第51話
夏樹に森の中を迷子になると言われ僕達は湖の外周に沿ってのんびり歩くことにした。
ちらちらとセイリュウは湖を見ている。泳ぎたいのかな?
あの湖で遊ばせていいのか夏樹に尋ねた。
「あのさ、夏樹」
「ん?」
「あの湖って入っても平気なの?」
夏樹は頭の後ろで手を組み空を見ながら答えた。
「城の近くまで泳いでいったプレイヤーが、湖の底まで何かに引っ張られ溺死したのは知っているけど。あ、この話はそのプレイヤー自身が言ってたことね。それがあって訪れた際は決して湖に入らないことにはなっている」
「そ、そうなんだ……」
話を聞いて僕は少しだけ恐怖を感じた。
このゲームはリアルに近づけている。その為そのプレイヤーは溺死を疑似体験したと思うと……
「あくまでプレイヤーの場合だからな。召喚獣が入ったらどうなるかは分からないか」
「……そこまで言ってないのに分かっている感じ怖いんだけど」
「兄貴とセイリュウの動きを見てたら誰だってわかるよ!」
夏樹は当たり前のことのように言い切る。
「まぁ、浅いところなら平気だと思うよ」
「セイリュウ、湖に入りたい?」
セイリュウに尋ねると湖と僕の顔を交互に見たあと、ふるふると震えながら頷いた。
「なんで震えてんだよ。一緒に遊ぼセイリュウ」
「ギャア!」
そう言うとセイリュウはパーっと花が咲いたような笑顔になる。
僕は湖に近づきセイリュウを水面に降ろすとはしゃぎながら泳ぎ始める。
そんなセイリュウを近くにある座れるぐらい大きい岩に腰を下ろし眺めることにした。夏樹は僕の隣に座る。
僕はその間に自分のステータスを確認する。
ダンジョンに入る前にセイリュウが敵モンスターの分とイビルアイヴィを倒したことでレベルが38まで上がった。40になれば新しい魔法が使えるな。
次に使える魔法を調べていると僕はあることに気づき確かめるために召喚する。
「来い、ゲンブ」
「カメ!」
召喚するとゲンブは頭の上に乗っかる。
「お、成功した」
「カメ?」
「なんでもない」
僕はゲンブの頭を撫でる。
隣にいる夏樹を見ると目を大きく見開いていた。
「な、なんでゲンブ召喚してんの? 見習いの制限でフィールドやダンジョンだと一体しか召喚出来ないって……」
「この場所、なんかフィールド扱いじゃなかったみたいだから、試しにやったら出来た。夏樹はしらなかったの?」
「知らないよ。そんな情報どこにもなかったし。はぁ……兄貴と居ると面白いことしか起きないなぁ
~。ゲンブが出せるなら、他の二体も召喚したら?」
「そうだな」
僕はスザクとビャッコも召喚して全員が揃った。
「あっちでセイリュウが遊んでいるから行っておいで」
召喚獣達はセイリュウにもとへ向かい遊び始める。
セイリュウとビャッコは水を掛け合い、ゲンブは水に浮き、その甲羅の上にスザク座っている。
そんな様子を眺めているとひそひそ声が聞こえてくる。
『楽しそう! 僕達も遊ぼう!』
『遊ぼう! 遊ぼう!』
森の中から沢山の妖精が召喚獣達の周りに集まりだす。
僕は駆け出そうとするが夏樹に止められる。
「兄貴、あいつらは特に危害とかないから。逆に俺達が行った方が混乱起きるから待機」
「……わかった」
僕は焦る気持ちを抑え座ることにした。
「ギャア!」
「ガウ!」
『キャハハ! もっと遊ぼう!』
どうやらただ遊んでいるだけのようだ。その様子をみて僕は安心した。
『ほう。珍しい気配がすると思ったら、人の子か』
腰まで伸ばした緑色の髪にスラっとした体形に、この世とは思えない絶世の美女が現れると急に体が重くなり僕と夏樹は地面にひれ伏す形になる。僕はどうにか顔だけ上げる。
僕達の異変に気付いた召喚獣達がこちらに向かって魔法を放つ。美女は華麗に避け僕達から離れた。
そのおかげなのか体が軽くなり急いで召喚獣達に駆け寄る。
「皆大丈夫? 夏樹は?」
召喚獣達は頷き、それぞれの定位置につき、それぞれの魔法を発動している。
「俺は平気だけど、まさか女王自らお出ましかよ」
「女王? ここの?」
「そう」
夏樹は刀の柄に手を添える。
そんな臨戦態勢の彼らに僕は言う。
「皆魔法解いて、ついでに夏樹も構えを解いて」
「え?! なんで!?」
「いいから!」
夏樹と召喚獣達は渋々といった風だが解いてくれた。
女王は圧をかけゆっくりと近づいてくる。
召喚獣達に離れてもらい僕は片膝を頭を下げた。
『なんの真似だ。人の子よ』
「この妖精の花園の女王様と知らず、私の召喚獣達が攻撃してしまい大変申し訳ございませんでした。ですが、彼らは私の身を案じての行動なのです。どうか彼らを罰さなで頂きたい。彼らの罪は私が甘んじて受けます」
僕は誠心誠意に謝罪をした。もうなるようになれだ。
夏樹も片膝をついて頭を下げた。
すると、女王は深い溜息を溢す。
『…………はぁ、メフィストよ。話が違うではないか』
「え?」
僕は思わず頭を上げると女王の隣には特徴的な仮面を付けている紳士服のメフィストが立っていた。
「なんで、メフィストが?」
「久しいな勇者よ! ぶははは!」
状況が全く呑み込めず僕は固まった。




