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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第72話

「この子、なんだろうねビャッコ」


「ガウ」


 球体に近づき眠りに就いている子供をまじまじと見る。白くて長い髪に中性的な顔立ちで性別が分からない。ここで眠っているぐらいだNPCもしくはメフィストのような存在なんだろう。

 試しに鑑定するとステータス全てが文字化けしていて解読不能だ。


「うーん……謎だな」 


「ガウ!」


 後ろからビャッコに頭突きを食らい球体に顔面をぶつけてしまった。


「いてて……何すんだよビャッコ……ん? 水?」


 額を触ると濡れているの気が付き、正面を見ると僕がぶつけた所に罅が入って液体が漏れ出している。

 僕は慌てて手で押させるがどんどん漏れ出し勢いが止まらない。そして、だんだんと音を立てながら罅が広がって行く。

 ヤバイと思って瞬間、半透明な球体はパリンという音ともに砕け散り、僕は球体に詰まっていた液体を全身で被ってしまった。うわ……びしょびしょだ……

 ジト目でビャッコを見ると顔を背けた。後で説教だな。それよりも、あの子は?

 辺りを見渡すと子供は床に寝転がっていた。急いでインベントリから大きめな布を取り出し、子供を抱き上げ鼻の前に手を置きちゃんと呼吸しているのを確認が取れて僕は安堵した。


「……だ、れ?」


 目を覚ました子供は少し高めな声で尋ねてくる。


「えっと、僕の名前はウィリアムでこっちが相棒のビャッコ」


「ガウ!」


 子供はビャッコを見た後ぼーっと僕の顔を見つめる。


「君の名前を聞かせてくれるかい?」


「なまえ……?」


 子供は頭を傾かせ聞き返してくる。どうしよう困ったなぁ。


「そうだ。ねぇ他の人たちからなんて呼ばれているのかな?」


「……わからない」


 おっとわからないと来たか。完全に手詰まりだな。


「うーん、あのさ君の名前が分かるまでルキって呼んでもいい?」


 ルキっというのはとある映画に出てくる子供の名前だ。容姿が似ているから選んだのだ。


「? ルキ?」


「そう。ルキ。ダメ、かな?」


「ルキ……うん!」


 ルキは嬉しそうに笑う。気に入ってくれたようでよかった。

 僕はルキの頭を優しく撫でていると、複数の音が聞こえ見渡すと色んな動物や異形な形をした者達に囲まれていた。


「こんなところいたのか勇者よ!」


「メフィスト……」


 メフィストはゆっくり歩き僕の前に出てくる。


「これは予想外だったが、まぁよい。これはこれで面白いぞ勇者よ! ぶははは!!」


「おい、メフィスト。笑ってねぇでさっさとしろ!」


 メフィストの隣にグラシさんが姿を現す。


「ふむ。そうだったそうだった! 勇者よ、その子を返してもらえば命だけは助けてやろう! ぶははは!!」


「はぁあ? お前何言ってんだよ! あいつを倒して奪え取るんだろうが!」


「我が決めることぞ、お前の指図は受けん! ぶははは!!」


「ふざけんな!」


 メフィストとグラシさんが言い争いをしている。今のうち策を考えて逃げないとだけど逃げ道がない。考えろ、考えろ!

 必死に考えているとルキが見上げているに気が付き、心配させないように微笑むと笑い返してくれた。

 メフィストは言ったルキを渡せば見逃してくれると。だけど、そんな選択を選ぶ気はない。


「ビャッコ行くよ!」


「ガウ!」


 床に手を置き僕は魔法使う。


「【四神の領域・大地】!」


 このホールの隅の隅まで一瞬で土で覆いつくす。 

 四神の領域……僕がレベル45で使える魔法。僕の召喚獣が最も戦いやすいフィールドに作り変える魔法。MPは大量に消費するが欠点なのだが、メフィストから貰ったリングさえあればMPは回復する。使わない選択はない。


「あいつ! ケリは後回しだメフィスト! あいつを仕留める!」


 グラシさんがこっちに向かって足場が悪い中もの凄い速さで駆けてくる。

 それだけではない、他の者達も攻撃しようとしてくる。


「クイックサンド!」


 僕は土属性の拘束魔法を使い、至る所に流砂を作り出す。そのおかげか半分ほどが流砂に嵌り動きを止める。その中、グラシさんは味方を踏み台にして近づいてくる。


「面白い魔法だな! 俺とも戦おうぜ!」


「嫌だね。今だビャッコ!」


「ガオオオオ!」


 僕が合図を送ると地面に潜んでいたビャッコは特大の岩の拳を振り回し、グラシさん含めて全員を吹き飛ばした。


「流石に効いててくれると嬉しいけど……今のうちに逃げるよルキ」


「うん!」


 息を整え吹き飛ばした衝撃で土煙が舞いあがった状態で逃げようと足を動かした瞬間、視界が逆さまになり宙ぶらりん。ルキが落ちないように腕に力を入れた。


「やっと捕まったか。おせぇぞオルト!」


「ふん」


 そこには豪華な着物に着飾った夏樹の対戦相手のオルトさんがいた。



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