第58話
「ここ、は……?」
目を覚ますと知らない天井が視界に入った。
体を起こし周りを見てもベット以外家具は無く全体的に青白い部屋だ。
ベットから降り窓に近づき外の景色を見ると妖精の花園が一望できる。
ここって女王の城だよな。
確か……妖精の村の外で寝ちゃったのは覚えている。で、目を覚ましたら城の一室にいると。
誰かが運んでくれたのかな?
そんなことを思っているとガチャっと扉が開く音がし振り返る。
「兄貴! やっと起きた!」
部屋に入ってきたのは装備がボロボロになった夏樹だ。
僕は夏樹に駆け寄る。
「装備がボロボロだ……かなり無茶したの?」
「無茶っていうか……女王が張り切り過ぎちゃって、一体ずつの予定が最終的には三体同時に相手することになったんだよ……もうしばらくはイビルアイヴィ見たくない……」
でも、と夏樹は続ける。
「そのおかげでちゃんと目標は達成したぜ!」
僕は夏樹のステータスを確認するとレベルは50に到達していた。
ていうことはカンストさせるまでずっとイビルアイヴィと戦っていたと。それも夜通しで。
女王も女王だけど、それに付き合う夏樹も頭が可笑しいと思ってしまった。
「色々言いたいことはあるけど、とりあえずカンストおめでとう」
「サンキュー兄貴! てか、兄貴もめっちゃレベル上がっている何かした?」
「え?」
自身のステータスを確認するとレベルは45まで上がっていた。
最後にステータスを確認した時はレベル38だったけ? てことは、7レベも上がったってことだな。
夜通しで妖精達の手伝いをしたぐらいだけど、それかな?
「妖精達が困っていることを手伝ってただけだけど……」
「あ~それだな。知らないうちに妖精達の依頼クエストをやってたんだよ兄貴は。レベルが7も上がるってどんだけの数をこなしたんだよ……」
「うーん。無我夢中でやっていたから詳しい数はわかんないかな」
「あはは……流石兄貴だわ……」
夏樹に呆れた表情をされた。
「あ、そうそう。兄貴、そろそろ一日経つからここから出れるよ!」
「そうなんだ。じゃあお世話になった女王に挨拶してこう」
「だね!」
女王がいる部屋まで道を知っているとのことで夏樹に案内してもらった。
廊下を進み大きい扉の前で夏樹は止まり、扉をノックするとギギギと音を立てながら勝手に開いて行く。部屋にいた女王は植木鉢に水を上げていた。
『お主たちか。我に何か用か?』
「僕達そろそろ帰ろうと思いましてその挨拶に伺いました」
『おお、そうか。そのリングでいつでもここに来れるようにしておる。いつでも来るがいい。お主たちなら大歓迎だ!』
「そんな機能があったんだ……。えっと、色々とお世話になりました」
「お世話になりました!」
お礼も言い僕達は女王の部屋を去って廊下を進み城を出て橋を渡った。
「あ、そうだ。少し立ち寄りたい所があるんだけどいい?」
「妖精達のところ?」
「あ、うん。どうしてるのか気になってな」
「了解。場所分かる?」
「うん」
僕は記憶を頼りに道を進んでどうにか村に辿り着けた。
妖精達は楽しそうに村を飛び交っていた。
『あ、ウィルだ!』
『ウィルだ! 遊ぼう!』
『遊ぼう! 遊ぼう!』
僕の姿を見た妖精達が一気集まってくる。
「ご、ごめんね! 今日は遊べないんだ。僕達帰るからさようならを言いに来たんだ」
『ウィル帰っちゃうの?』
『嫌だ! もっと遊んでよ!』
『もう会えないの?』
僕は首を横に振った。
「女王がいつでも来れるようにしてくれたからまた会えるよ。だから、その時に遊ぼうね」
『わかった! 約束だよ!』
『約束! 約束!』
「わかった。約束だね」
僕と約束を交わすと妖精達は離れていく。
それを見送ったあとペペの家に向かう。家に着き扉をノックするが返事はなかった。留守なのかな?
僕は近くを飛んでいた妖精に尋ねた。
「妖精さん。ペペの居場所って知ってるかな?」
『ぺぺってだれ?』
妖精の答えに僕は動揺する。
「え……この家に住んでいる妖精の事なんだけど……」
『その家はペシェの……あ! 今の忘れて! ぺぺならあっちの大きい木の所にいたよ!』
妖精はそれだけ言って慌てて立ち去っていく。
「兄貴、きっと訳があるんだよ。本人に直接聞きに行こう?」
「そ、そうだな……」
僕達は妖精が行っていた方に進んでいくと木の枝に座っているペペを見つけた。




