第48話
昼三時手前で起きた夏樹に催促され早々にログインした。
宿屋を後にし馬車乗合所に進もうとした時夏樹が言う。
「兄貴、今回は急ぎたいから俺の転移結晶のアイテムを使ってダンジョンの近くまで転移するけどいい?」
「構わないよ」
「サンキュー兄貴! 今度ゆっくり旅しよう兄貴。 じゃあ転移するよ」
僕が頷き返すと夏樹が転移結晶のアイテムを使う。すると視界が一瞬暗転し、気づいたら色とりどりの咲き乱れる花に囲まれていた。
「ここは?」
「ここはレベル41から行ける《妖精の花園》って所のダンジョンの近くで、あそこの薔薇が絡まっているアーチを潜ればダンジョンなんだけど」
そう言い夏樹はアーチを潜ろうとするが見えない壁で阻まれて先に進めないようだ。
「てことで、入れるまで一旦レベル上げします! ちなみにここの敵は火か風が弱点だから」
「了解」
火か風……最近はスザクを召喚しているから今回はセイリュウにしようかな。
そう思い僕は詠唱する。
「来い、セイリュウ!」
召喚されたセイリュウはいつも通りに僕の左腕に巻き付く。
「よろしくな、セイリュウ」
「ギャア!」
力強く返事をするセイリュウの目にはやる気に満ちていた。僕も頑張らないとな。
「ギャーア!」
と思っていた矢先、セイリュウの体から薄い緑色の光が発せられると僕の周りに風の矢が生成され四方八方に飛翔していく。そして、至る所から敵モンスターの断末魔が響き渡る。
「誰だよ横取りした奴は!」
「見つけだして運営に報告してやる!」
「風を使う魔法職を探せーー!!」
ついでにプレイヤー達の怒号も響き渡った。
セイリュウに視線を向けると、セイリュウは視線を逸らした。
「兄貴、怒るのは後、マナー違反だけど今のでレベル上がったからとりあえずダンジョンに入ろう」
「わかった。セイリュウ、入ったら説教な?」
「ギ、ギャア……」
僕達は急いでアーチを潜った。そしてダンジョンに入るなりセイリュウの説教タイムが始まる。
終わったころにはセイリュウはしょんぼりしてしまい、僕のフードの中に隠れてしまった。ちょっと言い過ぎたかな?
「兄貴、流石に言いすぎだよ」
「うっ……やっぱり?」
「ちょっと先見てくるからその間にケアーしてよね」
夏樹はそう言い先を歩いて行く。
僕はセイリュウに対して優しい声で呼びかける。
「セイリュウ、もう怒ってないから顔を見せてくれる?」
フードの中でもぞもぞと動き左肩から恐る恐る頭を覗かせるセイリュウの下顎を僕は掻いてあげた。
セイリュウは気持ちそうな表情をする。
「セイリュウ、言い過ぎたよ。ごめんな」
セイリュウは頭を頬に押し付けて甘えてくる。
「ふふ。ありがとな、セイリュウ。夏樹先行ってるから僕達も行こう」
「ギャア」
セイリュウがしっかり左腕に巻き付くの確認して植物が覆い茂るダンジョンの中を進んだ。
少し進むと壊れかけの小屋から様子を伺っている夏樹がいた。
「夏樹お待たせ」
「兄貴、静かに」
僕は音を立てないように夏樹の隣に行き、様子を伺った。
そこには禍々しく鋭い牙が生えた大きな口が真ん中にある蔦が集まったような敵モンスターと四人組のパーティーが対峙していた。
「なに、あの敵モンスター……キモッ……!」
「あの敵モンスターは出現率が低いと言われているイビルアイヴィだよ。かなり強い分倒せば経験値とレアなドロップアイテムが手に入るんだ。あのパーティーの邪魔しちゃ悪いから俺達は別の道を行こう」
「了解。それじゃ僕達はあっちに――」
「きゃああああああ!」
別の道を行こうとした時、女性の悲鳴が聞こえ振り向くと女性は片足を別の方向から伸びた蔦に掴まれ宙ぶらりんになっていた。そして、ゆっくりと不快な音を立てながら二体目のイビルアイヴィが現れた。
対峙しているパーティーメンバーはどんどん顔が青白くなっていく。
「兄貴、流石にイビルアイヴィが二体はキツイ! 助けに行こう!」
「おう!」




