第78話
あっという間の決着に呆然としていると上空にあった球体はゆっくりと降りてきて、僕の前まで来ると消えてルキをお姫様抱っこのようにキャッチして地面に降ろす。
「ルキ、怪我はない?」
「うん! ウィル、さっきのかっこよかった!」
怪我はないようで一安心だけど、ルキはスザクが放った魔法を僕が放ったとキラキラした目で言う。
僕じゃないんだけど……。ちらっと大きくなったスザクを見ながら思った。
「その子だーれ?」
そう言えばルキにはビャッコしか見せていないっけ。ゲンブとセイリュウも見せてないけど次のタイミングでいいかな。
僕はスザクの首元を撫でると気持ちよさそうな目をする。
「この子はスザクって言って僕の相棒の一体だよ」
「ピィイ!」
「へー、カッコいいね!」
ルキに褒められて少し照れているスザク。珍しい姿に僕はこっそりとルキと一緒にスクショする。
「兄貴! さっきの魔法なんだったんだよ!」
いつの間に赤い線が消え夏樹が駆け寄ってスザクの魔法を聞いてくる。
「ここだと、色んな人に聞かれちゃうから屋敷でな」
「そ、だね」
「ピィイ!」
そんな会話しているとスザクが急に鳴きだし翼を器用に使い指?さす。顔を向けると大男を担いで部下たちがゆっくりと退散しようとしていた。
スザクのおかげでやり場を失った怒りを最後に部下たちに笑顔を見せて言い放つ。
「あの、ルキと夏樹に手を出すようなことがあれば次は無いので忘れないでくださいね!」
「「「はいーー!!」」」
部下たちは全速力でギルドを出て行く。
次は無いとは言ったものそこまではする気はない。またちょっかい出されるのも面倒だから釘を刺しておく。まぁ、スザクのあの一撃をまともに食らったんだし来ないはずだ。
「流石はゴッドクラスの召喚士だ。是とも我のクランに欲しい!」
声のする方に目を向けると大剣を二つ背中に装備しているグラさんがすっごい笑顔で見てくる。
「グラさん。お久しぶりです。クランのお誘い丁重に断らせていただきます」
「なら、我と戦――」
「それも、お断りしまーす!」
グラさんが言いそうなことを先読みして断る。それから僕はギルドの外に向かって走り出した。
突然の行動にスザクは離れ僕は振り向くと後ろを飛んで追いかけてくる。
「あ、兄貴! 先行くなよー! ルキ行くよ」
「うん!」
夏樹はルキをおんぶして追いかけてくる。
しばらく通りを走り、その間にスザクを戻し裏路地に入ると転移結晶のアイテムを使い屋敷に戻った。
「たのしかった!」
ルキはベットの上で街中を走ったことが楽しかったのかはしゃいでいる。
僕と夏樹は長いソファーにもたれかかり息を整えていた。
「兄貴、スザクの事聞きたいけど、もう時間ないよな?」
夏樹に言われ時計を確認すると零時を回っていた。
「マジか……スザクの事は今度話すよ。ルキを寝かせてからログアウトするよ」
「了解。じゃあ先にログアウトするわ」
そう言い夏樹は目の前から消える。
僕はソファーから立ち上がりベットに行きルキを手招きして横にさせる。
「ウィル、あしたもくる?」
「来るよ」
「そっか。まってるね。おやすみなさい」
「おやすみ」
ルキは目を瞑り直ぐに寝息が聞こえた。しっかり寝ているのを確認して僕はログアウトした。
意識が戻りヘッドギアを外した僕はそのまま眠りに就く。
セットした時間にアラームが鳴り起きた僕は身支度を整え、朝食を済ましてから会社に向かった。
そして、仕事をしている時に上司に呼ばれた。
「急で済まないが、明日の早朝からここに出張してくれ」
そう言われ上司から一枚の紙を受け取り、目を通すと直ぐに終わらない案件だと理解した。
「任せたぞ」
「……畏まりました」
自分のデスクに戻りどうにか平常心を保ちながら仕事を終え家に少し遅い帰宅。
夕食を済まして僕は早々に眠り、翌日朝一の新幹線に乗り目的地へ。
一刻も早く戻りたくて仕事をこなし、どうにか金曜の昼には会社に戻ることが出来た。
上司に報告して僕は定時に帰り、ログインしようと思ったが疲れがどっときて食事もしないで僕は深い眠りに就いた。




