第45話
直ぐには来ないだろうと思っていたが、全然来る気配がない。
おかげでスザクとビャッコは寄り添って眠ってしまった。
そう言えば召喚獣達が眠っている姿を見たことないな。貴重な光景だしスクショするかな。どうせならゲンブとセイリュウも召喚して一緒に撮ろう。
僕はゲンブとセイリュウを召喚し、寝ているスザクとビャッコを起こさないよう寄り添ってもらう。
うん。可愛い。
あまりの可愛さに僕は色んな角度で撮りまくった。
「ウィルお待たせ! いや~アイリスが頑固で困ったよ……」
「私は別に! 頑固、じゃないです……」
ようやくアルナさんはアイリスさんを連れて戻ってきた。
僕は撮るのを止めてアイリスさんを見ると、彼女はこちらに指をさして震えていた。
「召喚獣が……四体、いる? あはは……夢ですよね? アルナ、頬を抓って欲しいんだけど」
「お、四体いる! 夢じゃないよアイリス! この二体もウィルの召喚獣なの?」
二人の反応を見て僕は言ってないこと思い出した。
「そう言えば言ってませんでしたね。亀の召喚獣がゲンブで、龍の召喚獣がセイリュウです」
「カメ!」
「ギャア!」
アルナさんとアイリスさんに二体を紹介するとゲンブとセイリュウは器用にお辞儀する。
「ゲンブ、に、セイリュウ……? それって、ゴッドクラスだよね? 他の召喚獣を合わせてゴッドクラスが四体って事? え、なんで四体も? しかも全部ゴッドクラス? 一体でも相当運がないと出ないのに? それが四体? そもそも召喚士は分かっている情報でも最大で二体だよ? それが四体? え?え?」
アイリスさんはあり得ない光景を目にしたのか気を失って倒れた。
僕とアルナさんは慌てて駆け寄り、アイリスさんを一緒に持ち上げソファーに寝かせる。
まさかこんなことになるとは予想外だ。
「すいません僕のせいで……」
アルナさんはセイリュウとゲンブの頭を撫でながら言う。
「いやいや、ウィルは悪くないよ。こうなるとは誰も予想できないよ。それにしても凄いね~。ゴッドクラスが四体もいるなんてね。無敵だね!」
「そうでもないですよ?」
僕はアルナさんに見習いの制限を説明した。
「召喚するのにMP全部使いますし、フィールドやダンジョンだと一体しか召喚出来ないんですよ。見習いが取れれば緩和されるんですけどね」
「へー。そうなんだ。じゃ早くジョブチェンジしなきゃね。あ、その時は私と模擬戦しない? ゴッドクラスが強いっていうのは知ってんだけど戦ったことないから、実際に強いのか知りたいんだよね~」
「あー……わかり、ました。僕でよければ」
本当は嫌だけど色々とお世話になっているアルナさんの頼みならと僕は承諾した。
「ありがとう! 楽しみにしているね!」
嬉しいそうにするアルナさんに僕は苦笑いをした。
「うぅ……ここ、は?」
その時気を失っていたアイリスさんが目を覚ました。
僕はアイリスさんに謝った後改めて召喚獣達を紹介する。
アイリスさんは一体ずつを恐る恐る手を伸ばし優しく撫でる。
「可愛い……」
アイリスさんは召喚獣達の可愛さに骨抜きになり表情が緩くなっている。
「アイリス、顔」
アルナさんに指摘され表情も戻すがまた緩くなる。動物が相当に好きなんだな。
しばらく撫でアイリスさんが満足した。そして、召喚獣達を戻し一緒にハウジングの下見しに行くことになった。
アルナさんが良い所があると先導して案内してくれた。しばらく長い坂道を登るとアルナさんは止まった。周りにはほとんどハウジングも無く人通りも少ない場所だ。ここなのかな?
「ウィル、振り返ってみて?」
僕は言われるがままに振り返ると、夜空に浮かぶ満月と満天の星々に、それらを反射してキラキラ輝く海の上に浮いているように見える街と個性豊かなハウジングエリアが一望できる光景に僕は息を呑む。
「凄いでしょう?」
「はい、凄いです……あの、素朴な質問なんですが、なんで周りにほとんどハウジングがないんですか?」
そう尋ねるとアイリスさんが答えてくれた。
「ここら辺一帯は金額が高いのと、大型のしか建てれないのです。そしてハウジングエリアの入り口からかなり奥の方にあって、掲示板が近くに無いからです」
「掲示板ってマーケットの、ですか? そんなのがあるんですね」
「えぇ。わざわざマーケットに行かなくてもいいのでかなり便利なんですが」
「それが近くにないんですね」
「はい」
マーケットはそんなに使わないし無くても構わない。大型のしか建てれないなら庭を大きくして召喚獣達を外で思いっきり遊ばせれるようにすればいいな。それに、何よりも人がほとんど居なくて静かなのも良いな。金額次第ではここにしようかな
僕は金額の事を尋ねるとギリギリで足りなくて僕は肩を落とした。
「あのウィリアムさん。お金貸しましょうか?」
「いや、流石に借りるわけにはいきませんよアイリスさん。お金貯めて改めて買いに来ます」
「わかりました」
近いうちに買いに来る事を誓いながら僕はこの夜景を瞼の裏に焼け付けてログアウトした。




