第54話
僕達は女王が急遽建てた周りの風景と不釣り合いの豪華な日本旅館の一室に案内され、そこでのんびりとお茶を飲んでいる。
夏樹は内装が気になるのか散策しに行っていて、召喚獣達は疲れたのか既に敷かれている布団の上で寄り添って寝ている。見てて癒されるな。
「入るぞ、勇者よ!」
僕が許可をする前に扉をスライドさせメフィストが入ってくる。
もうこいつには何を言っても無意味なんだなと思い気にせずお茶を啜った。
「何をしているんだ勇者よ?」
「何って、特には何もしてないけど。メフィストはなんか用なの?」
「我か? 我はそろそろ行こうと思ってな。それの挨拶に来たまでよ。ぶははは!」
「しっー! 寝ているから静かに」
メフィストは大声で笑いだすから急いで口を塞ぐ。
「おっと、すまない勇者よ。ふむ。では我は行こうとしよう」
メフィストはくるっとその場で回る。
「今度は是非とも全力の死闘をしようではないか、勇者よ」
「え、丁重にお断りさせて頂きます」
「そう言うと思っていたぞ勇者よ! ぶははは!」
メフィストは体を蝙蝠に変え窓から出て行く。
「ガウ……?」
十中八九メフィストのせいで目を覚ましたビャッコはヨタヨタとこっちに歩いてくる。
僕はゆっくりとビャッコを抱き上げ椅子に座り、ビャッコを膝の上に乗せ優しく撫でる。
窓越しに景色を眺めていると廊下からドタバタと足音が聞こえてくる。
そのせいで召喚獣達は目を覚ましてしまった。
「兄貴ーー!! ここ、温泉ある!!」
どうやら騒音の原因は夏樹だった。
目を覚ましたゲンブ、スザク、セイリュウは定位置に移動してきて器用に眠った。
「兄貴、温泉が……ってなんか凄い光景なんだけど……」
「ね。夏樹スクショ頼める?」
「はいはい」
夏樹に撮ってもらっていると扉が開き、女王が入ってくる。
『お主ら、何をしているのだ?』
「兄貴の撮影会?」
「誤解を生みそうな言い方をするな。器用に寝ているこいつらのことをスクショしているだけです」
『……お主たちの事は触れないでおこう。それよりもここには温泉が存在してな、温泉に浸かって疲れを取ってはどうだ?』
どうして女王はここまでしてくれるのか僕は尋ねる。
「それは有難い話ですが、何故女王はそこまでして下さるのですか?」
『き、気分だ。気にするのではない人の子よ! 厚意は素直に受け取ればよいのだ! さっさと行くがよい!』
そう言われ僕達は急いで部屋を出て温泉に向かった。
夏樹に案内され脱衣所に入り、服や装備を脱ぎ、籠に入れてから温泉に向かった。ちなみに服を脱ぐとアンダーパンツだけの状態になるようだ。
温泉は露天風呂になっておりかなり広かった。
「すっげぇ広い!」
「夏樹、こいつら洗うの手伝って」
「はーい」
召喚獣達を夏樹と協力して洗う。泡まみれで可愛さが倍増した召喚獣達をスクショしていく。うん、あとでスマホにデータを送らなきゃだな。
召喚獣達が終わり、僕と夏樹も洗い終わって温泉に肩まで浸かった。
召喚獣達もプカプカと湯舟に浮かび、満足そうな表情をしている。
「はぁ~……気持ち良いなぁ~。まさかゲームの中で温泉に入れるなんて思わなかった」
「温泉の街クロノグルにもあるよ」
「クロノグルって……最初に拠点を選ぶ時の街の一つだったよな。温泉の街なんだな~。ファルトリアにしか興味湧かなかったから調べてなかった。そっか~いつか行ってみたいなぁ~」
「その前に大会があること忘れないで兄貴」
「わかってるよ~」
そう言いつつ僕は大会の事は頭の隅に追いやり、今だけ忘れて温泉を満喫することにした。




