第5話
散策を再開した僕はなんとなくステータスに視線を送るとレベルが5になっていた。先程のコボルト達で上がったようだ。
スキル欄を見ると使える魔法も増えていた。確認すると各属性の壁を作り出す魔法が使えるようになった。
ゲンブが使った水の壁のことなのかな? 試さないとな。
大分ゲンブとの連携取れてきたし他の三匹も連携を取れるようにしないと。
僕は視線をゲンブに向けて言う。
「あのさ、ゲンブ」
「カメ?」
「他の三匹とも連携取りたいからさ……交代してもいい?」
「カメ!」
僕が尋ねるとゲンブは頷き頭から浮かび上がり地面に降りる。微笑みながら頭を撫でた後、ゲンブを戻す。そして、一旦考え込む。
今は森の中。このゲームでは木々を切り倒したり、燃えたりしてもすぐに直るなら構わないけど、どうなるかは調べてない。なら、消去法でビャッコかな。
「来い、ビャッコ!」
MPを全消費して白い虎のビャッコを呼び出す。
現れたビャッコは足元で喉を鳴らし頭をすりすりしてくる。
僕はビャッコを抱き上げた。
「よろしくなビャッコ」
「ガウ!」
ビャッコは器用に前足の肉球で顔に押し付ける。うん、可愛い。
僕はビャッコを地面に置き、森の中を歩き始めた。後ろからビャッコがついてくる。傍からみたら子猫にしか見えないけど、これでも召喚獣最強枠だ。詐欺だよな。
散策しながら敵モンスターを倒し、レベルは10まで上がった。そして新たに魔法も覚えた。
覚えた魔法はステータスを上昇させる魔法、いわゆるバフ系だ。ファイアーアップは攻撃力。ストーンアップは防御力。ウィンドアップは敏捷力。ウォーターアップは知力が上がる。
日が沈み始め森が暗くなってきた。今日はこれで切り上げようと思い足を止めると突然ビャッコが前方を見ながら唸り出す。
「どうした……ってどうしたんだビャッコ!?」
「ガウガウ!」
急に僕の裾を咥え茂みに誘導し始める。ビャッコの必死な顔に僕は従った。
「ここに隠れたらいいのか?」
「ガウ!」
僕の言葉を理解しているのかビャッコは首を縦に振た。言葉が理解できるってすごいな。僕も早く言葉がわかるようになりたいなぁ。
そんなことを思っていると前方からドン、ドンと重たい足音が聞こえてくる。茂みから足音の正体を見るとそこには歪な形の棍棒を持った、片角しかない三メートル程の人型の敵モンスター――オーガだった。
僕はオーガのレベルを確認すると声を殺して静かに驚愕した。
オーガのレベルは50。このゲームの上限に達している敵モンスターだ。
なんでこんな強敵モンスターが街の近くにいるのかはわからないけど、今優先することは見つからないでやり過ごすことだ。
オーガの足音がだんだんと遠ざかっていくにつれ僕は安堵する。身構えているビャッコも警戒を解いていた。
そんなビャッコの頭を撫でながら小声で言う。
「ビャッコ、静かに離れるよ」
ビャッコは鳴かずに頷いた。
僕とビャッコはオーガを視界に入れながら静かに後ろに下がる。その時、足元からピキッと音が鳴る。
足元を見ると枝を踏んでしまったようだ。
僕は下げた目線を上げるとオーガと目が合ってしまった。オーガの目は赤く充血していてた。目がいっちゃている!
僕はビャッコを抱え必死に走った。
「グラァァァァアアアア!!」
オーガは雄叫び上げドシドシと足音を立てながら追いかけて来た。
必死に走ったがステータスの差でオーガとの距離がだんだんと縮んでくる。すると、抱き抱えているビャッコが腕から抜け出しオーガに立ち向かった。
「ビャッコ……!」
足を止めてビャッコを呼ぶとちらっとこちらを見た後、ガオオオ!と鳴くと地面が盛り上がり土壁が出来、オーガを閉じ込める。
僕は小さくても勇ましい後ろ姿のビャッコに近づく。
「ビャッコ、今のうちに逃げるよ」
ビャッコは首を横に振った。
「レベル差もあるんだよ? 流石に勝てないって、ここは一旦引いて――」
「ガッウ!」
ビャッコは僕の言葉を若干怒気を含んだ鳴き声で遮る。なんでビャッコがここまで戦おうとするのか僕には分からない。ただ単に好戦的な性格かもしれない。
ビャッコは僕の言葉を理解しているのに……ビャッコの言葉が分かればいいのにな。
僕はステータスとアイテムを確認した。
HPとMPは全快。アイテムはマナポーションだけ……ポーションは道中で使ってしまってもうない。一瞬で街に戻れる転移結晶のアイテムがあるけど、戦闘中の為使えない。覚悟決めるか。
「行ける所までやるよ、ビャッコ!」
「ガウ!!」
ビャッコは嬉しそうな表情をする。
その時、閉じ込められていたオーガが土壁を壊し顔を覗かせ、更に土壁を壊し抜け出した。
そして僕は覚えたてのバフ系の魔法を全て使う。ストーンアップ以外は効果が弱くなってしまうがないよりかはマシだ。
「ビャッコ行くよ!」
「ガウガウ!!」