第87話
ヘスト達のハウジングを出て街に向かう。いつの間にか雪は止んでいて雲も晴れ、雲一つない空が広がっていた。
「快晴かぁ、珍しいなぁー」
「そうなの?」
「おう、めっちゃ珍しいぜ!」
ヴェスナーが説明してくれた。
クロウカシスの天気はほとんど雪で、止んでも滅多に雲は晴れない。リリースされてから快晴だったのは片手で数える程しかないようだ。そう聞くと相当珍しいんだな。
僕達は談笑しながら雪道を進んだ。しばらくするとかなり高い壁が見えてくる。
「あれがクロウカシスの街を覆う外壁っすよ。ウィルっちはこの街初めてっすよね?」
「そうだけど」
「なら、許可証が必要っすね!」
「許可証?」
そう返すと、四人は目を見開いて僕を見みてくる。
「……その反応は本当に知らないんすね」
セゾンはインベントリから一枚のカードみたいのを見せてくれた。そこには許可証と書かれており、ファルトリアの欄とクロウカシスの欄には色違いのスタンプが押されている。他の街の欄は空白だ。
「この許可証がないと街の施設が使えないから各拠点の街に着いたら作るっすよ。ちなみにギルドで作れるっす」
「そうなんだ。じゃ今から行くんだね」
「そうっす」
門をくぐり街に入ると青みがかった黒いレンガで建てられ家が連なり、屋根も同じレンガが使われているようだが白い雪で隠れている。映画に出てきそうな魔法使いの街みたいだ。そして、街の中央には巨大な城が存在を主張していた。
城を視界に入れながらヘスト達の後を追いギルドに向かう。
「ウィル……疲れた……」
袖を引っ張られルキが言う。慣れない雪道に疲れたようだ。
「おんぶする?」
「ううん。ビャッコの背中に乗りたい」
「ビャッコに? うーん、別にいいけど……ビャッコに聞いてからね?」
「うん」
邪魔にならない道の端の方に移動してビャッコを召喚。
召喚したビャッコは小さくなろうと体が光りだし、慌てて止める。
「ビャッコ、悪いけどルキを背中に乗せてもいい?」
「ガオ」
ルキが跨りやすいようにビャッコは伏せる。良いってことかな?
その様子を見てルキはビャッコに近づき跨ると、ビャッコは立ち上がった。
「ごめん、お待た、せ……どうしたの?」
四人は目を見開いていた。視線の先を辿るとビャッコを見ていた。
「あのさ、ウィルの召喚獣デカくなってる?」
ヴェスナーは指さしながら尋ねてくる。なんかデジャブだな。
「そう言えば、言ってなかったね。召喚士になったら召喚獣達が大きくなってたんだよ。今度みせるよ」
「お、おう」
しばらく進むと三階建ての大きな建物――目的地のギルドが見えてくる。
そこそこ賑わっているギルド内の列に並び自分の番を待つ。色んなプレイヤーから視線を感じたがヘスト達が近くにいてくれたおかげなのか話しかけられることはなかった。
そして、自分の番なり無事に許可証を手に入れギルドを後にする。
「許可証も手に入ったし、先ずはさっきからウィルが気になっている城に向かおうぜ。俺に感謝してくれよな?」
ヴェスナーの言葉に頭を傾げる。
「ヴェスナー、それじゃ説明足りないよ。ウィリアムさん、あの城は大会上位の人しか入れない仕様なんです」
「うちのヴェスナー、二位」
クシュはピースしドヤ顔をする。
「二位だったんだ。おめでとう」
「サンキュー。まぁ運がよかったってのもあったけどな」
「運も実力のうちだよ」
「へへ……よ、よし城に行こうぜ」
「ヴェスナーが珍しく照れてるっすね」
「照れてる……揶揄おうっと」
「クシュとセゾンは入れてやんねーからな!」
ヴェスナーは怒りながら城に続く道を進んでいく。
「それはないっすよーー!」
「ごめんって!」
その後を追うセゾンとクシュ。
その光景をみて僕、ヘスト、ルキは顔を見合わせ笑いあう。




