第83話
「これで決める! 【雪月花・光】!!」
刀を納め、目にも止まらぬ速さで引き抜き強烈な光を放つ特大な斬撃をメフィストに向けて放つ。
「面白い! 我の深淵なる力を見せてやろう! アビスホール」
メフィストは両手から黒い球体を作り出すと夏樹の斬撃に向けてる。あれ、やばくない?
僕は急いで土壁を何重にも生成して守りを固める。
光の斬撃と黒い球体がぶつかり合うと物凄い衝撃がボス部屋を駆ける。
その衝撃で土壁に罅が入ってしまう。
「ガオ!」
黄色い光を放つビャッコは魔法を使ったのか罅が直っていく。僕はビャッコの頭を撫で二人の戦いを見つめる。
光と黒のぶつかり合いが収まっていく。土埃が舞い上がる中二人の影が見え片方が倒れ込む。
鑑定してみると夏樹のHPは残り1、メフィストのHPは0。ギリギリで夏樹が勝ったようだ。
「ぶははは!! 見事だ勇者よ! だが、我はまだ本気を出していないぞ? 浮遊城で待っているぞ! ぶははは!!」
地面に倒れたメフィストはそれだけ言って体を無数の蝙蝠に変え飛び去っていく。
メフィストがいた所にはアイテムが落ちていた。僕は駆け寄りそれを拾う。
「悪魔の招待状?」
拾い上げると名前が現れる。どっかで聞いたような……
「あ、それ! 悪魔の招待状じゃん! あいつ……変なの落としやがって」
「浮遊城に行けるようになるアイテムだよね?」
「そうだけど。兄貴知らないと思うけど、一つの招待状で人数制限なしで一つの階層にいけるんだけど、どの階層行くのかランダムなんだ。ちなみにその招待所はマーケットで売れるよ。てか、売る! なんかイラっとするから売る! いいよね兄貴!」
相当メフィストの事が嫌いなのかな?
「浮遊城に行く予定ないし、別にいいよ。ちなみに相場ってどれくらいなの?」
「億単位」
夏樹の言葉に目を大きく見開いてしまった。
「え……そんな高いの?」
「これでまた大金持ちにだね! 兄貴!」
「う、うん……」
「ダンジョン攻略したし出ようぜ兄貴!」
夏樹はクリア時に出現する転移陣に向かって歩き出す。
「ビャッコ、ルキ。行くよー!」
大人しく待っていた二人を呼び一緒に転移陣に乗りダンジョンの入り口前に出た。
少しずつ夕焼け色の変わっていく空。時間はもう昼の三時。僕は背伸びしながら大きく息を吸った。
「兄貴これからどうする?」
「うーん。どうしよっか」
考えているとルキに袖を引っ張られた。
「ウィル……疲れた……」
今にも寝ちゃいそうな表情になっているルキ。ビャッコから降ろしおルキをおんぶする。
転移結晶のアイテムを使い屋敷に戻るのもありだったけどリィアに一言言ってからと思って村に向かって歩き出す。
多少敵モンスターと遭遇するがビャッコと夏樹が蹴散らしてくれた。
「あ、お兄さんー!」
村に戻るとリィアが出迎えてくれた。
「おかえり……なさい。ルキちゃん寝ちゃったの?」
僕におんぶされているルキを見て途中で声を小さくしてくれた。
「うん。疲れちゃったみたいだ。じゃ僕達は戻るね。またねリィアちゃん」
「また来てね」
リィアにも会え、僕達は転移結晶のアイテムを使い屋敷に戻る。
ベットの上にルキを寝かせ僕達はそっと部屋を出て別の部屋に。
「じゃあ、兄貴。早速売ってくるわ!」
夏樹は颯爽と屋敷を出て少し遠いハウジングエリアにあるマーケット用の掲示板に向かった。
行動が早くて苦笑して送り出す。
まだ時間もあったので召喚獣達を全員召喚する。おかげで広かった部屋は少し狭く感じた。
召喚獣達は大きくなりいつもの定位置につけなくておろおろしている。少し可愛いと思うってしまう。
すると、召喚獣達は頷き合い、それぞれが光を放つと段々と小さくなっていき、光が収まると元の姿に戻っていた。
「え……そんなこと出来るの?」
「カメ!」
「チュン!」
「ガウ!」
「ギャア!」
召喚獣達はやっと定位置についたことで落ち着き始める。
大きい姿もいいけど、やっぱりこの姿の方が安心する。
召喚獣達を見ながら僕はそう思った。




