第80話
しばらく回り続けた結果、夏樹とアルナさん、そしてアイリスさんは目を回し床に座り込んだ。ルキは元気にはしゃいでいる。あの中に加わらなくてよかった……
ルキがこちら向かって走ってきて飛びついてくるのを受け止める。
「楽しかった?」
「うん! あ、ウィル~。スザク触りたい!」
「いいよ。そうだ。他の子たちも見せてあげるよ」
「いいの? やった!」
召喚士に変わってスザクの姿が大きく成長した。てことは、他の三体も変わっているはずだ。
ルキにはもともと見せる予定だけど、僕としては確認の目的が大きい。
ベットから下りテラスに歩いて行き庭に出る。すると、前に植えた苗木が腰のあたりまで伸びているの気が付く。こんなに木って育つの早かったっけ?
「夏樹ー。苗木になんかした?」
「ん? 苗木? 兄貴がいない間に成長を促す骨粉というアイテムをアテムアさんに貰って使ったよ」
「そうなんだ」
見ない間に成長した苗木にそっと手を添え、早く成長すること願った。
「ウィル?」
後ろからルキに声を掛けられ僕は立ち上がり芝生が広がる庭の真ん中に行く。
ついでに、外から中の様子が見れないように設定を弄る。これでいいかな。
「ウィリアムさん、なにかやるんですか?」
先に回復したアイリスさんが庭に出てくる。
「召喚獣達を召喚するだけですけど、そこにいてください。ルキもアイリスさんの近くにいて」
「うん!」
僕の近くにいたルキをアイリスさんの下に行かせる。危なくはないと思うが念のためだ。
「来い、スザク」
「ピィイ!」
対人戦で見た時と同じく大きく成長した姿のスザクは僕の右肩に止まる。やっぱり重いんだけど。
「えええええ! スザクが大きくなってるーー!!」
「召喚獣って成長するの? そんなこと何処にも載ってないよ? なんで? なんで成長するの? ゴッドクラスだから? なんで?」
アルナさんは素直に驚き、アイリスさんは頭を抱えて唸っている。
何処かで見たような気がするが本番はこれからなんだけど。
スザクに一旦肩から退いてもらい召喚を続ける。
「来い、ビャッコ!」
「ガオ!」
「おお、虎だーって、わあああ待てビャッコ!!」
召喚されたビャッコは動物で見られる成体の虎と同じくらいの大きさに成長している。
大きな図体のまま僕に突っ込んできて押し倒され顔をペロペロと舐め回された。
どうにかビャッコを止めて抜け出せた。
「ビャッコ大きい! もふもふ!」
ルキはビャッコに駆け寄り顔をもふもふの毛皮に埋める。
「ビャッコも成長してるーー! ウィルなんかした?」
アイリスさんを放置してアルナさんが近づいて聞いてくる。
「僕は何も」
アルナさんにこうなった経緯を対人戦のことも含めて説明した。
「そんなことがあったんだ」
「兄貴の圧勝だったぜ」
「ほほう。それはそれは是非戦いたいものですな」
「あはは……次の機会でお願いします」
戦いたくないが約束してしまったのだからいつかは戦わないといけないが出来るだけ先延ばしにしないと。
気を取り直して召喚を続ける。
「来い、ゲンブ!」
「ガァメ!」
子亀だったゲンブは一・五メートルぐらいに成長していてずっしりとかなり重そうな見た目だ。それに、尻尾の部分が蛇に変わっていて舌をちろちろとだしてこちらを見てくる。あ、お辞儀された。
「本に出てきそうな見た目になってきたね兄貴」
「だね」
そう言いながゲンブの頭を撫でる。ついでに蛇の頭も撫でる。
「あと召喚してないのは……セイリュウ?」
召喚獣達と戯れているアルナさんが尋ねてくる。
僕は頷き最後の召喚をする。
「来い、セイリュウ!」
「グラァ!」
額には鹿のよな青い角に、口元には白い髭を生やした本とかでよく見かける龍の姿だ。鼻先から尻尾まで測るとすると十メートルぐらいはありそうだ。
スザクとビャッコの一時覚醒した姿は今よりも大きい。てことは、セイリュウの本来の姿はかなり長いのかもしれない。
「なんか……凄いですねウィリアムさん」
ようやく元に戻ったアイリスさんが僕の召喚獣達を見回して言った。
「あはは……かなり言いにくいんですけど。前に一時覚醒のこと話したと思うんですが覚えてます?」
「え、はい。覚えてますよ」
「その時の姿より小さいんですよ、スザクもビャッコも」
「え……?」
「だから、まだ召喚獣達は大きくなるかと思いますよ」
「えええええええ!!」
そう告げるとアイリスさんの驚き声が庭に響き渡った。




