第93話
屋敷に帰った僕とルキは夏樹がログインするの待ったがいくら待っても来なかった。
「ルキ、そろそろ僕もログアウトするよ」
「うん……」
ルキはダンジョンで拾ってきたのを大事そうに持って下を向いている。
そんなルキをお姫様だっこしてベットまで運び横にして寝かせる。
「ウィル……これもってて」
「わかった……おやすみ、ルキ」
「うん……」
受け取った僕はインベントリにしまい、ルキが寝たのを見届けてから僕はログアウトした。
意識が体に戻った僕はヘッドギアを外し夏樹の部屋の前に行きノックをする。だが、返事はなかった。
「夏樹、入るよ?」
ドアを開けると部屋は真っ暗で誰もいなかった。
帰ってきてないのか。うーん、また今度にするかな。
そう思い部屋に戻り僕は眠りに就く。
翌日、目を覚ました僕は背中の方で体温を感じて頭を回して確認すると夏樹が僕に抱きつくように寝ていた。いつの間に僕のベットに……まぁそれよりも。
「酒臭っ!」
夏樹から漂う酒の匂いに鼻を摘み、腕を無理矢理剥がし離れた。
「夏樹ー起・き・ろー」
「むにゃむにゃ……」
体を揺すっても夏樹は起きる気配がない。どんだけ酒を飲んだんだよ……
起こすのを諦めた僕は部屋を出て、朝食を取り、支度を済ました僕は仕事に向かった。
そして特に問題なく仕事も終わり帰路に就く。
時間も大分経ってるし、夏樹も起きてるよな。うーん、一応二日酔いの薬を買っておくかな。
薬局に寄ってから家に帰宅した。
「おかえり亜樹。夏樹二日酔いみたいであなたの部屋で寝ているわよ?」
「そうなんだ……薬買っておいたから飲ませておくよ」
「頼むわ」
台所に行き飲み物を持って部屋に向かう。扉を開けると布団から唸り声がする。
「夏樹~大丈夫か~?」
「あ、兄貴……頭痛い……」
「薬買っておいたよ」
「サンキュー……兄貴……いてて」
薬を渡すと夏樹はゆっくり飲んで行く。
僕はベットの端に腰を下ろす。
「夏樹、酒はよく飲んでるのか? お前まだ飲める年齢じゃないだろうに……あんまプライベートのことは干渉したくないけど、そうだったら怒るよ?」
「ち、違う……! 違うから! 飲んだのはこれが初めてで、間違って友達の飲んで……それから……あれ、記憶がない……俺どうやって帰ったんだ……」
そう言われても知らんがな。
僕は思わずため息を吐いてしまう。
「友人に聞けば?」
「あ!」
夏樹はスマホを操り友人に連絡して確認している。僕はその間に部屋着に着替える。
「友達が送ってくれたって」
「そこから部屋間違えて今に至ると。次からは気を付けろよ?」
「うん。ご迷惑をお掛けしました」
「なんで、敬語なんだよ。母さんが飯作っているけど食べる?」
そう尋ねると夏樹の腹の虫が鳴く。
「……食う」
ゆっくり夏樹はベッドから起き上がり居間に向かう前に夏樹の部屋に行かせる。
「酒臭いから着替えてくること」
「うん……」
着替えてくるのを待って一緒に居間に向かい食事を始めた。
食事が終わった後、父親に説教されている夏樹を横目に部屋に戻る。
夏樹のせいで酒臭くなった部屋に消臭スプレーをバラまき、窓も開け空気を入れ替えた。
どうにか匂いが無くなって満足した僕は大きく息を吸い込む。
「時間もそんなにないし……」
時計を見ながらそう思っていると扉をノックされ、夏樹が入ってくる。大分父親に説教されて様でげっそりしていた。
「父さんマジ怖かった……」
「自業自得。今日はログイン禁止だからな?」
「わ、わかってるよ! 兄貴はこれからログインするの?」
「今日はいいかな?」
「じゃあさ、さっき思い出したんだけど兄貴に見せたい動画があるんだ」
そう言い夏樹は僕のPCを操作して動画を見せてくれた。そこにはギルドでの僕の対戦動画だった。
一部始終映っていたからか対戦相手への批判なコメントが沢山書き込まれていた。逆に僕に対しては勧誘の声が多かった。
「誰かが録画したのをアップしたみたいだよ。兄貴、明日ログインするっしょ?」
「その予定だけど……あれだろ? 早急にクランを立ち上げるんだろう?」
「そう言うこと! んじゃ俺は部屋に戻るわ。おやすみ」
部屋を出て行く夏樹に手を振る。
少し暖かい風が部屋に流れ込みんでくる。窓際に近づき夜空を見上げるとまん丸い月が浮かんでいた。
「綺麗だな……ふぁ~……寝よっと」




