第49話
イビルアイヴィは女性を口元の前まで運び始める。
距離もあって間に合わないと思った僕はウィンドアップを使い敏捷力を上げる。
「夏樹!」
「わかってる! 【一閃】!」
スキルを使って僕よりも速くなった夏樹は一気に近づき蔦を断ち切る。
「きゃああああ!」
断ち切られた事で落下する女性を僕が受け止める。
落下速度も加わって重くなり体勢を崩しそうになるがどうにか踏ん張った。
「怪我ないですか?」
「は、はい……」
受け止めた女性を立たせ、状況が飲め込めず立ち止まっている人達に大声で言う。
「新しいのは僕達が引き受けるのでそっちをお願いします!」
「お、おう! いつも通りで行くぞ、皆!」
「「おう!」」
右手にバックラーを装備した男性がいち早く我に返り他のメンバーを指示をする。
僕の傍にいる女性は頭を一礼してからメンバーの下へ向かった。
「兄貴! 付与魔法を!」
「わかった!」
イビルアイヴィの蔦の攻撃を捌きながら夏樹は付与魔法を要求する。
何か考えがあるのだろうと僕は付与魔法を唱えると刀身から黒い風が吹き荒れる。
夏樹は刀身をみて魅入られていた。
「兄貴、めっちゃかっこいいんだけど!」
「そんなのいいから、前をみろ夏樹!」
「え? おっと! あぶねーな!」
襲い掛かる蔦をギリギリで躱し断ち切る。そして、夏樹は蔦を切断しながらイビルアイヴィに近いて行くのが途中まで目で追えていたけど速過ぎて見失った。
切れば切るほど敏捷力が上がるスキル【剣舞】とセイリュウ有のウィンドアップが重なったのが原因だろ。
唯一わかっているのはイビルアイヴィの切られた蔦が空中に舞っているぐらいだ。
「ギャアーーー!!」
僕の左腕に巻き付いているセイリュウから薄い緑色の光が発せられると、イビルアイヴィの頭上に竜巻が現れ夏樹ごと包まれた。
僕は急いでスキルを確認した。セイリュウが使ったのは風属性の拘束系魔法ストームロックだとわかった。竜巻の内側ではダメージがないことに僕は安堵した。
余裕が出来た僕はもう一体と対峙しているパーティーを見ると四人はボロボロになっていたがどうやら倒したみたいだ。
視線を戻すと竜巻とイビルアイヴィは消え失せていた。あれ夏樹は?と思っていると上空から叫び声と共に夏樹が落ちてくる。
僕は操作系の魔法を使い風を操りゆっくり夏樹を降下させる。
「サンキュー兄貴!」
「夏樹、怪我無い?」
「おう! それよりさっきの竜巻は兄貴の魔法? ダメージ無いし足場にもなったからすっげぇ助かったよ!」
「あの竜巻はセイリュウが使ったんだよ。お礼を言うならセイリュウに言って」
「え、そうなんだ。サンキュー、セイリュウ!」
「ギャア」
夏樹に頭を撫でられセイリュウは嬉しそうだ。
四人組がこちらに近づいてくることに気づいた僕は振り向く。
「皆さん、大丈夫ですか?」
そう尋ねると先頭にいるバックラーを付けている剣士の人が答える。
「ああ、なんとかな。あんたらが来なかったら全滅してたわ。超助かったぜ! 俺はヴェスナーだ! このパーティーのリーダーをしている。よろしくな!」
「僕はウィリアムです。こいつが弟のナツキと、僕の召喚獣のセイリュウです」
「ナツキです」
夏樹は簡単に自己紹介するとまたセイリュウの頭を撫でた。
「よろしくお願いしますヴェスナーさん」
「ヴェスナーでいいよ。俺も呼捨てにするからさ。ナツキはナツキでいいとして、ウィリアムか……ウィルでいいか?」
「知り合いにもそう呼ばれているので大丈夫です」
「了解! お、そうだ。他のメンバーも紹介するよ」
そうヴェスナーが言うとアサシンみたいな恰好した男性が前にでる。
「俺っちはセゾンっす! ウィルっち! ナツキっち! 本当に助かったっす! マジ感謝っす!」
ウィルっち……?
初めての呼ばれ方に僕は動揺した。
「悪いなウィル。こいつの癖みたいなものだからあんまり気にしないでくれ」
「う、うん」
次に茶色のローブを纏っている杖を持った男性が口を開く。
「ウィリアムさん、ナツキさん。本当ありがとうございました。二人が来なかったら、俺たち全滅でした……」
男性の顔はだんだんと悲しいそうな表情になっていく。
「俺の火魔法全然効かなくて……足引っ張っちゃって……俺……俺……」
「泣くなよヘスト。お前が悪いんじゃないんだからさ」
「そうっすよ!」
「うん、うん」
「皆……」
ヘストを囲んで励まし合っている。仲間思いなんだな。
その時助けた女性と目が合う。
「うちのヘストが泣き虫でごめんなさい。私はクシュ。さっきは助けてくれてありがとう」
「いえいえ。間に合ってよかったです」
ひと通り自己紹介が終わり、四人組はイビルアイヴィの事を知らなかったようで僕が知っている情報を夏樹の補足あり教えた。
「本当に色々とお世話になったわ! あんたらはこのまま進むのか?」
「えぇ。皆さんは?」
「俺たちも先に進めたいけど、アイテムをほとんど使っちゃったから一旦戻るわ。あ、フレ申請していい?」
僕は頷きヴェスナーとフレンドになった。セゾンにヘスト、クシュの三人ともフレンドになり、四人は転移結晶のアイテムを使いダンジョンを脱出する。
「夏樹はフレンドになんなくてよかったの?」
「おう。それよりも、先に進もう兄貴!」
「はいはい」
「ギャア!」




