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バグから始まるVRMMO活動記  作者: 紙紙紙
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第56話

 女王は旅館の外へ出ると近くの森の中に入っていく。

 開けた場所に着くと女王は立ち止まり地面を杖で叩くと魔法陣が浮かび上がるとそこからイビルアイヴィが現れた。


『こ奴を無限に湧かせる。さすればレベルは上がるだろう。かなり苦行にはなるがどうする? 人の子よ』


 イビルアイヴィは強い。その分経験値は多く貰える。女王が考えた案は良いと思うが危険すぎる。

 だけど、決めるのは夏樹だ。僕は夏樹が選んだことに付き合うだけだ。


「それで、お願いします!」


『よく言った! 人の子よ!』


 夏樹は鞘から刀を抜きイビルアイヴィに歩いて行く。

 僕もついて行こうとすると夏樹が振り向き僕に言う。


「兄貴、ここは俺だけでやらせて。あいつを一人で対処出来れば強くなれる気がするんだ。だから……」


 僕は無言で拳を突き出す。


「怪我だけはするなよ。頑張ってこい夏樹」


「おう!」 


 夏樹も拳を突き出し、僕の拳に合わせてから夏樹は駆け出した。

 僕がパーティーを解散させ部屋に向かうと女王が呼び止める。


『見て行かなくて良いのか?』


「ここにいたら、手伝ってしまいそうで……夏樹の事お願いします」


 僕は女王に頭を下げてから歩き出した。

 廊下の窓から見えた光る花が気になり部屋には戻らず外に向かった。


「綺麗だな……」


 石が敷かれている道を進んでいくと一面に光る花が咲き誇っていた。

 僕は花に近づいて鑑定した。


 光草……夜になると光りだし道を照らしてくれる花か。ここにしか咲いていないらしい。

 ハウジングの庭にでも植えてみたいな。流石に無許可で摘んだら怒られるよな。女王に相談してみよう。


 そんなことを思いながら腰を下ろし空を見上げた。

 雲一つない夜空に半分欠けてる月が浮いている。

 召喚獣達にも見せたくて戻した召喚獣達を再召喚する。


「ガウ!」


 召喚したビャッコに凄い勢いで突撃され僕は仰向けに倒され顔を舐め回された。 


「ビャッコ、いい加減に……!」


「ガウ?」


 ビャッコを引き剥がして叱ろうとするとこてっと頭を傾げる姿に叱る気も失せてしまった。


「舐め過ぎだよ……ビャッコ」


「ガウ!」


 僕が顔を拭くとセイリュウ、スザク、ゲンブは定位置につく。

 ビャッコを膝の上に乗せ夜景をしばらく楽しんだ。


「ガウ?」


「どうした?」


「チュン!」


「ギャア!」


 突然スザクとセイリュウが飛んでいき、その後をビャッコがついて行く。

 急いで立ち上がり召喚獣達の後をついて行くとそこには泣いているピンク色の妖精が座っていた。

 妖精は僕の姿を見た途端、召喚獣達の後ろに隠れる。


「大丈夫。なんもしないよ」


『……嘘。人は嘘つきで意地悪だ! ってみんなが言ってたもん……』


 どう言おうか迷っていると妖精から腹の虫が鳴り響く。

 僕はインベントリから蜜柑を取り出して皮を剥いていると妖精が興味津々に見てくる。

 一粒差し出すが妖精は警戒して食べようとしない。


「ギャア!」


「あ、こら! 勝手に食べるな!」


「チュンチュン!」


「待てって、お前らの分もちゃんとあるから!」


 仕方なく最初に剥いた蜜柑を召喚獣達にあげ、新たにインベントリから取り出し皮を剥く。

 本当に蜜柑好きだよな。あ、そうだ。庭に蜜柑の木に植えるのもありだな。アテムアさんに相談してみよう。

 剥き終わると妖精は僕のすぐ近くに移動していて、手元をじっと見ている。


「はい、美味しいよ」


 妖精は僕の顔と蜜柑を交互に見てから両手で一粒を抱きかかえ少し離れた所へ飛んでいきそこで食べ始める。


『んん?!』


 妖精は凄い勢いで食べ終え僕の方見てくる。


「まだあるから、こっちで食べよう」


『うん!』


 妖精にも蜜柑を上げみんなで食べた。まぁ僕はほとんど皮を剥いているだけであんま食べてないけどね。


『ごちそうさまでした』


 そう言う妖精の口周りをインベントリから取り出した布で綺麗に拭いてあげる。ついでに、召喚獣達のも拭いた。


『ありがと……あなたは優しいんだね』


「どうかな。君を油断させて捕まえるかもしれないよ?」


 妖精は目をパチクリさせて驚いた後から笑いだす。


『嘘! この子たちを見ていればわかるもん! あなたが優しいってわかるもん!』


 妖精の言葉に召喚獣達は頷く。

 ちょっと照れ臭くなり僕は立ち上がった。


「妖精さん。僕達はそろそろ帰るよ。はい、これ。良かったら皆で食べて」


 インベントリから蜜柑を数個置いて行く。


「あ、それと妖精さん。良い人もいれば悪い人もいるから簡単に人を信じちゃだめだからね」


 それだけ言って僕は旅館がある方に歩き出す。


『待って!!』


 妖精は大声で僕を呼び止め、思わず足を止め振り返ると妖精は何かを決意したような表情をしていた。



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