第65話
広い屋敷の一階をしばらく進んでいくとスザクは部屋の中に入っていく。
俺も続いて入るとキングサイズのベットに召喚獣達と一緒に寝ている兄貴がいた。
俺の試合を見ないで寝てたのかよ……少しだけいたずらごころが芽生え、俺はゆっくりベットに上るとセイリュウ、ゲンブ、ビャッコが目を覚ます。俺は小声で「しっー」と言うと三体はそろりと退いてくれた。
俺はそのまま兄貴を覆い被さるよにする。
「ん…………夏、樹?」
目を覚ました兄貴に俺は倒れ込む。
「重いんだけど……」
「俺の試合見ないで寝てんじゃねよ兄貴」
「あはは……このベットの寝心地がよくてね、ごめん。でも、夏樹が生き残るって信じてたからっておい! 抱き着くな!」
兄貴の言葉を聞いていたら自然と兄貴の体に腕を回していた。兄貴はずるいなぁ……何がずるいかはま言わないけど。
「……ここにいるってことはサバイバル戦終わったの?」
言っても無駄だと思ったのか諦めた兄貴が尋ねてくる。
「うん、終わった。どうにか八位に入れた」
「そっか、おめでとう夏樹。じゃ明日のトーナメント戦に出場だね。頑張れよ」
「おう!」
俺はようやく兄貴の上から退いた。
「で、この家っていうか屋敷っていうかは置いといて、兄貴のでいいんだよな?」
「うん。試合中に連絡が来てさ見に来たら想像以上でびっくり。貴族の屋敷かよ!って思ったよ」
「だね。デカすぎ。高額な訳だよ。……てか、このベットは?」
家具とかは買った記憶はないと思い俺は兄貴に聞く。
「あぁ、このベット? アテムアさんが木工士?だったけな、それのレベル上げの時に大量にあるからってハウジング祝いにアレイヤさんから貰ったんだ。夏樹の分もちゃんとあるよ」
「そうなんだ。兄貴の部屋ここなの?」
「うん。ここだと直ぐ庭に行けるからね」
ビャッコが兄貴の膝上にやってきて兄貴はそんなビャッコの体を撫でる。
「そうなんだ。じゃあ俺は兄貴の隣の部屋を使うよ。近い方が割かし色々と便利だしね」
「? まぁ部屋はいっぱいあるし飽きたら変えればいいよ」
今度はセイリュウとじゃれ合う。
「そう言えばトーナメント戦の対戦相手とか決まったの?」
寝ててそれすらも知らない兄貴に俺は呆れながら言う。
「明日発表って司会が言ってたよ。本当にぐっすり眠ってたんだね」
「うっ……ホントにごめんって……明日は絶対に応援に行くから」
「なら、いいけど」
兄貴は俺の言葉を聞いて安堵した。
「それで兄貴この後――」
俺がこの後どうするか話そうとすると手で制止され兄貴は誰かと連絡を取り始める。
兄貴が話終わるまで俺は待つことにした。んだが、召喚獣達が暇そうにしていたから一緒に遊んであげた。
「夏樹、今夜この屋敷でトーナメント戦に進んだ三人を祝う会を開こうかと思うんだけど、夏樹この後予定とかある?」
「無いよ。この日の為に一切予定入れてないぜ!」
「別に威張って言うことじゃないと思うんだけど。了解。じゃ決定ってことで」
「了解」
兄貴はすぐに連絡して祝う会を開くことになった。
しばらくして《蜜柑の園》のメンバーが訪れる。兄貴とアイリスさんが料理を担当し、料理が苦手なアレイヤさんは飾り付けを任せれた。
俺とアルナ、アテムアさんは待つことになり別の空いている部屋移動。アテムアさんが暇すぎて俺とアルナの装備を修理してくれることになったのはかなり助かった。これで万全の状態で挑める。
そして、準備も終わり日が傾く頃に開催された。
「では、三名のトーナメント戦に進出を祝して乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
アレイヤさんの音頭により開始され、俺達は兄貴とアイリスさんの豪華な手料理に舌鼓を打つ。
少し経つと連絡が来た俺は席を立ち玄関に向かった。
「いらっしゃい」
「お、お邪魔します!」
「「「お邪魔します!(っす)」」」
そこにはヘストとパーティー仲間のヴェスナー、セゾン、クシュの四人が直立の姿勢をしていた。
俺が誘っていいか相談したら構わないとのことで呼んだのだ。
「緊張してんの?」
「う、うん。まさかここまで大きいハウジングだと思わなくて……」
「そうっすよ! こんなの中世ヨーロッパに出てくる貴族の屋敷みたいじゃないすか!」
「セゾンの口から中世ヨーロッパって単語が出てくるなんてびっくり」
「セゾンの偽物?」
「クシュもヴェスナーも酷いっすよ!」
俺とヘストはそのやり取りに笑ってしまった。
「ここで立ち話もなんだから入って」
四人を屋敷に招き入れ、皆が居る部屋に連れて行き軽く自己紹介した後和気藹々と祝う会は行われた。




