが歩き始めると萎縮しているプレイヤー達は道を開けた。


「お前達もちゃんと意見を言わないとダメではないか」


「あ、はい……すみませんアレイヤさん。ありがとうございます」


 僕は一歩前に出て腹の底から声を出す。


「誘って頂き有難いんですが、僕達はこれからクラン立ち上げるので何処にも入る気はないです。ごめんなさい」


 深々と頭を下げる。


「こ奴の言葉を聞いただろ! これを聞いてまだ勧誘する者がいるのなら」


 アレイヤさんがシャキっと腰にある青く光る剣を抜く。


「私が相手しよう……!」


 そうアレイヤさんが言うとプレイヤー達は一歩引く。


「おい、あれって氷上の白騎士じゃね?」


「え……氷上の白騎士ってリリース前に行われた非公式戦の大会で優勝したって言う……あの?」


「あ……ちょっと用事思い出したわ……」


「わ、私も用事が……」


 ギルド内がザワザワとしだすと一人、また一人と去っていく。

 ようやく静けさを取り戻したギルド内を見回したアレイヤさんは剣を納めた。


「アレイヤさん、本当にありがとうございました」


 僕が頭を下げると夏樹も続けて頭を下げる。ルキも僕達の真似をした。


「見てられなくてな」


「氷上の白騎士……」


 夏樹がボソッと言うとアレイヤさんは恥ずかしそうに頬を掻く。


「その名は忘れてくれ……それよりも、クラン立ち上げるんだろ? 受付で出来るから行ってくるといいぞ」


「はい!」


 僕達はアレイヤさんに再度頭を下げてから受付に向かった。


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