第42話
連休最終日、徹夜の影響で起きたのは夜六時手前。僕はむくりと起き上がり居間に向かった。
居間にはテレビを見てる父親と料理中の母親がいた。
「あら、起きたのね。料理運んでくれる?」
「うん。ふぁ〜……顔洗ってくる」
洗面所に向かい顔洗ってスッキリさせてから手伝う。
料理を運びながら僕は尋ねた。
「夏樹まだ寝てるの?」
「ん? 夏樹ならちょっと前にバイトに行ったわよ」
「え、そうなんだ……」
バイトあったのに夏樹は付き合ってくれたのか。
言ってくれればいいのに……今度埋め合わせしなきゃな。
夕飯も食べ終わり自室に戻った僕は時間をみて、少しなら出来ると思った僕はログインした。
噴水広場には今日で連休が終わるって言うのにプレイヤーでごった返している。僕はフードを被り噴水広場を離れた。
ログインはしたものの何しようかな。最近フィールドに出たりやらダンジョンへ行ったりして四匹と遊んでいないし、宿屋なら全員召喚出来るし、うんそうしよう。
僕は宿屋がある方に足を向ける。
「なんと美味な食べ物だ! ぶははは! 美味い! 美味いぞ!」
聞き覚えのある笑い声に僕は足を止め声の主を見ると、特徴的なお仮面を付けている紳士服を着ている人がいた。
あれって、メフィストだよね? なんで街にいるんだ? そもそもなんで周りの人たちは気づいていないんだろう……
どうせ聞いても制限で話せないっなるんだろうな。それになんか面倒事になりそうだしなんも見てないことにして宿屋に向かおう……
しばらく歩き宿屋に着いた僕は受付に向かう。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「一人で――」
「二人で頼む。なるべく広い部屋が好ましいぞ」
「え?」
僕は振り向くとそこには片手にティーカップを持っているメフィストがニヤリと笑っていた。
「お二人様ですね。お部屋は三一十室になります」
受付嬢はそう言いテーブルの上に部屋の鍵を置く。
「えっ!? 違っ――」
「ほら、行くぞ勇者」
メフィストは部屋代を払った後、僕をひょいっと持ち上げ階段を上り部屋に向かった。
「おーろーせーーー!!」
僕は暴れて抵抗するがうんともすんともしなかった。そのままの状態で結局部屋まで連れていかれた。
「痛っ!」
メフィストは僕をベットの上に放り投げた。
「ほうほう。なかなか良い部屋だ。我は満足だ! ぶははは!」
部屋の豪華さにメフィストは満足気味だ。僕はその隙に全員召喚する。
ここはフィールドではない為、見習いの召喚制限は無くなるから可能だ。
「来い、スザク! ゲンブ! ビャッコ! セイリュウ!」
召喚獣達は召喚されるとそれぞれの定位置につくとメフィストに対して威嚇し始める。
スザクは炎の剣、ゲンブは渦巻く水の槍、ビャッコは厳つい岩の拳、セイリュウは敵を射抜く風の矢を生成しいつでもメフィストに放てるようにしている。
ちょっと過剰と思ったが相手はダンジョンボスだ。
「ゴッドクラスがこんなにいるとは! なんと素晴らしい! 流石は勇者だ! ぶははは!」
「僕に何かようか?」
「ん? 用? 特にはない! ぶははは!」
えぇ……
「ただ、お主の気配を追って後を付けてみれば、我以外の者たちに後を付けられていたもんだから幻惑魔法で追い払っておいただけよ。声を掛けたのはたまたまだ! 感謝するがいい勇者よ! ぶははは!」
「え……後を付けられていたんだ、僕……みんな、魔法解いて」
召喚獣達は何でと言いたげな視線を向けてくるが、僕が大丈夫と言うと魔法を解いてくれた。
「メフィスト、ダンジョンボスに言うのも変だけど、なんかありがとな」
「ふむ。プレイヤーに礼を言われるのも悪くない! ぶははは!」
メフィストは窓を開けファルトリアの街の夜景を楽しんでいる。警戒するのもばからしくなった僕は召喚獣達にアテムアさんに貰った蜜柑を食べさせた。召喚獣達は美味しそうに食べてくれた。
その光景を見ていたメフィストが興味津々に視線を向けてくる。
「勇者よ、その丸いのは食べ物なのか?」
「……蜜柑って言う果物だけど、食べる?」
「いいのか? 一つも貰うぞ勇者」
僕が差し出し蜜柑を恐る恐る口に運び咀嚼する。すると、メフィストの目がカッと開く。
「美味い! 美味いぞ勇者よ!」
メフィストは次々に食べていく。口にあって何よりだ。
召喚獣達も負けじとどんどん食べていき、アテムアさんから貰った蜜柑はほとんどなくなってしまった。
食べ終わり、満足そうな表情をしたメフィストが立ち上がった。
「勇者よ、大変美味だったぞ! 我は満足だ! これはほんのお礼だ受け取れ」
メフィストは指を鳴らすと僕が右手の人差し指に着けているリングが光る。
「後を追う者達を惑わす効果を付与しておいた。では、我は帰るとしよう! さらばだ勇者よ!」
メフィストは体を蝙蝠に変え開いた窓から飛び去っていく。
僕は窓を閉めベットにうつ伏せで大の字にで倒れた。なんか疲れた……
召喚獣達が心配して駆け寄ってくる。僕は仰向けになり、召喚獣達の頭を順番に撫でた。
「皆で遊ぼうと思ったのになあ。あんま時間ないけど遊ぼっか」
「ガウ!」
「チュン!」
「ギャア!」
「カメ!」
僕は宣言通り召喚獣達とログアウトする時間ギリギリまで室内で遊びつくした。




