第81話
アルナさんとアイリスさんと別れて僕達はメフィストに会いに《亡者の墓場》に向かうことにした。
クランを立ち上げるためにギルドに寄ってからと考えていたけど、またルキを人質にされ対人戦を強要されるかもしれないと夏樹が言うのでもう少し落ち着いてからすることになった。
転移結晶のアイテムのを使いダンジョン近くの村に転移する。
「おお!」
初めての村に興奮気味のルキの手を握り出入り口の方に歩みを進める。辺りを見渡すと居るのはNPCと両手で数えれるくらいのプレイヤーしかいない。
「ここってあんまプレイヤーはいないんだね」
「さっさと次の村に行くから長く滞在する人は滅多にいないよ」
「お兄さんーーー!」
聞き覚えのある声に反応し振り向くとダンジョンで囚われの身になっていた女の子――リィアが手を大きく振りながら駆け寄ってくる。
「久しぶりリィアちゃん。元気にしてた?」
「うん! 元気にしてた!」
「そっか。来るの遅くなってごめんね」
「ううん! お兄さんその子は?」
握っている手を離し夏樹の後ろに隠れるルキを尋ねるリィア。
僕は手招きでルキを呼び軽く紹介する。
「この子はルキ。ちょっと訳あって預かっているんだ」
「そうなんだ。 私はリィア! よろしくね!」
リィアは握手を交わそうと手を差し出す。
ルキは僕の顔を見てくるから頷くとリィアの手を取る。
「うん」
「あ、そうだ! あっちに美味しいお菓子があるの! 行こう!」
ルキの手を引きリィアが走り出す。
僕達も後を追いリィアお勧めのアップルパイを全員分を購入して舌鼓を打つ。
リィアと別れ僕達はダンジョンに向けて歩みを進める。
前に行った時は夜中だったからか全然不気味な感じはしなかった。昼時に来ればよかったな。
「兄貴、このダンジョンじゃ熟練値がそんな上がらないからどんどん進もう」
「了解。ルキ、中に入ったら絶対離れないでね。約束だよ?」
「うん、わかった!」
「兄貴、召喚獣どうするの?」
そう言われ召喚獣達が大きくなったのを思い出す。
中は狭い。弱点でいくならスザクだけど大きい翼だと飛べないし、ゲンブは重くなり移動速度も落ちている。セイリュウは言わずもがな。消去法でビャッコかな?
「来い、ビャッコ!」
「ガオ!」
ビャッコは召喚されると頭をすりすりしてくる。僕が頭を撫でてやるとグルルと甘えるよに鳴く。
ルキもビャッコを撫でる。その光景をみて良いこと思いつく。
ルキをひょいっと持ち上げビャッコの背に乗せると二人が頭を傾げ見上げてくる。
「ビャッコがついていれば安心安全かなって思って」
「いいんじゃない? まぁ兄貴の目的は別だと思うけど」
「な、なんの事かな……? ほ、ほらダンジョンに入るよ」
無理に話を逸らしダンジョンに歩みを進めた。
「待ってくれ兄貴ーー!」
「行こうビャッコ」
「ガオ!」
薄暗い道を進み、遭遇する敵モンスターに特に苦戦することなく一階層のボス――マザーズスパイダーを突破した。
二階層を進みふと初めて来たときのことを思い出す。
「そう言えば、ここら辺だっけ? 隠し扉があっとの」
「もうちょい先……確かここだった。…………どこも扉ないね」
夏樹はスイッチがないか探すが無いようだ。
「だね」
僕も踏んだと思われる場所を探すが見つからない。やっぱり珍しいイベントだったんだな。
ボス部屋まで進むと扉が閉まっていた。
「誰か挑戦しているみたいだ。終わるまで向こうの安全部屋で待ってようか」
「そうだね」
安全部屋は敵モンスターが湧かない部屋だ。順番待ちの場合はこの部屋で待つのがマナーらしい。
敵モンスターを倒してしばらく湧かない道を進む。
「「えっ?」」
突然床が抜け僕達は底が見えない穴に落ちていく。
「兄貴!」
夏樹はスキルを行使して壁を蹴って対処している。
ルキを背に乗せてるビャッコは壁に爪を立て減速させ落ちいく。
それぞれが対処している。周りの壁は土……だと思う。なら。
「ストーンウォール!」
土壁が穴が塞ぐように平らに伸びていく。
「からの、ストーンコントロール!」
衝撃を和らげるために土を砂に変えそこに落ちどうにか助かったけど、全身砂まみれなってしまった。
「兄貴、無事!?」
夏樹も無事に到着したようだ。遅れてビャッコとルキも到着する。
体を起こし見渡す。
「皆も無事のようだね。これからどうしよっかなぁ」
「上に戻るのもって、兄貴床が!?」
床が急に光りだしたと思うと床が綺麗さっぱりに消え、僕達はまた落ちていく。




