第92話
それから僕達はダンジョンを進んでいくと青白い色をした狼の群れと遭遇した。数は六体。僕達のパーティーの数よりは少ない。
「ウィル、バフとシャルの護衛を頼んだ。シャルは隙を見て回復に専念。あとは打ち合わせ通りで頼んだ!」
ヴェスナーから指示に僕達は頷く。
言われた通りに僕は全員に攻撃力が上がるファイアーアップと防御力が上がるストーンアップを掛ける。道中の話し合いで僕が担当することになった。MPの負担もあるとヘストが反対してくれたけど、MPを自動で回復してくれるリングの事を伝えると渋々納得してくれた。
アイスウルフが散り散りに走り出す。
突撃してきた一匹をヴェスナーが盾で受け止めると盾から伸びたワイヤーで拘束すると上空に打ち上げる。
その隙を付いてもう一体がヴェスナーに牙を向けようとするが、間に女騎士のラティノアが入り防ぐ。
上空に打ち上げられたアイスウルフをヘストの放った火球が直撃して倒した。
女騎士のラティノアの盾で弾かれたアイスウルフに追撃で矢を射るクシュ。急所に当たったのか一気にHPが無くなり倒した。残り四体。
あっさり仲間が倒されてアイスウルフはこちらの動きを警戒している。
「クシュ!」
「ん」
クシュは空に向かって一矢放つと一つだった矢が数え切れない程に分裂して雨のようにアイスウルフへ降り注ぐ。
四体のアイスウルフは逃げ惑うも次々と矢が刺さり三体倒れていく。一体は瀕死になりながらも避け切った。
「ワオーーーーン……!」
アイスウルフは突然遠吠えをしだした。
「ヤバイ……!セゾンあいつを!」
「わかってるっすよ!」
一瞬でアイスウルフの近くまで移動したセゾンは止めを刺した。
すると、遠くから物凄い音量の足音と雪煙がこちら向かってくるのが見えた。
「遅かったか……気を引き締めろ皆! アイスウルフの大群が来るぞ!」
アイスウルフの大群の姿を認識した僕は絶句した。正確な数は分からいけどざっと見回しただけでも三十以上だ。
「あの数異常だろう……ウィル、いつでも魔法が撃てるようにしとけよ」
「了解……っておい、スザク?!」
スザクはアイスウルフの大群に向かって飛んでいく。
「ガオォォォ!!」
隣にいたビャッコは体が光りだすとアイスウルフの大群の進路方向にそそり立つ土壁が現れ動きを止めぐるっと囲った。
「ピィイイ!」
上空で待機していたスザクも光りだすと特大の火球を何発も放つ。僕達はその光景を見ているしかなかった。
しばらくするとスザクが戻ってきて褒めて欲しそうな表情していた。
「よ、よくやったぞスザク!」
「ピィイ!」
「ガオ!」
「ビャッコもよかったぞ!」
褒めながら二体を撫でていると皆がその場に座り込んだ。
「た、助かった~~。あんな数の大群は初めて見た」
「ん。全滅覚悟」
「そうすね。……ドロップアイテム拾って来るすかね」
「あ、俺も手伝う」
セゾンとヘストが立ち上がり散乱しているドロップアイテムを集めに行った。
「お嬢様、お怪我は?」
「私は平気です」
女騎士のラティノアは王女様に手を差し伸べ立ち上がらせる。
「あの大群ってアイスウルフが遠吠えしたのと関係あるの?」
「アイスウルフは瀕死になると仲間を呼ぶんだ。ただ、数は十数体ぐらいなんだけどな、あの数は異常……ウィルがいてマジ感謝だわ。それに熟練値も大量に稼げたしラッキーだぜ!」
「うんうん。ウィルありがとう」
僕も気になり熟練度を確認するとかなり上がっていた。
「私からもありがとうございますウィリアムさん」
僕の傍に来た王女様は深く頭を下げる。
集め終わったのかセゾンとヘストがタイミングよく戻ってきた。
「みんなー、驚かないで聞いて欲しいっす! アイスウルフの数は何と!」
「さっさと言って」
「うぐ……酷いすよクシュ……えー数は何と!」
「五十体だったんだ!」
「台詞言われたっす……酷いっすよヘスト……」
「ご、ごめん!」
膝を抱えセゾンは落ち込んでしまった。ヘストが必死にフォローする。
「五十……頭痛くなってきた……今日はもう解散ってことで良い人は挙手を!」
日が落ちてきたし頃合いだと思って僕は手を上げる
結果全員が手を上げて今回はこれまでとなった。
「決まりだな。二人は俺達が連れて帰るよ」
「分かった」
僕達は脱出用の転移結晶のアイテムを使いダンジョンから出て、村に転移する。
アイスウルフのドロップアイテムは僕の提案で全て換金して山分けすることになっていたんだけど、何故か少しだけ多く貰ってしまった。
「ウィリアムさん、ルキちゃんまたお城に遊びに来てくださいね?」
「うん! また行くね!」
王女様と別れを済ましてヘスト達はクロウカシスに転移するのを見送った。
「僕達も帰ろっか……ってルキ手に持っているのなに?」
「これ?」
ルキの手には青い三角の柄が付いている卵のようなモノだった。
「おちてた! たから物!」
「そうなんだ。じゃあ今度夏樹にチェストに入れてもらおうか」
「うん!」
ルキが大事にポケットにしまうの見届けてから僕達は屋敷に帰った。




