第52話
『こ奴らなら我を楽しませてくれると言ったのはお主ではないか。だから攻撃を仕掛けたのにこれでは』
「まぁまぁ。そう拗ねるではない女王よ。勇者は「彼らの罪は私が甘んじて受けます」と言っているのですから、それを利用してはいかがでしょう女王よ」
『ほう。それは妙案だメフィストよ。そう言うことだ人の子よ。我と戦い、我を楽しませることができれば全てを許そうぞ!』
行く末を見守っていたのだが、どうやら女王様と戦うことになってしまった。
正直に言うと戦いたくないが、あっちはやる気だし、断れる雰囲気でもない。
それで許されるならやるしかないか。
「わかりました」
『おお! そうかそうか。 ならば相応しい場所を用意しようぞ!』
女王は杖を取り出しコンコンと地面を叩くと湖の上に城へ続く結晶の橋が現れる。
『さぁついてまいれ!』
召喚獣達を定位置に戻し、僕達は女王の後を追う。何故かメフィストも鼻歌を歌いながらついてくる。
そんなメフィストに僕は尋ねる。
「なんで、ダンジョンボスのメフィストが別ダンジョンにいるんだよ?」
「そこを尋ねるとは、流石だ勇者よ! ぶははは!」
メフィストは口を開けると少し止まり口を閉じた。これは、あれだな言えないことだな。
「ふむ。勇者よ、その質問には我は答えることが出来ない!」
「そうですか……」
「時期が来ればいずれわかることだ勇者よ! ぶははは!」
それ以降誰も何も言わず歩き城に着き大きな扉が自動で開く。
入ってすぐに特大の結晶のシャンデリア。廊下も壁も天井も宮殿にありそうな柱も照明も花瓶の花も家具も何もかも結晶で僕は内装に圧倒されていた。
その時、夏樹が耳元で呟く
「女王の城に入ったプレイヤーって今の所いないんだよ。俺達が初めてだね兄貴」
「へぇーそうなんだ」
『この城には我自ら招いた者しか入れぬぞ。光栄に思え人の子よ』
僕と夏樹の話し声が聞こえたのか先頭にいる女王は振り返り口角を上げニヤリと笑う。
そして、城の廊下をしばらく歩き円形状の広い場所に着く。天井も高いから召喚獣達は自由に動けそうだな。
女王は反対側に移動する。
その間に僕は夏樹に伝える。
「夏樹、ここは僕一人でやるよ」
「兄貴なら言うと思っていたよ。俺も戦いたかったなぁ~。兄貴負けんなよ!」
「わかってる。ありがとう夏樹」
そう言い夏樹は観戦席に既に移動しているメフィストの隣に行く。
『準備は良いか? 人の子よ』
僕は頷く。
『手を抜くなのどするのではないぞ! 本気で挑んでまいれ人の子よ!』
女王は杖を掲げると僕の頭上に黒い球体が降ってくる。
僕は敏捷力が上がるウィンドアップを唱え避ける。
黒い球体は地面に当たると地面を大きく沈める。重力なのか? 体が急に重くなったのは重力のせいか。厄介だな。
『この雨を避けてみろ人の子よ』
女王は更に黒い球体を降らしてくる。
僕は知力が上がるウォーターアップを使い魔法の威力を上げる。
そして、MPを半分使い四種類の魔法を展開する。
「フレイムソード! アクアランス! ロックフィスト! ストームアロー!」
炎の剣と水の槍、岩の拳で黒い球体を迎撃する。黒い球体は魔法が当たると消滅した。よし、行けるな。三つの魔法で十分だと思い風の矢を女王に向けて放つ。風を切るように飛翔するが、見えない力で逸らされた。
『ふん、そんな攻撃我には――っつ! 何!?』
逸らしたと思っていた風の矢は軌道を変え再び女王を狙う。女王は咄嗟に避け難を逃れた。
だが、うっすらと女王の頬に傷がつく。
『ほう。我に傷を負わすとは、百年ぶりぞ。人の子よ!』
その時、観戦席にいるメフィストが大声で叫ぶ。
「女王よーー! そんな前からこの世界はないぞーー!」
『黙れメフィスト! 設定なのだから仕方ないではないか!』
「それは仕方ないな! ぶははは!」
やる気が削がれることを言わないで欲しいのだが……
「兄貴ーー!! 今だよ!!」
「お、おう……」
リングのおかげでMPは回復し再び四つの魔法を再展開。
「ガーーーウ!」
「チューーーン!」
「ギャーーーア!」
「カーーーメ!」
僕に呼応して召喚獣達もそれぞれの魔法を展開する。おかげでこの空間は僕と召喚獣達の魔法で埋め尽くされた。
『やらせるか!』
女王は対抗して部屋全体に重力を掛ける。
そのせいで、魔法は解かれ、飛んでいるスザクと走っていたビャッコの動きが止まり、僕も立っていられず膝をつき四つん這いになる。
左腕に巻き付いているセイリュウと頭の上にいるゲンブは地面に落ちる。僕は奥歯を噛みしめ女王を見た。
『さぁ耐えてみせろ、人の子よ!』
更に重力が増し僕は地面に這いつくばってしまった。
『避けれるものなら避けてみろ! 人の子よ!』
再び黒い球体が頭上に現れ、僕にゆっくりと落下してくる。




