第59話
こちらに気づいていないペペに僕は声を掛けた
「ペペ」
『ん? あ、ウィルだ! こんな所で会えるなんて偶然だね!』
枝から下りてペペは飛んでくる。
「もうすぐ帰るから挨拶に来たんだけど……ペペの居場所を聞く時に他の妖精に聞いたんだ。そしたらぺぺって名前じゃなくてペ――」
ペペが僕の口に手を当て遮る。
『その先は言っちゃだめだよ?』
ゆっくりと僕の口から手が離れペペはくるっと背を向ける。
『……妖精はね、人に真名を呼ばれるとその人と契約しちゃうの。契約するともうここに帰ってこれないから、人には真名を教えちゃいけないし、呼ばせちゃだめなんだ』
「それが理由なんだね」
『うん。嘘ついちゃってごめんなさい』
僕は胸に手を息を吐き安堵する。
「よかった……そんな理由だったんだね。夏樹は知ってた?」
「初めて知った。妖精と契約しているプレイヤーは何人かは居るみたいだけど、そんな情報は一切ないんだよな」
夏樹の目の前に飛びペペは言う。
『それはね、契約の際に言わない約束になっているからだよ。もし、約束を破ったら色んな不幸が起きちゃうから言わないんだ』
僕は気になったので尋ねた。
「不幸なことって?」
『全ステータス永続減衰、必要経験値増加、移動速度減。それと、妖精の花園には二度と入れないようになるよ』
「結構エグかった!」
「それは誰も言わない訳だな。納得!」
『その分、契約したプレイヤーに良いことがあるから仕方ないんだよ』
「良いこと?」
『これ以上は秘密!』
ペペはそう言い近くの木に飛んでいく。
聞けそうにない雰囲気になったので僕は聞かないことにした。
その代わりに僕はペペに尋ねた。
「あのさ、契約してない僕達が聞いても大丈夫な話なの?」
振り返り微笑んだペペは言う。
『大丈夫じゃないけど、ウィルを信じているから』
何故ペペはここまで僕を信用しているのかが分からない。けど、ここまで信用してもらっているなら僕も答えないとな。
「わかった。今まで聞いた話は誰にも言わないし忘れるよ」
ただ、と僕は続けた。
「ペペの真名は言わないけど忘れたくない。それだけ許して欲しいんだけど」
ペペは目を見開いて驚いた後大笑いし涙目になる。
そんなに変なことを言ったのかな?
『そんなことを言ったのウィルが初めてだよ! はぁ~面白い……。私の真名忘れないでね?』
「わかった」
ペペと約束すると風が吹き抜け花弁が空に舞い散る。
「じゃ僕達は行くよ。またね」
『うん。またね!』
ペペと別れダンジョン脱出用の転移結晶のアイテムを使いダンジョンを出るとそのままファルトリアに戻る。一日しか離れていないのに久しぶりに来たような感じがした。
「うーん! 久しぶりのファルトリア! 日曜の昼下がりだから人多いね」
「だね。この後、ギルド行ってジョブクエ受ける?」
「うーん。今回はいいや。いくらゲーム内で寝れるとは言え、兄貴疲れていると思うから、今日はログアウトするよ」
「僕は平気だけど……」
夏樹は僕の背後に周り両肩に手を置く。
「ログアウトしたら分かるよ」
僕は言われるがままにログアウトする。
意識が現実に戻りヘッドギアを外すと一気に疲れが押し寄せ起き上がる気力すらなくなった。
ガチャっと扉が開き夏樹が入ってくる。そのままベット端に座る。
「兄貴大丈夫?」
「無理……動きたくない……」
「ゲーム内で初めて寝た人が通る道だから、今日はもう寝たら? 明日から仕事でしょ?」
「そうするよ……」
壁の方に身体を向け瞼を閉じる。
「兄貴、おやすみ~」
喋るのも億劫になった僕は手を振って返す。
夏樹が扉を閉める音が聞こえ静かになると僕はすぐに眠りに就いた。




