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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第62話


 サバイバル戦が始まって一時間ぐらい経ち、遭遇したプレイヤーを倒し、さっき倒したプレイヤーで丁度百人になる。今回の参加者は各拠点で約五千人だ。その為に街はこの時だけかなり拡張していると、さっき司会が言っていた。通りでマップが広がっているわけだ。

 先を急ぎたいがHPが半分切ってしまった。この大会では街の何処かにある回復アイテムを使うか、自身で使える回復魔法か時間経過でHPを戻す方法しか無い。どこかで休まないと。


 辺りを警戒しながら進んでいくとボロボロの教会が見つけた。

 歩き出そうと足を動かそうとした時、足に痛みが走り地面に倒れてしまった。

 痛みに耐えながら急いで物陰に隠れ足を見ると短剣が刺さっていた。クソ、油断した。

 ステータスを見ると毒のアイコンが現れていた。急いで短剣を抜き捨てる。毒……気配もなかったし、忍者もしくはアサシン系のジョブだろう。

 焦るな俺、落ち着け。こういう時程集中だ。スキル【黙想】を使い集中力を高めつつ微小だがHPを回復させ毒の効果を相殺させる。

【黙想】は俺が唯一持っている回復系のスキルだ。使うと動けないのが欠点だが、相手を油断させるにはちょうどいい。

 足音が近づいてくる。タイミングは一度きりだ。もう少し引寄せて……今だ!


「っ!」


 相手は警戒して飛び退くが遅い。俺は刀を地面に突き刺す。


「【八重葎】!」


 俺を中心に無数の刀が地面から突き出し二階建ての家の高さまで伸び襲ってきた相手を串刺しにする。おかげで相手のHPはゼロになりどうにか倒せた。

 【八重葎】は俺が新しく覚えた範囲系のスキルだ。初めて使った時にエグイと思い俺は兄貴の前では使わないと決めたスキルだが今は関係ない。使わないと俺がやられてた。


 早々に俺は教会に入り奥の方に移動し息を殺し【黙想】を使う。とりあえず、毒のアイコンが消えるまでやらないと。

 【黙想】を使い続けようやく毒のアイコンが消えた。これで漸く回復が出来る。

 そう思っていると扉が開く音が聞こえスキルを止めた。


 フードを被り荒い呼吸をしボロボロの長椅子に腰掛け呼吸を整えようとしている。

 こっちには気づいていない……ようだな。俺はゆっくりと近づく。直ぐ近くまで来たが未だに気づいていないようだ。相手はフードを取り魔法を唱え始める。淡い光……回復魔法か。チャンスだな。

 俺は柄に手を添え射程内に入れようと更に近づこうとしたが枝を踏んでしまう。その音で相手はようやくこちらに気づいてしまった。やるしかない。


「【剣舞・火】!」


 鞘から刀を抜きオレンジ色の炎を纏った刀で切りつけるが杖で受け止められた。


 「フレイムダンス!」


相手は炎を体から発し、踊るように俺に襲いかかる。

俺は相手を蹴り飛ばし距離を取り、睨み合う。


「え……ナツキ、さん?」


相手は目を見開いて俺の名前を呼んだ。

俺も目を凝らすと見覚えのある顔だった。妖精の花園で出会ったパーティの一人だ。


「確か、ヘストさんだっけ?」


「うん! よかった、知り合いに会えてーー!」


ヘストは杖を下ろして俺に駆け寄りろうとするが俺は切っ先をヘストに向けた。


「今、馴れ合う気はない」


「っ……そう、ですね」


ヘストは緩んだ表情を引き締め睨んでくる。良い顔だ。

お互いに睨み合い続け、最初に動いたのはヘストだ。


「フレイムロック!」


床から炎を纏う鎖が伸び俺を拘束しようとしてくる。


「【剣舞・水】!」


刀身に水流を纏わせ伸びてくる鎖を捌いていく。

俺の対応の仕方にヘストは目を見開いてる。


「火に水? 近接で二属って、マジか……ナツキさん! いつ魔法覚えたんですか!」


そう言いつつヘストは複数の炎の矢を放つ。

俺は飛来してくる矢を叩き斬りながら前に進む。


「俺に勝ったら教えます、よ!」


「フレイムガード!」


俺の一撃を炎の盾で塞がれ、反撃に火の玉が飛んでくるが躱しながらヘストと距離を置る。


「一発も魔法が当たらない……ナツキさん、どれだけ運動神経いいんですか……!」


運動神経は普通だと思うけど、俺が避けれているのはメフィストから貰ったブレスレットの回避率が上がっているおかげでもある。口には出さないけどな!


「まぁね。ヘストさんもなかなかやるじゃないですか」


「え、そ、そう? えへへ、ありがとう! けど、手加減はしないよナツキさん!」


「こっちこそ!」


俺が駆け出そうとした時、街全体にサイレンが鳴り響く。


『おっと、伝え忘れていたことがあった! えーっと一定時間が経つと街の中心に向け行動範囲が狭まってきます! 範囲外に出ると強制失格になるので気をつけて!』


 一番大事なこと今言うのかと俺とヘストは口に出して突っ込んだ。



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