第64話
瓦礫を押し退け周りを見渡すと街は綺麗に吹き飛んでいた。
いくら司会のミスターFが全力をだしてもいいって言っていたけども出し過ぎだし、やり過ぎだろう……
呆れていると一緒に行動していたヘストが居ないことに気が付く。俺は大声でヘストを呼ぶ。
「ヘストーーー! どこだーーー!」
パーティーを組んでいるからヘストのHPがあるのは分かるけど、どこいるんだ?
「ここだよーーーーー」
ヘストの声がする方に向かうと大きい瓦礫の下敷きになっているヘストを見つける。
「大丈夫か? よいしょっと!」
「ありがとう……ふー。さっきの何だったの?」
立ち上がり服についた塵を払いながらヘストが尋ねてくる。
空に滞空しているバハムートを見ながら俺は答えた。
「さっきのはメガフレア。召喚獣バハムートのレベル50で使えるようになるスキル。《究極召喚師団》のクランリーダー、フーディアさんの最強の相棒だよ」
「《究極召喚師団》って……めっちゃ有名なとこじゃん! クランリーダーの相棒ってあれがゴッドクラスなのか……強すぎない?」
「ゴッドクラスの強さはいつも間近でみてたからなんとなくわかってたけど、これは予想外だ」
「ん? いつも?」
ヘストは頭を傾けてくる。
「あー言ってなかって、俺の兄貴もゴッドクラスの召喚獣を持っているんだ」
「えええええ! お兄さんってことはウィリアムさんだよね! あ、左腕に巻き付いていた青い蛇?みたいなのがそうなの!?」
驚いているヘストに更なる事実を伝える。
「蛇じゃなくて龍な。それに驚くなよ? 兄貴の召喚獣四体中四体がゴッドクラスだからな」
「えええええ!! こんなに強い召喚獣を四体も!?」
「あ、これ内緒な?」
ヘストは口を押え頷いた。
そんな会話をしていると街全体にミスターFの声が響き渡る。
『いや~これは予想外ですねミスターN』
『そうだな。ミスターFがあんなことを言ったのが原因だな』
『あはは……反省しております。それと大事なお知らせがあります。先程のバハムートの一撃で参加者が……えっと、残り十名になり、街もこんなありさまなので続行が出来ないと判断しましてサバイバル戦を終了とします。なお、参加者全員に後日詫びのアイテムを送らせていただきます! これで、許してください!』
GMのせいじゃないと俺は思った。
『残ったプレイヤーの中で上位八人が明日のトーナメント戦に進みます。では、発表します』
上空に特大のスクリーンが映し出された。
ミスターFが読み上げていく。
『堂々の一位は究極召喚士フーディア・アルバート。二位、大双剣士グランツ・バルドル。僅差で三位の獅槍騎士レオル・グランバート。四位は機工士アテムア・テーラー』
レオルさん、やっぱり生き残っていたか。これで俺が上位八位までに食い込めばレオルさんと戦える。頼む、八位までに入っててくれ!
『五位拳闘士アルナ・クラフトス。六位魔狂士グラシ・ラボラス』
アテムアさんとアルナさん二人とも入ったな。それよりも後二人だ。
『七位操糸士オルト・ボーティス』
あと一人!どうか入っててくれ!
『八位属性刀士ナツキ・トワイライト。以上の八名が明日のトーナメント戦に参加します。対戦相手の発表は大会当日に行いますでお楽しみに! では、これにてサバイバル戦を終了します! お疲れさまでした!』
ブツンとスクリーンが消える。
八位に入れたことに安堵した俺は息を吐いた。
「トーナメント戦出たかったな。まぁいいや次こそは入るぞ!」
それは置いといて、とヘストは続ける。
「おめでとうナツキ! 俺の分まで頑張ってくれよ!」
「サンキュー!」
俺とヘストは熱き握手を交わした後別れた。
転移結晶のアイテムを使って《蜜柑の園》のハウジングまで戻ろうと思ったが、兄貴の所に転移できるピアスを思いだし使う。
視界が暗転し、気が付くと目の前には見知らぬ家があった。
家っていうよりもの屋敷だな。兄貴の所に転移したはず、なんだけど……ここ何処だ?
辺りを見渡してようやく理解した。ここって兄貴がハウジング建てる場所だよな。そう言えば今日完成するんだっけ? じゃあこの立派な屋敷は兄貴の?
意を決して屋敷の扉を開ける。
中には特に置物もなく赤い絨毯が敷かれていて二階に続く階段しかなかった。
「兄貴ーーー!」
しーんと静かな空間に俺の声が響き渡る。
少し経つとバサバサとスザクが飛んできて俺の頭に止まる。
「スザク、兄貴知らない?」
「チュンチュン!」
スザクが道案内してくれようだ。俺はスザクの後ろをついて行き広い屋敷の中を進んだ。




